長崎在住の高校生ボカロP「晴いちばん」〜友達と高め合ってレベルを上げていくのがボカロPならでは

長崎在住の高校生ボカロP「晴いちばん」〜友達と高め合ってレベルを上げていくのがボカロPならでは

NHK Eテレ『沼にハマってきいてみた』(『沼ハマ』)でピックアップされた弱冠15歳の高校生ボカロP“晴いちばん”。長崎県在住の彼は、中学時代からボカロPとしての活動を開始。番組内ではオリジナルのテーマソング「沼にときめく!」を制作した。既にソニー・ミュージックのPuzzle Projectに参加し、楽曲提供など音楽の仕事も始めている長崎在住の彼にコンタクトを取り、話を聞いた。

Text:松本伊織(サウンド&レコーディング・マガジン プロデューサー)

NHK『沼にハマってきいてみた』テーマソングとして晴いちばんが書き下ろした「沼にときめく!」。(歌:ゆう。 ピアノアレンジ:小宮かふぃー)

『太鼓の達人』でボカロを知りました

晴いちばんの制作環境。Windowsマシン上でSTEINBERG Cubaseを使用している。モニター・スピーカーはYAMAHA HS5。オーディオ・インターフェースはSTEINBERG UR44Cで、コントローラーのSTEINBERG CC121もセット。ヘッドフォンはTAGO STUDIO T3-01

−『沼ハマ』で、晴いちばんさんが、打ち込みでのトラック制作にとどまらず、ベースやギターの演奏からフィールド・レコーディングまでを取り入れた手法と、同世代のクリエイターとのコラボまでを披露していたことに驚いて、お話を伺いたいと思いました。もともとピアノを習っていたと伺いました。
晴いちばん 3歳くらいからヤマハ音楽教室に通っていて、ピアノを約10年続けたのが音楽のルーツです。コンクールで賞をいただいたりしたので、結構真剣にやっていました。

 

−そこから、ボカロPとして作曲をしてみたいと思ったきっかけは?
晴いちばん ボカロを知ったのは、小学6年生のころに『太鼓の達人』にハマって。そこで曲のジャンルに“ボカロ”があって、すごく気になったんです。それでプレイしてみたら、もともと知っていた初音ミクだけじゃなくて、v flowerとかいろいろな種類があることや、曲もアマチュアが作ってネットで投稿しているということを調べて知って。それを聴いていくうちに、自分でも作ってみたいと思うようになりました。

 

−それで、DTMを始めることになる?
晴いちばん 最初は、セールをやっていた安い音楽制作ソフトを買って、世に出回っている曲の耳コピをして、曲がどうやってできているのかを自分なりに研究しました。それを始めて半年くらいで、STEINBERG Cubaseとボーカロイドを買って、初投稿したのが「スレイベラー」です。最初は何も分からない状態でしたね。

晴いちばんの初投稿曲「スレイベラー」

−曲の作り方は、自分なりにいろいろな曲を解析する中で覚えていったのですか?
晴いちばん そうですね。最初に耳コピしたのは『アンダーテール』などのゲーム音楽です。最初分からなかったのは、ドラム。スネアがあるべきところにフロア・タムを鳴らしていたりして、どうやってリズムを作っていっていいか分からなかった。そういうときはネットでドラムの“たたいてみた動画”を調べて、ドラマーが実際にどうやってたたいているんだろう?というのを見て。楽器自体を理解していくという作業が多かったです。

 

−最初の投稿曲「スレイベラー」から、複雑な和声を使っていますよね。
晴いちばん コードに詳しいわけではなかったんですが、ヤマハ音楽教室に通っていたおかげで、I度、V度とかはなんとなく感覚的に刷り込まれていて。コードの名前とかは全然分からないんですけど、自分が気持ち良いコード進行を感覚的に並べていきました。「スレイベラー」のころは感覚だったんですけど、コードの勉強自体が楽しくなっちゃって、複雑なテンションも積むようになって。最近は頭で考えるようになってきていますね。絶対音感があるので、どれがダメな音で、どれがいい音なのか、初投稿の時点でできていたのは結構大きかったと思います。ピアノが弾けたのは大きなアドバンテージでした。

 

