第3回〜ディレクターの最重要の仕事=歌入れ!!(デモ編その2)

皆さん、あけましておめでとうございます! 皆さんはお正月いかがお過ごしですか? 時間もあるしガッツリDAWにかかりっきりの人も多いでしょう。今年もこの連載を通じて皆さんの制作のお役に立てたらうれしいです!

私は今、ニューヨークにいます。クリスマスはロスで過ごし、年越しはマンハッタンの真ん中のタイムズスクエア!

長年の夢が叶いました。

ロス、ニューヨークでは英語の勉強をしつつ、音楽関係だけでなくいろいろなプロジェクトをこちらで成功させた方々とお会いして、有意義な時間を過ごしています。

夢を現実にする方法は、サウンド&レコーディング・マガジンで連載していた「音楽クリエイターのためのイメージトレーニング!」(2014年11月号〜2016年12月号)を読んでみてください。

デモは関係者のコンセンサスを取るためにも重要

さて、前回はデモでの歌録りの大切なポイント、準備の仕方などをお話ししました。今回は実際の歌録りの大切なポイントをお話ししましょう。

でもその前に、もう一度デモの歌録りの大切なポイントを復習!

・アレンジの方向性を探る(声とサウンドの相性確認!)
・テンポを決める(曲の雰囲気、歌詞の聴こえ方、歌の表情などをチェック)
・キー(Key)を決める(歌手の一番いい声が出せるキー、もちろん曲の雰囲気、歌詞の聴こえ方、歌の表情などもチェック)

これらのポイントをしっかり頭に入れて進めてください。

オケの準備もできた。環境も大丈夫。マイクなどの機材もOK。早速、歌のレコーディングに入ります。

と、その前に、この曲は誰と作っていますか? 作詞家、作曲家、アレンジャーそしてシンガー?

最近は詞、曲、アレンジとも複数の人で作っていく場合も多いと思います。今回、この曲のプロジェクトのディレクターであるあなたは、かかわった皆の意見をまとめておかなくてはなりません。この曲をどのように仕上げるか、何のためのデモなのか、皆と共通のイメージを持っておきたいものです

そして、このクリエイターたちの意見をまとめることはディレクター(もちろんプロデューサーも)のとても大切な仕事です。意見をまとめると言っても皆の意見を公平に聞けば良いものができるかは別の話です(意見をまとめてコンセプトを作る方法はまたあらためてお話しします)。

とはいえ、かかわった人が納得しない状態でプロジェクトが進むと、思わぬ問題が出てくるときがあります。そういう意味でも、デモは皆の制作に対するコンセンサスを得るためにとても大切な作業になります

ボーカリストのモニター音量が、歌録りのクオリティを左右する

では、録音していきましょう。とりあえず事前にシンガーにオケを渡してあれば(普通、その方が良いのですが……)、軽くオケの確認をしてテンポ/キーがこれでいいかシンガーから意見を聞いておきます。そしてシンガーにヘッドフォンをかけてもらい(オケや自分の歌声をモニターしてもらいます)、歌録りの始まりです

もちろんレコーディング・エンジニアも兼ねる皆さんは、事前にオケやクリックのバランス、マイクなどの確認などは済ませておきましょう。

そして、もう一つ大切なこと。それはシンガーの体調を確認しておくことです。“せっかくのレコーディングだから、ちょっとくらい体調が悪くても大丈夫!”と思いがちですが、状況を見て体調が悪ければリスケにする判断も必要です。シンガーの体調が悪ければキーやテンポの設定の確認も無駄になる場合が多いからです。

さて、最初、1〜2回通して歌ってもらって録音レベルのチェックをします。シンガーにはヘッドフォン上のモニターがどんな感じかなどを確認してもらいます。

ここでもし、シンガーが特に初めての人ならどんなヘッドフォンのレベルやバランスで歌っているか確認してみましょう。例えば声量がもう少し欲しいのに、なかなか声が出てこないシンガーは、ヘッドフォン内にそのシンガーの声を大きく返している場合があります

ヘッドフォン内にとても大きく自分の声が聴こえていると、それ以上声を出さないのです。こういう場合はヘッドフォンの中のボーカル音量を下げて、自ら大きい声を出させることでモニターがちょうど良くなるようにしてみます。結構効果があります。

今回はこの辺りまで!
次回は歌を録ってボーカル・テイクをまとめていく過程をお話ししたいと思います。

Nkawaki_066 【中脇雅裕】
プロデューサー/音楽ディレクター。CAPSULE、中田ヤスタカ、Perfume、手嶌葵、きゃりーぱみゅぱみゅなどのヒット作品に深くかかわる。アーティスト/クリエイターの成功とメンタルの関連性に日本でいち早く着目し、研究を重ねている。http://nakawaki.com

※本連載は毎月15日・30日近辺に更新していく予定です。お楽しみに!