第8回〜ボーカル・レコーディングで必要なグッズあれこれ

皆さんこんにちは。3月も半ば、新しい進路が決まって4月からの生活にワクワクしている方も多いと思います。
そのワクワク感がメンタルにはとても大事なんです。今、ワクワクしていない人もこの春からワクワクできるようなことを作ってみてはいかがですか? 日々、楽しくなりますよ!

さて、今回も歌録り(ボーカル・レコーディング)のお話。なんですが……
今日は歌録りのとき、必要なグッズなどについても考えてみましょう!
(ちなみに飴や飲み物の話は本連載第4回第5回を参照くださいね)

歌詞カードは見やすさ重視。難しい漢字にはルビを


さて、ボーカリストがあなたのスタジオに来ました。マイクやマイクプリ、コンプなどのセッティングはバッチリ!
次に歌詞カードをプリント・アウト。

「少し多めにプリントしとくか~。ん? 出てこない?! あっ、インクが無い! 用紙も無い! ヤバ! どうしよう!」

実は、実際に作業をしていると、こういう現場に出くわすとことは一度や二度ではありません!
特にプライベート・スタジオでは、プリンターの使用頻度はあまり多くないと思います。ですから、インクや用紙が切れていても分からないときが多いようですね。もちろん、プリンター自体が正常に動作するかも前日にはチェックしておきたいものです。

また、歌詞のプリント(歌詞カード)についてですが、以下のポイントに気を付けてくださいね。

◎少し大きめの分かりやすいフォントで。センタリング(中央揃え)などしないで普通の配列でプリントする。

◎基本的に1枚にまとめる。もしボーカリスト用が都合で2枚になっても、ディレクター用は1枚にまとめる。

◎同じ歌詞のリピートも“※繰り返し”などにしないで、コピペして文字列にしておく。

◎カワイイからといって、ピンクや黄色など見にくい文字色にしない(なんか稀にあるんですよね)

◎読みが難しい漢字は、ひらがなにするかルビを入れる。

歌詞カードへの書き込み方は、3パターンある

さて、歌詞カードも用意できました。早速、歌入れが始まります。
前回も書きましたが、テストのテイクも録音しておいてくださいね。何が起こるか分からないので!

で、ディレクターは基本的に歌入れをしながら、歌のどの部分が良くてどこが悪かったか、各テイクごとに記録を付けていかいないといけません。ちなみに、私は良いところは四角や丸で囲って、ダメなところはアンダーバーを書き込みます。

で、この記録の方法がディレクター/プロデューサーによってまちまちなんです。特に歌詞カードの使い方に関しては、大まかには以下の3つの方法があります。

(1)「各テイクごとに、歌詞カードを一枚ずつ用意して、録音時にしっかり記録する方法」

→この場合は歌詞カードがテイク分必要ですので、事前に10枚以上プリントしておきます。
歌詞カードへの記入は基本鉛筆! 私のお勧めは三菱鉛筆“Uni”。こだわりの2Bで。
鉛筆削りで芯はあま削り過ぎない方が良いかと思います。これも最低5~6本は用意しておきたいところ。消しゴムは定番のトンボ鉛筆“MONO”で!

各テイクごとに、歌詞カードを一枚ずつ用意して、録音時にしっかり記録する方法 各テイクごとに、歌詞カードを一枚ずつ用意して、録音時にしっかり記録する方法

(2)「1枚の歌詞カードに、各テイクの“良し悪し”を記録する方法」

→この場合は、記録を記入する歌詞カードはとりあえず1枚ですが、できたら4~5枚はプリント・アウトしておきましょう。
この方法だと1枚で全テイクの情報が確認できますので、どの言葉がうまく歌えていないかなどが一目瞭然!
で、ここでのマスト・アイテムが色ペン! テイクごとに色で分けて記入します。
12色くらいあると良いですね! 昔は色鉛筆を使っていましたが、今は消せるインクペン=パイロットの“フリクション”が便利!
ただしこの方法、テイクが多くなるとゴチャゴチャして見にくくなるので、4テイクで歌詞カードは1枚くらいの割合が良いかもしれません。

1枚の歌詞カードに、各テイクの“良し悪し”を記録する方法 1枚の歌詞カードに、各テイクの“良し悪し”を記録する方法

(3)「とりあえず、どのテイクが良かったか印象だけメモっておく方法」

→これはメモ1枚あればOK。何テイクのサビが良かったとか、ザックリした記録だけできれば大丈夫。
ただしこの方法は、そのボーカリストとの歌録りを何度も経験していて、かつボーカリストの歌唱力が高いプロジェクトか、全テイクの内容をほぼ頭に入れられる優秀なディレクターの場合以外はお勧めできません。また、この方法は歌を編集するのに時間がかかる場合が多いです。
しかし、この方法は大きなメリットがあります。それは歌詞カードを見ないでボーカル・ディレクションできるからです。詳しくは次回に!

とりあえず、どのテイクが良かったか印象だけメモっておく方法 とりあえず、どのテイクが良かったか印象だけメモっておく方法

ボーカル・ブースの照明でムード作りも忘れずに

さて、今度はボーカル・ブース。
まず、マイク、ヘッドフォンなどの機材の準備は整っていたとして、ブースで大事なものは“譜面立て”。
この場合、歌詞を置くものになるのですが、ボーカリストも歌いながら歌詞カードにいろいろと記入します。
ですから、紙を受ける部分がフラットでしっかりしていて、ある程度の重量感があるモノが良いですね。軽いものだと歌詞カードへの書き込みが難しいので注意です。

次にペン。歌詞カードに書き込むペンですが、プリント・アウトの文字色はほぼ黒ですよね。
なので、少なくとも文字色と一緒の黒と違う色……例えば赤などのペンを譜面台に用意してあげると良いですね。
これも、消せるパイロットの“フリクション”が良いと思います。

もう一つ、ボーカル・ブースの照明をコントロールできるようにしておくと良いと思います。曲によっては暗めの照明の方が歌う気分が出てくることもあると思います。電球の光を調整できる調光器も売っています。これでボーカリストの気分によって、照明を変化できるようにしておくと良いと思います。
ちなみにプロフェッショナルのスタジオの多くは、各部屋、ブースやコントロール・ルームなど、照明のコントロールができるところが多いです。

~今回のまとめ~

◎歌詞カードのためのプリンターの準備は完璧に!

◎ボーカリストが歌いやすいように、プリントにも気を遣って!

◎鉛筆は三菱鉛筆“Uni”、こだわりの2Bで! 消しゴムは“MONO”!

◎消えるペンは何色か用意しておくと便利!

◎ボーカル・ブースの譜面台はしっかりしたものを!

◎ボーカル・ブースにも筆記具を忘れずに!

◎ボーカル・ブースに調光器があるとボーカリストの気分が作りやすくなる!

ではまた、次回!
CUS!

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【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!