−「沼にときめく!」ではギターもベースも弾いていらっしゃいました。
晴いちばん ギターは中1のころに始めました。最初は買っただけで満足していたんですが、曲を作っていく中でギターは音源だと満足できなくて。あと、学校の文化祭でバンドをやってみたんですが、全然弾けなかったので悔しくて、中2から中3の間で練習を始めました。Maj7はこう、m7はこう押さえるというのを覚えていって。弾けなくてもいいからとりあえず毎日ギターを触ろうとしていたら、いつの間にか弾けるようになっていた。身体に覚えさせるために、弾けなくてもいいから毎日触ろうと思っていたんです。

 

−ベースはいかがですか?
晴いちばん ベースは中3の最後に買いました。最初はギターの6弦をベースっぽく鳴らしてみようとしたんですが、やっぱりベースを弾いてみたいなと。ギターと同じように、毎日触って慣れようと思っています。

 

−「沼にときめく!」の動画で演奏しているのは、1万円代の入門用弦楽器ですよね。
晴いちばん ベースは、サウンドハウスで買った1万円代のもの。弾けるか分からないのに高い楽器を買ってしまうのではなくて、とりあえず形からでも練習はできるので、安いもので始めてみようと。エレキギターも1万円くらいのもので、オクターブ・チューニングが全然合わなかったりするんですが(笑)。でも、もう少しちゃんとしたものが欲しくなって、最近いい感じのギターを買いました。

YouTubeで調べつつ自分の知識にしていく研究をしています

−作風が曲ごとにアップデートされている印象を持ちました。「スレイベラー」以降、定番的なJポップのフォーマットに近いアレンジが数曲続いて、「風鈴星」辺りからいろいろな方向にシフトしています。
晴いちばん 最初のころは、バンド・サウンドを型にいろいろな曲を作っていこうと思っていたんですけど、バンド・サウンドだけじゃ面白くないから、エレクトロを作ってみようと思ってやってみたのが「魔法の星がくれたもの」です。そこから、いろいろな曲を作ってみるのが楽しいと思うようになって。エレクトロとか、民族音楽とか、演歌とか(笑)。いろいろなジャンルを作って、常に新しいものを求め続けるというか。それこそ、飽きないように、今まで作ったことのないような曲を作ることでモチベーションを保つ。それでいろいろな層のリスナーに聴いてもらえるんじゃないかと。

5作目の投稿作品「魔法の星がくれたもの」

−自分が得意とするジャンル以外のものを作るのは、難しいですよね。そこはいろいろ聴いて研究するのですか?
晴いちばん 最初は聴くんですけど、それだけだと“この音は何だ?”というのがどうしても分からないので、例えば“electro swing”で検索して、海外のHow To動画を見るんです。“How to make〜”で検索すれば、いくらでも外国の面白いおじさんが教えてくれる(笑)。

 

−まずはHow To動画を見る、と。
晴いちばん そうやって動画でベースやドラムのリズムにどういう音を使えばいいかを見て。大体分かってきたら、そういうHow To動画を見ないで作って個性を出すというのを最近はやるようにしています。誰も周りに教えてくれる人が居ないので。独学というか、YouTubeで調べつつ、自分の知識にしていく作業というか研究を結構やっています。研究とか分析が好きなタイプなので。コード進行もいろいろ分析したりして。最初の方は分析、研究を繰り返して、曲作りの知識を頭に入れていきました。

 

−こういうジャンルの曲を作ってみたい、という刺激はどこから受けるのですか?
晴いちばん そういうジャンルを得意とするボカロPの方がいらしたので。Twitterで“そういうのを作った”というのを見ると、自分も作りたいと思ったりします。「アブセンティー」は基盤がエレクトロ・スウィングで、かっこいい曲を作りたいと思ったときに、ラフ・スケッチのメロディがたまたまスウィングした感じになったので、これはエレクトロ・スウィングで攻めようと。でも、それだけだと単調になってしまうので、グリッチ・ホップとか、ジャズとか、いろんなジャンルを融合して作りました。

ボカコレ2021秋ルーキーランキング6位を獲得した「アブセンティー」

−ジャンルの参照元は、ほかのボカロPの方が作っている楽曲?
晴いちばん そうですね。エレクトロ・スウィングがどういうジャンルか最初は分からないので、リファレンスの曲を自分の中で数曲決めて、構成を学んでから作る。でもそのリファレンスのまま作っても面白くないので、いろいろなジャンルを混ぜたり、コード進行を複雑にしたり。

スキルのアップデートに機材面の投資は大きい

「アブセンティー」のCubaseプロジェクト画面。パートごとにフォルダートラックで丁寧にまとめているのが見て取れる。トラックネームからNATIVE INSTRUMENTS Battery、STEINBERG Retrologue、SYNTHOGY Ivoryなどを使用していることが推察できる

