佐久閒正英〜ECLIPSE TDシリーズを頼りにするプロフェッショナルたち(1)

“タイムドメイン理論”に基づき設計されたECLIPSEのスピーカー、TDシリーズ。2001年にTD512とTD508の2モデルがリリースされるやいなや、ミックスやマスタリングなど正確な音の再現が要求される現場で高い評価を得る。その後もモデル・チェンジやラインナップの拡充が続けられ、2012年2月には最新モデルであるTD510MK2、TD510ZMK2、TD508MK3がリリース。インパルス・レスポンスのさらなる向上や周波数特性の拡張など、さまざまな点で進化を遂げている。そんなECLIPSE TDシリーズの魅力をトップ・プロにうかがっていくのがこのコーナー。1回目に登場していただくのはプロデューサー/ミュージシャンとして幅広い活動を展開している佐久間正英氏だ。

この記事はサウンド&レコーディング・マガジン2012年9月号から編集・転載したものです。

ECLIPSEはスピーカーの音であることを感じさせない

 佐久間氏がECLIPSE TDシリーズと出会ったのは発売直後の2001年。当時一緒に仕事をしていたエンジニアのマイケル・ツィマリング氏がスタジオに持ち込んだ際だったという。

「初代のTD512でしたね。それまでのモニター・スピーカーの印象とは全然違って、楽器の音が自然というか、そのままに聴こえる感じ。印象に残っているのは、かなりの音量で鳴らしているのにマイケルと会話ができたこと……普通は卓のDimを押さないと会話ってできないのにね。それは自然な音で再生されているからなんだと思います。目の前で生楽器を演奏しているときも会話はできるけど、それを録ったものをスピーカーで鳴らすと会話がしづらい……生の音じゃなくスピーカーの音になってしまうんですね。ECLIPSEはそんなスピーカーの音を感じさせないところが気に入ったんです」

 その当時、佐久間氏が制作の拠点としていたのはdog house studio。TANNOYのミッド・サイズ・スピーカーをメイン・モニターに、そしてTD512をニアフィールド・モニターとしてミックス時に使っていたそうだ。

「TD512はバランスを確認するのにとても良かったんです。遠鳴りするので離れて聴いてもバランスが崩れない。極端な話、部屋の横で聴いても大丈夫なんです。普通のスピーカーが座る場所によってバランスまで変わってしまうのと対照的ですね。ただ、そのころの聴き方はあくまでプロデューサー的なもの。エンジニア的な耳で聴いていたわけではありませんでした」

 そんな佐久間氏だが、最近では自らエンジニアリングを手掛けることが増えたという。

「やっぱり人がやっているのにああだこうだ指図するよりは、自分でやる方が好きにできますからね。もちろん、それが可能になったのはAVID Pro Toolsのおかげです。もともとテクノをやってたわけですからワンマン・オペレーションは大好きだし(笑)。なので現在では事務所の一角でPro Toolsを使って自分でミックスをすることが多くなりました」

 そのPro Toolsを使ってのミックスで活躍しているのが、導入されたばかりの最新モデルTD508MK3だ。

「TD508MK3はこれまでのモデルと比べてさらに良くなりました。とにかく応答性がいいですし、低音の聴こえ方もしっかりしているから、仕事として使う上ですごく扱いやすいんです。ここ数年はTD307を使っていたのですが、それだとどうしても普通のスピーカーと切り替えて、確認しながら追い込んでいくという作業が必要だった。でも、TD508MK3だとその頻度が減って、楽になりましたね」

 このようにECLIPSE TDシリーズが大のお気に入りの佐久間氏だが、最後に今後の要望は?と尋ねると意外な答えが返ってきた。

「ぜひ、ギター・アンプを作ってもらいたいんです。実際、キャビネット代わりに使ったことがあるんですが、応答性が良かったので、ぜひともヘッド部分から作ってもらいたいですね(笑)」

 佐久間氏の希望がかなえられるかどうかは分からないが、TDシリーズがこれからも氏の音楽制作を支える“頼れる道具”であることは変わらなそうである。

 

【佐久閒正英 PROFILE】 1952年東京生まれ。ミュージシャンとして四人囃子、PLASTICS、NiNa、The d.e.p.など伝説的なバンドに参加。プロデューサーとしてはBOØWY、ブルーハーツ、JUDY AND MARY、GLAYなど多くのグループを手掛ける。2010年にはレーベルCircularTone Recordsを立ち上げ、自身の新グループunsuspected monogramの作品などをリリース。2014年1月に他界。

“タイムドメイン理論”とは?

PIG01これまでのスピーカーの開発では周波数特性が重要視されていたのに対し、時間軸における正確な波形再生を重視する理論。上図のようにインパルスを普通のスピーカーで再生すると原音には無い余計な響きが付加されているのに対し、ECLIPSE TDシリーズでは、比較的正確に再現される。これにより音の立ち上がりや位相特性が圧倒的に優れたものとなるのだ。

佐久間正英氏の使用スピーカーTD508MK3

TD508MK3_BK_prd_01

●ユニット/8cmコーン型フルレンジ ●再生周波数帯域/52Hz〜27kHz(ー10dB) ●能率/82dB/W・m ●許容入力(定格/最大)/15W/30W ●インピーダンス/8Ω ●カラー・バリエーション/シルバー、ブラック、ホワイト ●価格/47,000円(1本)

問合せ:富士通テン  
http://www.eclipse-td.com/

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