
よく知ったアウトボードの音を頼りに
欲しい感じになるプラグインを探して使います
高性能なDSPの処理能力を生かして専用プラグイン・エフェクトを動作させるUNIVERSAL AUDIO UAD-2。ハードウェアの選択肢とプラグインの種類が年々増えており、音にこだわるプロはもちろん、手軽に導入したいアマチュアにもUADのもたらす恩恵は図りしれないものとなっている。この連載では、そんなUADの“今”をとらえていくことにしたい。今回登場いただくのは、プロデューサー/作曲家/ユーフォニアム奏者として活躍するゴンドウトモヒコ。UADとの付き合いも長いという彼に、現在の仕様状況を聞いた。
Apollo Twin MKIIがUADホスト兼持ち出し用オーディオI/Oとして活躍
サウンド・プロデューサー/作曲家としての個人活動以外にも、METAFIVEや蓮沼執太フィルなどのバンド・メンバー、数々のアーティストのサポート、さらにはレーベル“愚音堂”主宰と多方面で活躍するゴンドウ。海外留学から帰国した1990年代後半、国内での活動初期にはシンセ・プログラマーとしての仕事が多く、MOTU DPを中心としたシステムに当時のUAD-1を加えたのが、UADとの出会いだった。
「導入した経緯は覚えていないのですが、周囲からの評判や、あるいはサンレコで取り上げられていたからだと思います。当時はオーディオをDAWで扱うといってもプリプロ中心で、今のように本番のミックスで使うことは想定していませんでしたが、まだコンピューターも非力だったこともあって、クオリティの高いエフェクトがCPUパワーを消費せずに使えることに魅力を感じました」
現在のゴンドウのシステムでは、円筒形のAPPLE Mac ProとApollo Twin MKIIを接続してUADプラグインを使用しているという。
「UAD-2 Satellite Thunderboltにしようかとも思いましたが、持ち出せるオーディオI/Oとしても使えることを考えて、Apollo Twin MKIIにしました。UADプラグインのエンジンとしてはもちろんですが、APPLE MacBook Proとともに持ち出して自宅で作業したり、小規模なライブでのオケ出しに使ったりしています。このサイズで4系統のアウトがあるので、メインのオケ用とクリック用とを分けられるのは便利です」
Apollo Twin MKIIは、リハーサルの現場で思いついたアイディアを録音するときにも活躍しているという。
「コーラスを録ったりとかもしていますね。入出力数が同じでも、低価格のモデルだと高域が耳に痛く感じるようなものもあるのですが、Apollo Twin MKIIはそういうこともなく、安心して使える音質です」
硬さや細さを感じるソフト音源にUADプラグインを通すとなじむ
音楽活動を続けていく中で、次第に自身でミックスするような機会も増えてきたゴンドウ。UADプラグインについては、スタジオ現場で使われてきたエフェクトがそのまま使える安心感があると語る。
「スタジオのアウトボードは、当時はエンジニアの領域なのでさすがに自分で触ったりはしてきませんでしたが、例えばコンプレッサーのUREI 1176LNを通したときの感じなどはよく知った音だから、それを頼りにプラグインも調整していきますね。自分でUADプラグインを使う際は、欲しい音の感じになるものを探して使うことが多いと思います」
特に役立つには質感の調整だという。
「ソフト音源で作ったトラックに対して、硬さや細さを感じた場合にUADプラグインをインサートすると、適度なひずみや太さが加わってなじむ。そういう使い方をする多いですね。よく知ったハードウェア・シンセの音に戻すような感覚もあります」
ゴンドウは「直感でインサートしてみて、合うか/合わないか。それが基準です」と笑うが、イメージする音に近付けられるツールとして、今後も彼がUADプラグインを活用していくことは間違いないだろう。

ゴンドウトモヒコのUADプラグイン 5選
Harrison 32C Channel EQ

「数あるUADプラグインのEQの中で、個人的に最もフィットするのがこれ。帯域とゲインの調整幅とが、自分の感覚と近いです。アナログ・モデリングなので色付けがあるのもいいですね。ボーカルの不足している倍音部分や、高域の伸びている部分を補うのに重宝しています」
Lexicon 224 Digital Reverb

「ボーカルはもちろん、ストリングスなどにも使うことの多いリバーブです。デジタル・リバーブは高域が“シャリーン”とするものが多いのですが、そこが気になってしまうことがあります。LEXICONのリバーブはそういう感じがしないし、中低域に厚みがある音で、重宝しています」
Galaxy Tape Echo

「通常のディレイとして使うことも多いですが、マウスでパラメーターをリアルタイム操作したものを録音して、ディレイ・タイムとピッチ、フィードバックの変化が面白い感じの部分だけ使ったりもしています。その意味では“エフェクト”としての度合いが強いプラグインです」
Fairchild 660 Tube Limiter

「FAIRCHILDやUREI 1176LNなど、ビンテージ・アウトボードを再現したダイナミクス系プラグインは、質感の調整に使うことが多いですね。リミッティングと同時にひずみ方が個々に異なるので、原音に対してどれが合うのかトライ&エラーして使います」
Precision Limiter

「定番と言われるマキシマイザーよりもひずみが少ないので、昔から愛用してきました。マスタリングで使うよりも、現在は制作中の楽曲でマスターにインサートして、ある程度音圧を上げた状態を確認するために使用することが多いですね」
UADとは?
DSPアクセラレーターのUAD-2ユニット上で稼働するプラグイン・エフェクト・システム。90種類以上の高品位な対応エフェクトをコンピューターに負荷を与えることなく使用できるのが特長だ。最新設計のオーディオ・インターフェースにUAD-2機能を搭載したApolloシリーズもラインナップされ、複数台のUAD-2/Apolloを同時に使用することも可能。各プラグインはUNIVERSAL AUDIOの公式サイトで購入できる。



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