−DAWをCubaseにしたのはなぜですか?
晴いちばん オーディオ・インターフェースのSTEINBERG UR22MKIIを買ったときにCubase AIが付いていたので。最初に買った音楽制作ソフトはネットの情報が少な過ぎて、何を調べてもどう問題解決したらいいか分からなかったんです。Cubaseはそういう点でもメジャーですし、機能面でもいいなと思って、Cubase AIからアップグレードしました。オーディオ・インターフェースは、STEINBERG UR44Cに買い替えています。

−UR44Cは6イン/4アウトですが、ボカロだとそんなにインプット数は要らないですよね?
晴いちばん そうですね(笑)。でもいずれアウトボードとかも使えるようになりたいなと思って。

 

−アウトボードにも興味がある?
晴いちばん 機材厨というか、機材マニアになりかけていて。ソフト音源とかも、DTMを始めたときから調べまくって買い漁ってきました。一種のコレクターみたいな感じに。依頼で受け取ったお金も音源や機材にかけているのが現状です。

 

−音楽で得たお金を音楽に投資しているわけですね。
晴いちばん 最近音が良くなってきたのは機材や音源のおかげであったりもするので、スキルをアップデートするのに、機材面での投資は大きいと思っています。でも、スキルアップとは関係なく、機材やソフトが好きで買っているというところもあります(笑)。職業作曲家を目指しているので、音のクオリティは絶対に捨てられないと思っていて。音質が良くなるなら、音源を買うのもいとわないです。

 

−既に仕事としての音楽も始めていらっしゃるわけですね。今後はどういう音楽活動をしていきたいと考えていらっしゃいますか?
晴いちばん 当初は作曲を仕事にしようとは思っていなかったんですけれど、最近お仕事をいただくようになって、経験が増えていったことで、自分のスキルを仕事にできたらいいなと。作曲だけじゃなくて、プロデュースも含めた作家としての活動をしていきたいと思っています。具体的にはこれからですが、今、ソニー・ミュージックのPuzzle Projectでもそういう話をしています。それこそ「沼にときめく!」は、ゆう。さんというボーカリストにお願いしたんですが、ネットで活動しているもっと評価されるべきアーティストを発掘して、プロデュースしていくのって面白そうだなと。自分がネットで活動を始めたときに、有名な方に自分の曲を紹介していただいて、名が知られていったということがあって。だから、自分が紹介することで、そのボーカリストに注目が集まるようなことができたらいいなと思っています。

 

−『沼ハマ』でお部屋が映ったときに、SPECTRASONICS OmnisphereとStylus RMXのボックスが見えました。
晴いちばん NATIVE INSTRUMENTS Komplete 13 Ultimateもあります。Kontakt 6はかなりの頻度で立ち上げるので、Kompleteだけは買っておいて損はないと思います。あとはダウンロード購入です。

−ほかにはどんなものを?
晴いちばん TOONTRACK Superior Drummer 3とか、SPITFIRE AUDIO Spitfire Chamber Stringsとか。セールのときに欲しいものを買います。

−例えば「アブセンティー」では、どういう音源を使っているのですか?
晴いちばん この曲はサンプルが多いんです。Spliceで曲に合うサンプルを探してリズムを作っていきました。あとはCubaseのGroove AgentやHalionSonicを加工して使いつつ。シンセはXFER RECORDS Serumです。あとは細かくいろんな音源を使っています。

−機材と言えば、このオンライン取材のマイクはAKGのコンデンサー型ですね。
晴いちばん C314です。AKGの定番とも言えるC414を買おうと思ったんですが、そこまで求めなくてもいいかなと。セールで、ポイント還元率が高くなったときにサウンドハウスで買いました。以前はUSBマイクを使っていたんですけど、オーディオ・インターフェースと同時に併用できなくて(編注:使用しているソフトで、入力をUSBマイクに設定すると、出力先をオーディオ・インターフェースに設定できないという意味)。それでいいマイクを買おうと思ったんです。

