組み立てに工具類は一切不要
圧迫感を与えないデザイン
まずIsovox 2を箱から取り出してみると、背面と屋根を覆うルーフ・バック・カバー、底板となるベース・プレート、2つのサイド・プレート、ブース内に取り付けるフロント・スクリーンとLEDライト、フロント・スクリーンの後ろに取り付ける吸音材、マイク・ホルダー、マイク・ポールとその固定用ナットが確認できます。早速一人で組み立ててみましたが、ドライバーなどの工具類は一切必要無く、マジック・テープやファスナーで接合できて非常に簡単。およそ10分程度でスムーズにセッティングすることができました。
次に、一般的なPAスピーカー・スタンド(パイプ径35mm)を立て、そこに先ほど組み立てたIsovox 2を設置。取り扱い説明書には“設置には大人2人を推奨”と書かれていましたが、とても軽量なため筆者一人でも簡単にマウントすることができました。
組み立てが完成して真っ先に感じたことは、Isovox 2は大きさの割には不思議と圧迫感がなかったこと。初めはIsovox 2が梱包された箱の大きさに驚き、狭い当スタジオにとっては少し懸念する部分がありました。しかし、実際組み立ててみると外装がホワイト・レザー調でシンプルなことと、スタンド使用で足元がスッキリ見えるため、広く場所を取っているような圧迫感はありません。スタイリッシュな外観で、“さすが北欧のデザインだな”と思いました。
Isovox 2のブース内に取り付けた付属のLEDライトは十分に明るく、底板にはマイク・ポールやケーブルを通す穴があります。ちなみに付属のマイク・ホルダーは筆者のマイクとサイズが合わなかったので別のマイク・ホルダーで代用しましたが、問題無く取り付けることができました。また、ブース内にはAPPLE iPadなどを立てかけることができるスペースが十分にあり、歌詞や譜面を見ながら歌うのにも便利です。
不要な反射やノイズを取り除き
クリアなボーカルが収録可能
今回はボーカリストであるmoskitooさんのご協力により、Isovox 2を使ったボーカル・レコーディングを実践。まずはどの程度遮音性があるのか、Isovox 2の有無で歌ってもらい聴き比べてみました。結果、感覚で大体10~20dB程度、計測アプリを使ってみたところ20~30dB程度の音量差があることが分かりました。特に大きく変化があったのは中高域だと思います。
次に、以前当スタジオでボーカル録音をしたことのある曲を使用し、Isovox 2でボーカルをレコーディング。当時収録したボーカルと、今回Isovox 2を使って収録したボーカルを聴き比べてみた結果、非常に素直で扱いやすいボーカルをキャプチャーすることができたと言えるでしょう。
ちなみに当スタジオでは、普段ボーカル・レコーディングにはKAOTICA Eyeballを使用しています。理由は何と言っても省スペースなこと、それにダイレクトにボーカルを収録できるからです。そのためとても重宝しているのですが、実際にEyeballが覆っているのはマイク周りのみで、当然声は多少なりともスタジオ内で反響しています。一方Isovox 2は、マイクはもちろんボーカリストの頭部全体をすっぽりと吸音シートで覆ってくれるので、全くと言っていいほど録り音に室内反響音が含まれず、クリアなボーカルが収録可能です。ちなみにIsovox 2はボーカル録音に特化した仕様になっているため、ほかの楽器に応用するのは少々難しいでしょう。
Isovox 2の中に入って歌ってみたところ、密閉された空間という意味では集中しやすく、この点はIsovox 2のメリットだと言えるでしょう。しかし、時折ブースの外に出ないと少し息苦しさを感じる場面もありました。それからボーカル・レコーディングとDAW操作を一人で同時に行うケースも考えられたので、ブース内からDAWリモート・コントロール・アプリを使用。結果、スムーズにDAWを操作でき、効率的に録音作業を進めることができました。
限られたスペースのプライベート・スタジオでボーカル録音をするには、周辺環境の配慮と室内反響/ノイズ対策が課題です。Isovox 2を使用すれば周囲の雑音やノイズを遮断し、ボーカル・レコーディングのクオリティをより一層高めてくれるでしょう。そして、そのクオリティはレコーディング・スタジオのボーカル・ブースに匹敵するレベルなのではないでしょうか。もしプライベート・スタジオをお持ちの方であれば、設置の労力やコストがかかる防音ブースを設置するより、Isovox 2の購入をお勧めします。またプリプロ・スタジオなどでレコーディング・ブースが無い場合も、Isovox 2を使用することによってボーカル・レコーディングのクオリティ・アップにつながることでしょう。さらに、発声練習が日常的に必要なボーカリストの場合も、定期的に練習スタジオへ通うことを考えるとIsovox 2の導入は長い目で見ればコスト・カットになるのではないでしょうか。ぜひお店で体験してみてください。