高橋健太郎〜KORG DS-DAC-10Rを使う理由

KORGDS-DAC-10R

MRシリーズ同様の明るく光が差す感じのサウンド


KORGは2006年にMR-1とMR-1000を発売したのを皮切りに、MR-2000SさらにはMR-1の後継機であるMR-2と、プロの使用に耐え得るDSDレコーダーを作り続けている。その一方で、2012年にはパソコンとUSB接続してDSD再生が行えるDAコンバーターDS-DAC-10をリリース。その後も後継モデルを次々と市場に投入し、多くのオーディオ・マニアから喝采を浴びている。DS-DACー10Rはその2つのラインを1つに統合したような製品で、型番が示すように基本はパソコン用DAコンバーターなのだが、末尾に“R”とあるように録音が可能。つまりはDSD録音ができるオーディオ・インターフェースとして使えるのだ。その魅力についてプロに語っていただく本連載、1回目はプロデューサー/エンジニア、そして音楽配信サイトOTOTOYの創設メンバーでもある高橋健太郎氏にご登場いただこう。


PCMをDSDにするだけで滑らかな音になる


高橋氏がDSDに興味を持ったのは、弊誌が始めたDSD配信がきっかけだったそうだ。

「清水靖晃さんと渋谷慶一郎さんの音源をOTOTOYでDSDのまま配信することが決まっていたので、そのチェック用にKORGのMR-2000Sを借りてきたのが最初です。その借りたMR-2000Sでライヴ録音を始め、これは良いと思ったので自分でも購入しました」


MR-2000S導入後はさまざまな録音現場に持ち出し、1台だけでは足りずに2~3台をさらに借りてマルチトラック録音をしたこともあったというが、基本的には自身のスタジオ用のマスター・レコーダーとして使っているとのこと。

「以前は24ビット/48kHzで録音できるDATをマスター・レコーダーとして使っていたのですが、その後、ミックスしているAVID Pro Toolsに戻す形で2ミックスのファイルを作るようになり、MR-2000S導入後はこれをマスター・レコーダーにしようということで落ち着いたんです」


PCM録音された素材をコンピューターの内部でミックスしつつ、マスター・レコーダーにDSDフォーマットで録ることに意味はあるのかとの問いに、高橋氏はこう答える。

「DSDは“きめ細かな音がする”ってよく言われますけど、PCMで録っていたものをDSDにしても、そのきめ細かさや滑らかな感じが出てくるんです。最近の高級オーディオ用DAコンバーターには、PCMをリアルタイムにDSD変換して鳴らすものがありますが、それもやっぱり繊細で滑らかな音がする。自分はそういうDSDのニュアンスが好きなんだなとあらためて思いました」


そんなDSDならではの音色に加え、“KORGの音”というものが確実に存在すると高橋氏は指摘する。

「今回、DS-DAC-10Rを使ってみてMR-2000Sと共通する音を感じました。それをチップのせいにする人もいる……確かにこの2製品はDAコンバーター用チップにCIRRUS LOGICのCS4398を搭載していますけど、CS4398を使っていてもまったく違うサウンドで鳴る製品もありますから一概には言えません。僕がKORGの製品から共通して感じるのは“明るい音”。明るいけど、低音も伸びているので、決してハイ上がりではない、言うなれば光が差す感じの音なんですね」


パソコンに録れるとAudioGateでの作業が楽


高橋氏がMR-2000Sをマスター・レコーダーとして使うとき、録ったマスターはファイルの形でパソコンに移し、KORGの編集ソフトAudioGateでレベルを調整したり、フェード・イン/アウトを書いたりしているそうだ。

「AudioGateは最初のバージョンのときからすごく好きなんです。読み込めるフォーマットが幅広く、DSDとPCMのコンバートもできるので本当によく使いますね。特にノーマライズは信用しています……と言っても、ちょっと変な使い方をしています。一度ノーマライズの実行をして、すぐにストップ。すると“Gain”の欄に何dB上げたかが表示されるので、それをメモしてマニュアルで何dB上げるか決めるんです。DSDはPCMと違ってクリップするギリギリまで使う感じではない。音源の内容によって、マージンを何dB取るかを変えるんです」


このようなAudioGateでの作業が必須であることを考えると、DS-DAC-10Rで直接DSDファイルとしてパソコンに録音できるのは大きなメリットだと語る。

「MR-2000Sで録る場合は、録った後にMR-2000SをUSBディスク・モードにしてパソコンとつないでファイルを移し、AudioGateで編集した後に、DSDで聴くために再びMR-2000Sに戻すということをしていたわけですから、めちゃめちゃ楽ですね」


高橋氏によると同一のパソコンでPro Toolsを走らせつつ、DS-DAC-10Rを使ってマスターを録ることも可能ではあるが、やはりマシンは別にした方がいいとのこと。

「録るだけだったらそんなにマシン・パワーはいらないので、ラップトップを1台用意するといいと思います。システム的にも小さく構築できるので、ライブ会場に持ち出して卓アウトをもらって録るのも簡単ですよね。ただし、規定入力レベルがー6dBVなので他の機器との接続は要注意。レベル設定がそうなっているのは、もともとDS-DAC-10Rがアナログ・レコードの取り込みがしやすいように設計されているから。フォノイコやDJミキサーを用意せず、直接ターンテーブルのアウトをつなげられるんです。サンプル・ループを作りたいとき、アナログ・レコードを録るのってそれなりに難しい作業だと思うんですけど、その辺が楽勝なんですね。そういう意味でもDS-DAC-10Rは、クリエイターの使い方次第でいろいろな用途が考えられる製品だと思います」


DS_DAC_10R_for-web


Presented by KORG
サウンド&レコーディング・マガジン2016年11月号より転載
KORG
DS-DAC-10R
オープン・プライス(市場予想価格5万円前後)
●チャンネル数:2 ●入出力端子:ライン・イン/フォノ(RCAピン)×2、ライン・アウト(RCAピン)×2、ヘッドフォン(標準)×1 ●入力フォーマット:2.8MHz、5.6MHz(以上1ビットDSD)、44.1kHz、48kHz、88.2kHz、96kHz、176.4kHz、192kHz(以上16ビット/24ビットPCM) ●周波数特性:10Hz~40kHz(±1dB) ●S/N:105dB(TYP.)20Hz~20kHz、IHF-A ●接続:USB2.0 ●オーディオ・ドライバー:ASIO2.1、WDM、Core Audio ●電源:USBバス・パワー(5V 500mA) ●外形寸法:155(W)×184(D)×49(H)mm(突起部含む) ●重量:1.1kg