いいね/RTしてくれる仲間がいることは大事

−ほかのボカロPの方々とはどのようにつながっていったのですか?
晴いちばん 最初は、もちろん誰も友達が居ない状態で始めるので、Twitterで手当たり次第、同年代だと思われるボカロPをフォローしてみたんです。そうしたら、2004〜06年生まれのボカロPが集まるグループDMの募集を見かけて。そこへ入れてもらったのが最初のつながりです。それは「スレイベラー」投稿前で、“これからボカロPをやりたい”と言って。それで「スレイベラー」を投稿したら、小宮かふぃーさんが“13歳の初投稿で、こんなにいい曲なんだ。いつか動画作ってみたい”と言ってくれて。まさに自分が誰かにお願いしたいことを名乗り出てくださった。それで2曲目「リメンバーボイス」から、一緒に作品を作っていくことになりました。「スレイベラー」みたいに実写だと見てもらえなくても、かわいいイラストがあると聴いてくれる人が増えて、名前も知られるようになってきました。最初は、そういう人とのつながりですね。たまたまイラストを描ける方が気に入ってくれて。

2作目の投稿となった「リメンバーボイス」。イラストは小宮かふぃーが担当

−1曲目を作って投稿しないと、そういうことは起こらないわけですよね。
晴いちばん 最近だと、1作目からイラストレーターの方に依頼して投稿するボカロPがほとんどですよね。もしくは自分で画を描いて投稿する。最初のつながりがなくても始められる状況ではあります。

 

−つながりの無いイラストレーターに依頼して、となると、ちょっと仕事っぽくなりますよね。そういう意味で、晴いちばんさんは「スレイベラー」に注目してもらえる要素があったからこそ、いろいろな人とつながっていったのかなとも思います。
晴いちばん そうですね。年齢関係なくボカロPをやれる環境があるので、まずTwitterのアカウントを作って、気になるボカロPをフォローして、あいさつをして人とのつながりを作っていく。そうしないと、最初に曲を聴いてもらえる人や拡散してくれる人が居ないと、テニスの壁打ちをしているような感じになるので。いいねとかRTしてくれる仲間が居ることは大事だと思います。

 

−一人で作っているけど仲間が居る、と。ボカロP全員がそうではないかもしれませんが、晴いちばんさんの活動においては大きいと思います。
晴いちばん 普通のシンガー・ソングライターだったら事務所へ売り込みにいくとかあると思いますが、友達と高め合ってレベルを上げていくのが、ボカロPならではかなと。でも最近急に有名になるボカロPって、孤高の存在で、誰もフォローしないで曲だけ再生数が伸びている人がいて。そういう方は、どういう気持ちなんだろうかと思います。誰ともつながらないで、仕事っぽいというか。そもそも趣味で始めることだと思うんですけど、商業っぽい方もいるので、どんな感じでやっているんだろうと気になります。自分とは全く違う世界なので、逆に興味もあって。別名義でそういうことやったら、どんな感じなんだろうとか(笑)。

誰もやらないようなことをやりたい

−『沼ハマ』の「沼にときめく!」ではフィールド・レコーディングもされていましたね。
晴いちばん DTMって、パソコンの中で完結できるのが醍醐味ですけど、たまには引きこもっていないで外に出て録音しても面白いんじゃないかと思って、外に行ったりはしていますね。「風鈴星」の間奏で鳴らしているセミの音も、自分で録ったものです。ネットで探せば素材はあるんですけど、やっぱり、記念……というとおかしいですけど、自分で生で録りにいったという思い出にもなるので。

「風鈴星」(ふうりんぼし)。4作目の投稿作品

−既成の音色だけで作るよりも、自分だけのサウンドを録りにいくことで、作っている音楽が自分のものになっていくのかなと思います。
晴いちばん そうですね、パソコンだけで完結できるんですけど、逆張り精神というか(笑)。誰もやらないようなことをやりたいということもあって。演歌もそうなんですけど。

 

−スイッチが切り替わるし、元に戻ったときにも新しい発見があると思います。
晴いちばん 経験が大事ですよね。演歌を作った経験がどこかで生きるかもしれない(笑)。

自らの歌唱による「15歳の誕生日記念に演歌を作って歌ってみました」も投稿している

すべてインプットした状態で身体からアウトプットできるようにしたい

−晴いちばんさんの曲は、コードや構成だけでなく、メロディもキャッチーさを求めて工夫されていると感じました。
晴いちばん 意識しているのは、自分がいいと思うメロディで、キャッチーになるようにしたい。だからメロディを思いついたときに、頭の中で保持しておいて、翌日思い出せるかどうかということも時々やっています。良いメロディだと思ったら録音することが多いんですけど、それをキャッチーかどうか判定するのは日をまたいで。「やきもちをやこうね!!」は、学校の帰りのバス停で、歌詞と一緒に降ってきて、その日寝るときも頭の中で鳴っていたので。そのくらいずっと鳴っているものがキャッチーじゃないかなと。

