さまざまな現場で信頼を集めるデジタル卓=YAMAHA TFシリーズ

第2回 cafe104.5

PAカンパニーや中小規模スペースなどへの導入が進んでいるYAMAHAのPA用デジタル卓、TFシリーズの有用性に迫る本連載。今月はブルーノート・ジャパンがプロデュースする“cafe104.5”(イチマルヨンゴー)を訪れ、同店にインストールされている16チャンネル・フェーダーのモデル=TF1について、スタッフの方々から話を聞いた。

触ってすぐに“これはいいぞ……”と

2013年4月にJR御茶ノ水駅から徒歩3分という好立地にオープンしたcafe104.5。100席ほどの“カフェ&エピスリー”で、しばしば音楽のイベントも行われている。例えば、ブルーノート東京での公演を控えたアーティストによるショウケース・ライブなどは同店ならではの催し物であり、昨年にはベーシスト/作曲家のカイル・イーストウッド、今年に入ってからはサックス奏者のダニー・マッキャスリンなどが出演。国内アーティストのライブやDJイベントも開催しているほか、婚礼パーティに使われることもあり、そこでライブを行う人も多いそうだ。

当初は16chのアナログ・ミキサーを使っていたという同店だが、なぜTF1にリプレイスしたのか? ブルーノート・ジャパン音響・照明部のマネージャーでありチーフ・サウンド・エンジニアの山内俊治氏に聞く。

「cafe104.5にはエンジニアが常駐しているわけではなく、マネージャー(店長)をはじめとするスタッフが音響のオペレートを行う場合もあるんですね。なので“彼らにとってはデジタル卓よりもアナログ・ミキサーの方が分かりやすいかな”と思っていたのですが、編成の大きな出演者が増えてくるなどして、スペックが追い付かなくなったんです。そんな折、TFシリーズが発表されたのでデモ機を触ってみたところ“これはすごくいいぞ……”と。具体的にはまず、マルチタッチ対応のタッチ・パネルが良いと思いました。普段スマートフォンやタブレットを使っているスタッフにも興味を持ってもらえそうだと感じたし、パネル内の操作系もシンプルで分かりやすいんです。また内蔵エフェクトが充実しているため、外部プロセッサーを省いてシステムをコンパクトにできるのも良いと思いました。あとcafe104.5のスピーカーはメインL/R+天井設置8台の計10台となっていて、それらに個別の音声を送れるだけの数の出力端子があるのも魅力ですね」

クローズアップ・ポイントその① タッチ・パネル

cafe104.5では、さまざまな操作がスピーディに行えるタッチ・パネルを大活用。写真のOverview画面にワンタッチで戻れるホーム・キー(パネル下中央)も便利でよく使っているという ▲cafe104.5では、さまざまな操作がスピーディに行えるタッチ・パネルを大活用。写真のOverview画面にワンタッチで戻れるホーム・キー(パネル下中央)も便利でよく使っているという

何しろシンプルなので入門機としても最適

音響に関する特別な知識を持たない人でも使いやすそうなデジタル卓……そう考えた山内氏は早速、cafe104.5のマネージャー山本貴之氏にTFシリーズの印象を伝えたそう。「最初に触ったときから、全然難しいと思いませんでした」とは山本氏の弁だ。
「むしろアナログ・ミキサーよりもやりやすいと思います。例えば“Overview”という画面にはAUXセンドやEQカーブなどを8ch単位で表示できるため、ミュージシャンへの返しを調整しているときなども“どのAUXに何を送っていて、そこのEQはどうなっていて……”というのが一目で分かる。またEQやコンプなどのエディット画面にワンタッチでアクセスできたり、ホーム・キーを押せばいつでもインプット1〜8chのOverviewに戻れるなど素早く操作できるので、全くストレスを感じません

入出力の各種設定をシーンとして保存し、いつでも呼び出せるようにできるのも便利だと言う。
「どれだけ設定を変更しても、すぐに“店のデフォルト値”へ戻れるのが良いですね。以前はすべてを手作業で戻していたため、再開までに時間がかかったりと大変でしたが、それを解消できたのは大きいと思います」

シーンやチャンネル・プリセットは、TFシリーズ本体のほかMac/Windows用のソフトTF Editorでも作成できる。またTFシリーズの専用アプリケーションとしては、Wi-Fiを使ってのワイアレス・コントロールを可能にするAPPLE iPad用アプリ=TF StageMixも見逃せない。
「TF1の置き場所はメイン・スピーカーのスウィート・スポットではないので、フロアへiPadを持って出て、適切な位置で調整できるのが助かっています。TF StageMixが無かったら卓に1人、フロアに1人の計2人が必要になるところでしたが、おかげさまで一方がほかの仕事へ回れるようになったので、効率が上がりました。僕自身、デジタル卓を使うのはTF1が初めてでしたが、何しろシンプルなので入門機としても最適だと思います。出音についても、アナログ時代からグッとクリアになって音圧が上がったので、調整しやすくなりましたね」

入門者だけでなくプロのエンジニアにとっても使いやすいでしょう」と、チーフ・エンジニアの山内氏も太鼓判を押すTFシリーズ。中小規模のスペースに導入すれば、現場の強い味方になってくれるだろう。

クローズアップ・ポイントその② ワイアレス操作

▲マネージャーの山本貴之氏がAPPLE iPad用アプリ、TF StageMixでEQをコントロールしているところ。客席の方へ出て、そこで音を確かめながら調整できるのが気に入っている ▲マネージャーの山本貴之氏がAPPLE iPad用アプリ、TF StageMixでEQをコントロールしているところ。客席の方へ出て、そこで音を確かめながら調整できるのが気に入っている

クローズアップ・ポイントその③ TOUCH AND TURNノブ

▲本文では紹介し切れなかったが、任意のパラメーターをワンタッチで割り当てられる“TOUCH AND TURNノブ”も、山本氏のフェイバリットだ ▲本文では紹介し切れなかったが、任意のパラメーターをワンタッチで割り当てられる“TOUCH AND TURNノブ”も、山本氏のフェイバリットだ

 【製品紹介】YAMAHA TF1 (オープン・プライス:市場予想価格350,000円前後)

16本のチャンネル・フェーダーを装備するデジタル卓。インプットは全40chで、本体には16個のマイク/ライン・インや2系統のライン・インL/Rを備える。出力系に関しては、ステレオとサブから成るメイン・バス、8モノラル+6ステレオのAUXバス、8つのDCAグループを実装し、本体に16個のライン・アウトを装備。チャンネル・プロセッサーのほか8基のプロセッサーを搭載し、多彩な音作りが行える。内蔵のUSBオーディオI/OをMac/Windows機に接続すれば最大34trの録音/再生が可能。本体のUSB端子では、外部のUSBストレージを用いて2trの録音/再生が行える。 16本のチャンネル・フェーダーを装備するデジタル卓。インプットは全40chで、本体には16個のマイク/ライン・インや2系統のライン・インL/Rを備える。出力系に関しては、ステレオとサブから成るメイン・バス、8モノラル+6ステレオのAUXバス、8つのDCAグループを実装し、本体に16個のライン・アウトを装備。チャンネル・プロセッサーのほか8基のプロセッサーを搭載し、多彩な音作りが行える。内蔵のUSBオーディオI/OをMac/Windows機に接続すれば最大34trの録音/再生が可能。本体のUSB端子では、外部のUSBストレージを用いて2trの録音/再生が行える。