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YAMAHA TF Series導入レポート〜GRAPES KITASANDO

YAMAHAのコンパクト・デジタル・ミキサーの最新機種TFシリーズは、同社伝統の洗練された操作性を引き継ぎつつ、タッチ・パネルに最適化されたTouch Flow Operationを採用。1-knob COMP/1-knob EQや各音源に最適化されたプリセットを備え、素早く直感的な操作が可能となっている。今回本誌は、東京・北参道にオープンしたGRAPES KITASANDOにTF3が導入されたという情報を入手。早速現場に赴き、マネージャーを務める高橋慎一郎氏に話をうかがった。 Photo:Hiroki Obara

本格的な食事が楽しめるライブ空間のメイン・ミキサーとしてTF3を導入

GRAPES KITASANDOは、本格的なフランス料理&ワインとともにライブ演奏を提供するレストラン。副都心線・北参道駅から徒歩3分という好立地ながら、隠れ家的な雰囲気。落ち着いた内装の店内はキャパシティ50名で、ゆっくりと食事を取りながら音楽を楽しめる。2016年1月より東京事変やPE'Zほかで活躍してきたキーボーディストのH ZETT Mが音楽プロデューサーとして就任。2月初旬に開催されたH ZETTRIOの公演でグランド・オープンを果たした。

▲店は北参道の隠れ家的なロケーションにたたずむ。通りからはステージの様子も垣間見られる ▲店は北参道の隠れ家的なロケーションにたたずむ。通りからはステージの様子も垣間見られる

高橋氏は四谷天窓など15年にわたりライブ・ハウスの運営に携わってきた経歴の持ち主だが、常々「ミュージシャンがミュージック・チャージだけで音楽を続けていくのはなかなか難しい」と感じていたという。

「そんなあるとき、シェフやソムリエをそろえてきちんとした食事やお酒を出し、その上で良質なライブ演奏が毎日行われている空間を思い付きました。ミュージック・チャージをコースのディナーとセットにすることによって、飲食で得た利益を出演していただいたミュージシャンに還元できるのではないかと考えたんです」

▲GRAPES KITASANDOでアーティスト・ブッキングからPAオペレートまでをこなす高橋慎一郎氏。ライブ・ハウス四谷天窓などを経て、2015年12月に同店を立ち上げた ▲GRAPES KITASANDOでアーティスト・ブッキングからPAオペレートまでをこなす高橋慎一郎氏。ライブ・ハウス四谷天窓などを経て、2015年12月に同店を立ち上げた

同店でPAも務める高橋氏は「YAMAHAのデジタル・ミキサーには以前から親しみがありました」と続ける。

「仕事ではずっとLS9を使ってきたのですが、音がとてもしっかりしていた印象があります。今回GRAPES KITASANDOをオープンするにあたり、限られた予算の中でTF3のコスト・パフォーマンスの高さは大きな魅力でした。“慣れ親しんだYAMAHAの最新機種であれば、音質的にも間違いはないだろう”ということで、デモ機も取り寄せずに購入してしまいました(笑)」

高橋氏によれば「YAMAHAはサポートが手厚いのも、安心して導入できた要因でした」とのことだ。

操作性の良いTOUCH AND TURNノブ/小音量でも際立つ解像度

TFシリーズ最大の特徴と言えるTouchFlow Operationだが、高橋氏は「僕はLS9を扱っていたころからミキサーをリモート操作できるiPadアプリ=StageMixでチューニングなどを行っていたので、タッチ・パネルでのミキサー操作には親しみがあるんです」と語る。

「TF3はそれがそのまま本体に装備されたような操作感ですね。もちろんここでもStageMixは引き続き活躍していて、iPadは必需品となっています」

TFシリーズならではの操作感としては「TOUCH AND TURNノブはすごく便利です」と続ける。

「タッチ・パネルでパラメトリックEQのポイントを選んだら、ノブの押し込みで周波数やゲイン、Q幅が切り替えられるので、1つのノブに集中して音作りができます。片手で細かく音作りできるのはすごく便利です。あとミキサーとしての視認性がすごく良いですね。デジタル卓の中には、ディスプレイが小さかったりして使いにくいものも多いですよね。その点、TF3はチャンネル・ストリップの表示などがパッと見て分かりやすいので、乗り込みで入るエンジニアもすぐに使えると思います」

▲タッチ・パネルのパラメーターに触れた後、回すだけで操作が行えるTFシリーズのTOUCH AND TURNノブ。押し込むことでEQの周波数やQ幅なども切り替えられるので、片手での操作も容易だ。1-knob COMP/1-knob EQの操作もこのノブを使って行う ▲タッチ・パネルのパラメーターに触れた後、回すだけで操作が行えるTFシリーズのTOUCH AND TURNノブ。押し込むことでEQの周波数やQ幅なども切り替えられるので、片手での操作も容易だ

GRAPES KITASANDOでのPAに関しては「音を“小さく出す”ことを意識しています」と高橋氏は続ける。

「ここにあるグランド・ピアノは1921年製なのですが、元々あまり音が大きくなく、それでいて明るい音色キャラクターです。ライブ時はコンデンサー・マイクをステレオで立てることもありますが、わざと生音のままにして、そこに小音量でPAしたボーカルを乗せると、何とも言えず心地良い音場になるんですよ。そうした中でTF3が持つ解像度の高さはありがたいですね。あと僕はずっとエフィクターとしてSPXシリーズを使ってきたので、TF3の内蔵リバーブの音には安心感がありました」

▲ステージでは1921年製のグランド・ピアノが存在感を放つ ▲ステージでは1921年製のグランド・ピアノが存在感を放つ

今後はライブ・レコーディングの要請も増えると予想する高橋氏は「その際もUSBケーブル1本でTF3とコンピューターをつなげばマルチレコーディングできるのは、とても合理的だと思います」と期待を寄せる。

「ほかにこれから試してみたいのは、ミュージシャンにMonitorMixを立ち上げたAPPLE iPhoneを渡して、自分でモニター・バランスを調整してもらうこと。PAオペレートとミュージシャンとのコミュニケーションという意味でも期待が持てますよね。あと僕は外の会場でPAする機会も多いので、ミキサーの設定データを保存できる点もデジタル卓のアドバンテージと言えます」

高橋氏は「TFシリーズはデジタル・ミキサーの入口になり得る製品だと思います」とその使用感を語る。

「スマホ的と言うか、ほかのスタッフにも操作を“教えたくなる”卓なんですよ。その意味で、あまり卓の操作に慣れていないスタッフも多いレストランに、立ち上げの段階から導入したのは正解だったと思います。それでいて、YAMAHAクオリティの音質が担保されている。ここでスピーカーのチューニングを終えて、最初に出音を聴いた瞬間に“ああ良かった!”と思いましたね」

GRAPES KITASANDO
〒151-0051 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-3-11 ニューベリー千駄ヶ谷1F
03-6447-0160
https://www.grapes.tokyo

TF Series Lineup

▲TF1(オープン・プライス:市場予想価格350,000円前後) ▲TF1(オープン・プライス:市場予想価格350,000円前後)
▲TF3(オープン・プライス:市場予想価格430,000円前後) ▲TF3(オープン・プライス:市場予想価格430,000円前後)
▲TF5(オープン・プライス:市場予想価格500,000円前後) ▲TF5(オープン・プライス:市場予想価格500,000円前後)

問合せ:ヤマハミュージックジャパン プロオーディオインフォメーションセンター
0570-050-808
www.yamahaproaudio.com/japan/