UAD-2を駆使するライブ・エンジニア① Dub Master X

UNIVERSAL AUDIOUAD-2 Live Rack

Apolloを買ったころにライブの仕事が増えてきて
UAD-2がアウトボード代わりに使えると気が付いたんです

日本のダブ・エンジニアの草分け的存在であり、現在もDUBFORCEのメンバーとして活躍。PAでもDef Tech、SUGIZO、柴咲コウ、m-flo、小島麻由美、かせきさいだぁ、SOUR、柴田聡子など、さまざまなアーティストを手掛けるDub Master X氏。ディレイやピッチ・シフターなど、さまざまなエフェクトとともに、ライブの現場へUAD-2を持ち込むようになったという。取材のオファーをしたところ、Def Techの日比谷野外音楽堂公演でUAD-2を使うとのこと。リハーサル中にお邪魔した。

実機と同じようにかかる1176LN

プロデューサー/リミキサーとしても長年活躍しているDub Master X氏だけに、UAD-2導入も当初は制作用としてだったという。

「最初はPCIボードですね。導入したのはUAD-1からUAD-2に変わった直後かな。購入したきっかけは忘れてしまったけれど、当時評判になっていたので気になったんだと思います。実際に使ってみると、1176LNの出来にびっくりした。実機と変わらない……記憶にある実機の設定と同じようにすると、同じようにかかる。そうやって使い始めたら、プラグインも高品位で処理負荷の高いものが出てきたのでDSPが足りなくなってきて、UAD-2 Satelliteを買い足したりして、今に至っています」

PA現場に持ち込むことの多いApolloも、最初は制作用として購入したものだったという。

「UAD-2のDSPも増強したかったし、ちょうどいいオーディオ・インターフェースを探していたところに、Apolloが発売になったんです。それで制作に使っていたんですが、そのころライブPAの仕事が増えてきて、これはアウトボード代わりに使えるんじゃないかと気が付いた。専用ソフトのApollo Consoleもアップデートされて使いやすくなったタイミングでしたし、環境が整ってきたんです」

UAD-2のあるカンパニーと組んで仕事したい

そうやってライブの現場にUAD-2プラグインを導入したDub Master X氏。「実際に使ってみたらすごくいい」と大変気に入っている様子。この日の公演は、バンド編成ではなかったため、ボーカルやギターなどのコンプレッサーに1176を、リバーブにLexicon 224を使用するのみだったが、バンドものでは使用するプラグインも増えてくるそうだ。ただ、ApolloはPA専用機ではないため、懸念する点もあるという。

「アナログでコンソールにインサートするのは煩わしいし、現在のデジタル・コンソールはI/Oラックがステージにあるものの、FOH側にはアナログI/Oが足りないことが多く、そこで制約が出てしまうこともありました。そこはちょっと面倒だなと思っていたところに、デジタルで接続できるUAD-2 Live Rackが出てきて、これは期待していたような製品だなと思いました」

そんなUAD-2 Live Rackについて氏は、“僕のようなフリーランス・エンジニアが個人で持つにはちょっとコストが高いと思う”と言う。氏が想定しているのは、PAカンパニーがコンソールとともにセットで用意するような体制だ。

「僕はフリーランス・エンジニアなので、どのPAカンパニーと組むかを考えたときに、“このコンソールがあるといい”のに加えて、UAD-2 Live Rackを持っているカンパニーと仕事をしたいというのは自然な流れ。レコーディングで言えば、あのスタジオに行けばあの卓とあの機材があるな、というのと同じですよ。人と機材、両方がいいところと一緒に仕事がしたい。そういう意味でUAD-2 Live RackはPAカンパニーにとってアドバンテージになると思います」

Dub Master Xの愛用UAD-2プラグイン

1176 Classic Collection

1176_Collection 普段は黒パネルの1176LNを使うことが多いのですが、Def Techの公演ではこれを入れてみたら良かったのでそのまま使ってみました。個人的には前の世代の1176LN(Legacy)でも十分だと思っているんですが、後にこの1176 Classic CollectionをUNIVERSAL AUDIOがリリースしたのは、作っている人のこだわりや誇りなんじゃないかと思います

Empirical Labs EL8 Distressor

Distressor これはUNIVERSAL AUDIOのナガイさん(セールス・マネージャーのユウイチロウ・ナガイ氏)から、“これをベースに使うと最高!”と教えてもらい、ベースによく使っています。ファットからタイトまで、いろいろな使い方ができるので、安心感がありますね。実機はあまり使ったことがないので、プリセットを参考にしながら、パラメーターの挙動を研究しています

Lexicon 224

lexicon_224リバーブはメーカーごとのカラーがはっきりしているので、LEXICONのリバーブが欲しかったらLEXICONを使うのが最も早いんです。でも224や480Lなどは大きくて重いし、壊れたら困る。替わりが効かないものは持ち運びたくないですね。だからUAD-2で使えるのは便利。熱で音が変わったりもしませんからね

UAD-2 Live Rack製品情報
https://hookup.co.jp/products/universal-audio/uad-2-live-rack

Presented by HookUp, Inc.

2018年10月号

サウンド&レコーディング・マガジン2018年10月号より転載