今をときめくトップ・クリエイター7組に、作品で使用する珠玉のオーディオ加工テクを伺う当特集。第4回は音楽家のSASUKEに披露していただきます。
その1:Drums 〜ドラムのメリハリを付けるためにクリックのようなノイズを重ねる
参考楽曲
「Good Gravity」SASUKE
【Time】1:17~
どうしても使いたいけれど、質感が古くパンチに欠けるブレイクビーツなどのサンプルに、メリハリを付けるための方法があります。それは、キックやスネアなどの目立たせたい部分にクリックほどのものすごく短いサンプルを重ねる、というものです。こうするだけでアタックが前に出てきて、ビートにメリハリを付けることができます。
重ねるサンプルは単体で聴いて元が何か判別できないくらい短い音になるので、アタックがあればどんな素材でも問題ありません。手軽なのに効果がはっきりと現れるテクニックです。
その2:Synth 〜ゲインのオートメーションで波形を書くように音作り
参考楽曲
「プラネット・ナイン」SASUKE
【Time】2:00~
オーディオ・クリップ自体のゲインにオートメーションを設定し、あとは好みの音色になるように書いていくテクニックです。使う素材は、ソフト・シンセを立ち上げて単音弾いただけのシンプルな音色をオーディオ化したもので結構です。
いわばオートメーションを使って、シンセでエンベロープのADSRを書くようなイメージなのですが、一度減衰した音をまた立ち上がらせたり、不安定なトレモロのような音にできたりと、シンセのパラメーター操作ではなかなか時間がかかってしまいそうな音を素早く作っていくことができます①。音の動きがそのまま形になっているので視覚的にも分かりやすいです。
ここにエフェクトを足していけば、元の音色が既に面白いことも相まって非常に込み入った音作りが可能です②。シンセ以外にも、例えばキックのリリースが長いと感じたら、波形を見ながら該当部分のゲインを下げればすぐに調節できます。広範囲なパートに使えるテクニックです。
その3:Drums 〜カットアップを強調してアタックを前面に出す!
参考楽曲
「Good Gravity」SASUKE
【Time】1:17~
ドラムやパーカッションのループ素材をカットアップして新たなドラム・パターンを構築した後に、よりカットアップしたサウンドを際立たせたいときにフィルターを使用します。ここでは、ABLETON Live付属のAuto Filterを使用して10kHz近辺より上の帯域のレゾナンスを大げさなレベルと言えるほどに上げました。一見やりすぎに思われるかもしれませんが、アタック感がかなり出るので、曲中でものすごく目立つんです。細かな連打は特に映えさせることができます。
たださすがにこのままだとあまりにも耳が痛いサウンドなので、その後にEQを挿して高域をカットしています。欲しいのはフィルターのレゾナンスをがっつり上げて出てくるサウンドなので、EQでカットする前提で大げさな値にしているという感じですね。
その4:FX 〜ピッチのオートメーションで作るテープ・ストップ/スタート
参考楽曲
「梅雨嫌い」SASUKE
【Time】0:34~
Liveのクリップ・エンベロープでは、トランスポーズにオートメーションをかけることができ、ここを調節すればテープ・ストップ/スタートのような効果を演出することができます。やり方は、テープ・ストップさせたい場合はクリップの後半のピッチを徐々に下げていき、スタートさせたい場合は逆に上げていくという、とてもシンプルなものです①。
専用のプラグインを使って同様の効果を作ることもできますが、長さを自分で調節できたり極端な音色の変化を付けられたりと、とても柔軟に調節することができます。
あとはLiveのサンプル解析ツールであるWarpモードのアルゴリズムを変更すると、さらに変化を付けることも可能です②。基本は奇麗な効果になるComplex Proにしていますが、意外としっくりこない場合もあるので、その際にはモードを変更してみるのもよいでしょう。
SASUKE
【Profile】19歳の音楽家。14歳の頃に原宿での路上ライブがSNSで拡散、注目されメジャー・デビュー。新しい地図 join ミュージック、郷ひろみなどアーティストへの楽曲提供、テレビ番組やCM曲の提供、東京2020パラリンピック閉会式出演、音楽制作を担当。