UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin開発者インタビュー

UAD-2システムとオーディオ・インターフェースを統合し、精度の高いプラグインのかけ録りまで実現したUNIVERSAL AUDIO Apolloシリーズ。最新モデルとなるApollo TwinはThunderbolt接続のMac用インターフェース。デスクトップ・タイプながら、最高10イン/6アウト、24ビット/192kHzのレコーディングに対応。UADプラグインのかけ録りはもちろん、Unisonテクノロジーにより入力信号をモデリングのマイク・プリアンプで増幅できる画期的な製品となっている。現代のスタジオワークに必要な機能を網羅したこのコンパクトなI/Oは瞬く間にクリエイターの注目を集め、発売からほどなくして多くのプロフェッショナルが自身の制作環境にApollo Twinを組み込み始めている。ここでは開発者や既にApollo Twinを実戦投入しているアーティストへのインタビューを通して、このモダンなインターフェースの魅力を明らかにしていきたい。 Photo:Hiroki Obara

Apollo Twinはフラッグシップと同等の性能をキープしつつコンパクト/低価格化を実現したインターフェースです


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コンパクトで合理的なApollo Twin。特集を始めるにあたり、まずその設計理念について、UNIVERSAL AUDIOのユウイチロウ・ナガイ(インターナショナル・セールス・マネージャー)、ロブ・カリー(チーフ・テクニカル・オフィサー)、ウィル・シャンクス(プラグイン・プロダクト・マネージャー)の3氏に話を伺った。●Apollo、Apollo 16と順調にラインナップを拡充してきた同シリーズですが、これまでの成果をどのように総括しますか?
ナガイ まず言いたいのは、Apolloは当初より数モデルから成るシリーズとして立ち上げられたプロジェクトだということです。一口に音楽制作と言ってもさまざまなスタイルがあり、1台ですべてのニーズを満たす万能インターフェースなど存在しないと考えているからです。つまりApolloシリーズの各モデルは、最初に出した製品のバリエーション・モデルを後から付け足すという発想ではなく、最初から特定のユーザー層を念頭に置いて設計/開発されたものなのです。
●ではApollo Twinのコンセプトとは?
ナガイ 小型オーディオI/Oの製品コンセプトはシンプルで、I/O数の削減、コンパクト化、低価格化といった要素がその柱を占めます。しかしユーザーに聞き取り調査を実施した結果、私たちは重要な事実を知り得ました。I/O数はフラッグシップ機ほど必要ないものの、サウンド・クオリティは同等の製品が欲しいと考えるユーザーが多かったのです。結果として、AD/DAコンバーター、プリアンプ、デジタル制御のモニター・コントロールや頑丈な構造など、I/O数を除けばApolloのラック・マウント・モデルと何ら変わらないオーディオ・インターフェースに仕上がりました。つまりApollo Twinの製品コンセプトとは、フラッグシップ・モデルと同等のクオリティを保ちつつ、コンパクトかつ低価格なインターフェースを実現することだったと言って差し支えないと思います。
●接続はThunderbolt専用となりましたね。
ナガイ Thunderboltは画期的で信頼性の高い技術です。Macとの組み合わせによる優位性としては、PCIe x 4の広いバンド幅、高い安定性、ラップトップ・コンピューターでもプロ・レベルのシステムを構築できる拡張性が挙げられます。 02▲Apollo TwinはThunderbolt端子を備えたMacコンピューターのみで使用可能。PCIe×4の広い帯域幅で、ラップトップ・コンピューターでの使用時も高い安定性を実現する。なお、Apollo Twinはバス・パワーでは駆動せず、ACアダプターによる電源の供給が必要になる●新しく開発されたUnisonとは、どのようなテクノロジーなのでしょう?
カリー Unisonとはアナログとデジタルの境界をあいまいにすることを目的としたテクノロジーです。このような技術を実現するためには、設計開発の初期段階からハードウェア(回路)とアルゴリズム(ソフトウェア)を統合的に扱うアプローチが必要でした。これはアナログ/デジタルを同じレベルで追及してきたUNIVERSAL AUDIOだからこそ開発できた技術だと自負しています。
●Unisonにおいて、ハードとソフトの連携はどのように取られているのですか?
カリー プリアンプがデジタル制御のため、連携はデジタル的に取られています。Unison対応プラグインはConsoleソフトのプリアンプ・インサート・スロットに立ち上げられたときのみ、物理的なインプットを処理します。
●UADソフトウェアも順調にバージョン・アップを重ね、THERMIONIC CULTURE、AMSなど新たなメーカーのプラグインが加わっています。
シャンクス ええ。中でもCulture Vultureは多くのトップ・エンジニアにとって秘密兵器とも呼べる真空管ディストーションで、いつかプラグイン化したいと考えていました。さまざまなディストーション効果のニュアンスをエミュレートするには、幾つもの新技術を考案し最適化する必要がありました。ですが苦労の甲斐あって、ミックスに微妙な温かみを加える使い方から過激なディストーションまで、幅広いニーズに応える製品に仕上げられたと思います。 03▲UADソフトウェアのv7.9より使用可能になったThermionic Culture Vulture(299ドル)。シガー・ロスなども愛用するオール・チューブのディストーション・サウンドを、同社の回路エミュレーションによりプラグインとして再現。パラレルのDry/Wet設定やトニー・マセラティらによるプリセットなど、実機以上の使い勝手を誇る ●Apollo TwinとUADの連携がもたらす利点について聞かせてください。
ナガイ Apollo TwinとUADプラグインの相乗効果によって、さまざまな作業が可能になります。例えばボーカル録音でNeve 1073→Teletronix LA-2A→EMT 140という正統派のチェインを組んだり、ギター録音時にENGLのアンプ・シミュレーターやBOSS CE-1を挿入したりと、可能性は無限です。また小編成のライブであれば、Apollo Twinをスタジオ・クオリティのエフェクトが使える小型ミキサーとして使用することも可能でしょう。これなら手軽なセットアップでライブのミキシングと録音を同時に行えます。
●今後のUADシリーズの展開は?
ナガイ この記事が掲載されるころには、UAD-2 Satellite Thunderbolt Quad/Octoが発表されているはずです。ラップトップ・ユーザーに、強力なUADプラグインの処理能力を提供することを念頭に置いて開発された製品です。より本格的なミキシング処理を求めるApolloユーザーには、Thunderbolt接続によりUADプラグインの処理能力を手軽にパワー・アップできるソリューションとなるでしょう。Translation:Peter Kato (そのほかの記事)
Apollo Twinの全容
Artist Interview 1:滝 善充(9mm Parabellum Bullet)
Artist Interview 2:TeddyLoid