
もう4月! 今年も1/4過ぎました。皆さんのプランは順調に進んでいますか? もしまだ、プランが無いのならこのフレッシュ・スタートの4月にワクワクするような具体的なプランを立ててみてくださいね! プランを立てることで、いろいろな事がうまくいくようになりますよ!
歌作りの作法、あなたはどちらのタイプ?
さて、今回は歌のトラックを完成させるための作法やテクニックについてお話ししましょう。
ボーカルのテイクを編集してOKテイクを作ることを、“歌を作る。”とよく言います。
では歌を作っていきましょう。私はまず“OK”という名前の新規トラックを作ることから始めます。
前回、歌入れの際、テイクごとに歌詞カードを使って歌をチェックする方法をいくつか紹介しました。そうやってチェックした歌詞カードに沿って、各テイクから歌の良い部分を一つにつなげていきます。まあ、単純に良い部分のオーディオ・データを切ってOKトラックに張っていけば良いのです。
がしかし、その前に、ディレクターやプロデューサーによって根本的な歌作りに対しての作法がいくつかあったりします。それをご紹介しておきましょう。
大きく分けるとこの2つのタイプです。
TypeA「あまり切り張りやピッチ修正などボーカル・エディットをしない派」
TypeB「ガンガン切って張ってピッチやタイミングや音の長さも積極的に直していく派」
私は基本TypeBの人間なのですが、プロジェクトによってはTypeAに豹変したしもします。
あるアルバムで、ごく小編成のアコースティックなオケに女性ボーカルを乗せるという企画がありました。それまで生でオケを録るときも、必ずドンカマ(クリックのことを古い人間はドンカマと言いますm(__)m)をミュージシャンに聴いてもらい録音していました。ドンカマを聴いて演奏や歌入れをすれば演奏の直しのためのパンチ・イン、パンチ・アウト、切り張りなどの編集もテンポ・マップが正確にDAW上にできるので楽です。
しかし、いつものようにドンカマを聴いて録音してもらっても、なにか面白くありません。そこでドンカマをイントロまで聴いてもらって後は無しで録音してみました。いわゆる生演奏一発録音です。
これが良かったんですね~。ドンカマに支配されない自由な雰囲気やそれから生まれるリズムの揺れ……。
なので、そのアルバムは一枚すべてドンカマ無し、歌も含め生演奏一発録音で作りました。
どうしてもというところだけはパンチ・インして直しましたが、演奏力/歌唱力があるセッションの場合は、ドンカマ無しの一発レコーディングもありかもしれませんよ。
歌詞を一文字ずつ細かく切り張りするプロデューサーもいる
とはいえ私は基本TypeBの人間です。リスナーが“良い歌だな〜”と思ってくれるなら、何をしても良いと思っています。
私がまだ駆け出しDだったころ、プロデュースをある大御所MSさんにお願いしました。そのMSさんの歌入れの方法、特に歌の作り方はとても勉強になりました。
彼は歌を歌詞の音節ごと、つまり平仮名一つずつチェックしていくのです。
「ここまで細かくチェックしてつなぐんだ!」
正直、それまではあまり細かくつなぐと歌の流れを壊すのでは……と思っていましたが、MSさんは平仮名一文字ずつ本当に細かくつなぐのです。しかし、全く違和感なく、生き生きとした歌になっていました。それ以来、歌を作る方法論にタブーは無い!と思っています。
さて、歌を作るときに何に着目するか。
・ピッチ
・リズム・タイミング
・音の長さ
・声質
・表情
(番外)ブレス
これらの要素を意識しながら良い歌を作っていきます。もちろんこれらの要素は歌入れのときにチェックするポイントでもあり、ボーカリストに対してディレクションをするポイントでもあります。
そしてこの要素をチェックする単位なのですが、私は日本語の詞の場合はその歌詞をローマ字に直したときのアルファベット1つ単位で考えます。
日本語は一つの音が母音のみか母音と子音で構成されています。
例えば、
「君に会いたい」
という歌詞はならば
「K・I M・I N・I A I T・A I」
というように母音と子音に分かれます。
このアルファベット一文字ごとで各要素をチェックしていくのです。
今回はここまで。次回はこの要素ごとの作法、テクニックなどをご紹介していきましょう。

【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com
※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!