 

−『沼ハマ』では、最近のメロディの傾向を踏まえて作曲するというお話もされていました。
晴いちばん 幅広く曲を聴いて……ボカロを作るんだったらボカロの曲をたくさん聴いて。半音のメロディとか、オクターブ跳躍が多いとかを自分なりにインプットしておくんです。でも、作業するときにそれを使おうとすると機械的になってしまうので、そういうのがあるということを頭の中で無意識に思っておく。それで、お風呂場で鼻歌を歌ったりして、キャッチーなメロディがすぐ出るような頭にしていくというか。今あるものをすべてインプットした状態で、身体からアウトプットできるようにしたいと。

 

−ミックスはいかがですか? トラックは作れても、サウンドの処理は苦手という方も多いと聞きます。
晴いちばん それこそ勉強中なんですが、「アブセンティー」はビンテージなサウンドにこだわろうと思って、ビンテージ系のコンプレッサー・プラグインを使ったりとか。作品ごとにエレクトロとかバンド・サウンドとか方向性が違うので、かなりローエンドの扱いが変わってしまうのが難しいですね。プラグインではCubaseの付属EQ=Frequencyは実家のような安心感がありますね。それ以外はWAVESが多いです。


自分の曲を覚えて歌うのに時間をかけてくれたというのがまずうれしい

−ボーカリストとのつながりも、ボカロPと同じような形で?
晴いちばん そうですね、でもボカロPほどはつながりはないです。ゆう。さんとはたまたまつながっていたので「沼にときめく!」で声をかけました。

−piaproに、自作曲の歌詞とトラックをアップしていますよね。
晴いちばん カラオケ音源を上げておくのはマストになっています。歌ってもらいたいというのはあるので。どんなクオリティでも、自分の曲を覚えて歌うのに時間をかけてくれたというのがまずうれしいです。みんなどんどん歌ってくださいという感じで。最近では歌いやすいキーに変えたものもたくさん上げて、少しでも歌ってもらえるチャンスをと試行錯誤しています。

−キー変更は、元のMIDIデータで行う?
晴いちばん そうですね。それが一番大変で。前に使っていたパソコンのスペックがギリギリで、それを必死にキーチェンジしていくのがつらかったです。でも、バンドサウンドものでキーを変えるとなると、ギターを弾き直さないといけないこともあるかもしれませんが、エレクトロだったらトランスポーズでできますから。

 

−ソニー・ミュージックのPuzzle Projectに参加することになった経緯は?
晴いちばん REDというソニー・ミュージックの部署でPuzzle Projectをやると知って、応募してみたんです。そのころ、いろいろな事務所からオファーをいただいていたんですけど、Puzzle Projectに興味を持って。そこから楽曲提供やコンペのお話をいただいたりするようになりました。音楽業界のことを知るという意味で、すごくお世話になっています。

 

−楽曲提供はどのような仕事をされていますか?
晴いちばん 最近はウクレレの近藤利樹君。同じ歳のクリエイター同士でコラボをしてみない?というお話をいただいて、ウクレレ×ボカロというテーマで。それまでウクレレと言えばハワイのような南国のイメージだったんですけど、今までにない斬新なものができたのも、コラボのおかげでした。ただ、『沼ハマ』はNHKさんから直接お話をいただいたものでした。コンペも出しているんですけど、Puzzle Projectではクリエイターを縛らないで自分でやりたいものを選べるので、感謝しています。

−ちなみに、発表しているもの以外に作っている曲はもっとあるのですか?
晴いちばん Twitterだけにアップした曲が10曲くらいあったり、どこにもアップしていないけれど作ったものは結構あって。でもそんなに制作が速いわけじゃなくて、3年で100曲くらいのペースだと思います。歌ものだけじゃなくて、インストもあったりするので。

 

−晴いちばんさんの目指している音楽家としての姿は、どんなスタイルの音楽でも作れる必要がありそうですね。
晴いちばん そうですね。職業作曲家と呼ばれる方々は、いろいろなコンペに曲を出していくわけですが、自分がそうなっていくとして、いろいろなジャンルを柔軟に作れないと対応できない。コンペだけじゃなくて、楽曲提供もそうですが。柔軟に作れる作曲家が求められているし、自分もそうなりたいというのが理想像としてありますね。

Twitterに投稿したダブステップ。練習で作ったものだそう

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