第16回~【番外編】モニターについて考える①

8月も終盤。学生さんは休みもそろそろ終わりますよ〜。宿題やってますか〜。勉強しましたか〜。
何て言って、自分が学生のころは夏休みの宿題は9月に入ってからやったのもです(笑)。

さて、しばらく真面目に(???)ボーカル・エディットの話などしていますが、たまには軽ーく番外編の回にさせてくださいませ。
とはいえ、我々にとって大事な話。モニターについて一緒に考えてみたいと思います。

“モニター選び”はクリエイターの特権!?

皆さんはモニターに何を使っていますか?

まあ、大体、スピーカーとヘッドフォンなど自分の決めたものでやっていますよね?
サンレコ誌上でもモニターについての特集は人気があると聞きました。

私も正直、モニター・マニアというか、多分、この数十年ずーっと“自分にとってのパーフェクトなモニターは何か?”を探し続けているのが事実です。

今でも知人のエンジニアやミュージシャンなどに「最近出た○○○社の×××がめっちゃいいよ!!!」と聞くと、手ごろな価格だとホイホイ買ってしまします。

よって、うちのスタジオにはスピーカーがゴロゴロしてます(笑)。

▲筆者所有のスピーカーの一例。写真はECLIPSE TD-M1 ▲筆者所有のスピーカーの一例。写真はECLIPSE TD-M1
▲こちらも筆者所有のMUSICELECTRONIC GEITHAIN RL906(左)とGENELEC 8240A(右) ▲こちらも筆者所有のMUSICELECTRONIC GEITHAIN RL906(左)とGENELEC 8240A(右)

さて、今回のお題は“モニター”です。

“モニター”とは、硬く言えば“検聴”ってことです。一般のリスナーは“モニター”で聴くという発想はあまりないです。一部の音楽マニアやオーディオ・マニア(オーディオ・マニアはすごいです! この話はまた今度)は、“モニター”について理解がある方々もいますが、大体の音楽リスナーはスピーカーやヘッドフォンをあるポイントで選びます。

それは“価格”と“ルックス”。ここが大事なポイント。その次にブランド。最後に音質。
大体、今やヘッドフォンもECサイトで一番売れていますしね。

それでも最近はヘッドフォン・ブームということもあって、家電量販店でヘッドフォンの試聴などできます。しかし、一般の人々は音質の選ぶ基準は特になく、自分の好みの音の出るヘッドフォンを選んでいます。

ということは、“モニター”を選ぶのはクリエイターの特権なんです!
だって、一般の方々はオリジナルの音は知らないんですから。
この話をするとあなたもモニター地獄にハマっていきますよ……(笑)。

“モニター”とは皆さんが音楽を作る上での基準になります。あなたのDTMセットから出る音が、その音のオリジナルなんです。あなたのモニターがYAMAHA MSP5 Studioなら、あなたの音楽はYAMAHA MSP5 Studioから出る音がオリジナルということなんですよね。だってそれで判断して完成させているわけですから。

音楽リスナーを想定した音を作りの重要性

ここで、ちょっと違う切り口の話をさせてください。

随分前の話ですが、ある映画の主題歌の仕事をしていました。主題歌のデモを自分でミックスしました。自分的にはいつものようにミックスしてそれを映画プロデュサーに渡しました。

数日後、「音楽は良かったけどバランスが酷かったよ。低音がすごくデカかった」と言われました。

彼らは私のミックスを映画のシステムで聴いたのです。そこにはもちろんサブウーファーもあります。私のモニター環境では聴こえなかった音が、そこでは私の知らないバランスで鳴ったのです。

もちろん、優秀なエンジニアであれば同じスピーカーでもそんな事故は起きなかったかもしれません。

こんなこともありました。これも20年も前の話、当時、スタジオ・モニターはYAMAHA NS-10Mがまだ主流でした。一部のエンジニアがGENELECを使い始めたころで、私もGENELECを自分のモニターとしていました。

オーケストラ演奏とシンセの打ち込みが混在する楽曲のミックスを某有名エンジニアにお願いしました。私はそこには立ち会えず、当時のアシスタントとアーティスト本人が立ち会いました。

「良いミックスに仕上がりました!!!」と報告を受けて、CDコピーを受け取り、自分のGENELECで聴きました。
と、めっちゃくちゃシェイカーがデカいんです。楽曲の全編“シャカシャカ、シャカシャカ”と一番デカい音で鳴ってます。

すぐにアシスタントを呼んで一緒に聴きました。

「確かにシェーカーがデカいですね〜。こんなバランスではなかったんだけどな……」

その後、NS-10Mでも聴きました。一度、シェイカーが気になってしまったので、やはりそれなりにシェーカーが大きく聴こえるのですが、GENELECで聴くほどではありません。

その後、ミックスをやり直したのですが、皆さんもこんな経験はないですか?

つまり、あなたがあなたのモニターで作った音を人はどんな環境で、またどんなモノで聴くかは分からない、ということです。まぁ、当たり前のことなんですが、とても大事なことです。
もしあなたがプロフェッショナルを目指すのであれば、リスナーが良いと言う音を作らなければ、あなたのバリューは生まれません。
いくら高価なモニターで音を作ったとしても、プロとしてはその音楽のリスナーの聴く環境なども考慮してミックスすべきだと思いますし、事実、そうしています。

もちろん、“俺の音楽は○○のスピーカーで聴いてもらわないと価値が分かってもらえない!”と言って、指定のモニターをレコメンドするのも手かもしれません。

でも大体はそういうわけにはいきませんよね。

ここでちょっと考えてください。

“良い音ってなに?”

番外編なのに長くなってしまった!
どうしよう、次もモニターの話にしようかな……。

では次回何の続きかも含めてお楽しみに!!!

【お知らせ】
私が制作のお手伝いをしたYunchiの約2年ぶりとなる新作「Canvas」をリリースしました。
そこで、そのミニ・アルバム発売を記念して、新曲「今僕のいる場所が理想と違っても」リミックス・コンテストを開催しています!!!
以下、概要です。私も応募作は全部聴かせていただきます。振るって応募くださいね!!

【Yun*chiリミックスコンテスト概要】http://ototoy.jp/feature/20170802222

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!