こんにちは。作編曲家/ギタリストの佐々木望です。普段はSoulifeというユニットでの歌モノ中心の楽曲制作や個人での制作に加え、ギタリストとしていろいろなアーティストの方のバックでギターを弾かせていただいています。Digital Performer(以下DP)歴は20年以上で、普段の制作はもちろん、ライブのマニピュレートや譜面作成など、あらゆる場面で活用しています。4回にわたり、僕がDPをどう使っているかを話していければと思います。最後までよろしくお願いいたします。
ギター録音におけるトラックグループ機能の利便性
まずは、僕がDPを気に入っている理由をお伝えしましょう。DPのヘビー・ユーザーは、チャンクの利便性の高さやMIDI機能の優秀さを魅力に挙げる方が多いでしょう。もちろんその辺りも気に入っていますが、個人的にDPの素晴らしさは音質面にあるのではないかと思っています。フラットな音質で、脚色を全く感じません。そのため、さまざまなジャンルを幅広く作る方に非常に向いているのではないでしょうか。また、DP独自のトラックウインドウも気に入っています。視認性がとても高く、このウインドウがあることで曲全体を俯瞰できるので、編集しやすいです。ユーザー・インターフェースがシンプルな点も魅力。テーマがカスタマイズ可能で、筆者のお気に入りのテーマは“Light”です。古くからのユーザーの方には一番なじみのあるテーマなのではないでしょうか?
というわけで今回は手始めに、普段のギター録音を紹介します。筆者はハード、ソフト共に幾つかのアンプ・シミュレーターを使っていますが、まずはハードのシミュレーターで幾つか音色を試し、曲に合いそうな音色が見つかったら録音します。筆者のシミュレーターにはダイレクト・アウトが付いているので、シミュレートしたサウンドと一緒にシミュレートされていないラインを録音します。
これにより、リアンプやほかのシミュレーターを通して再録音でき、フレーズはそのままにたくさんの音色が試せます。お持ちのシミュレーターにダイレクト・アウトが付いていなくても、別途DIを準備すれば同時録音できるので、ぜひ試してみてください。
ラインの音を同時録音する理由は、アレンジ初期の段階で録音したけれど、アレンジが進む中で“フレーズは問題ないが、音色を変えたい”と思ったとき、弾き直さなくてもいいということです。アレンジの途中では最終形が見えていないケースも多いので、制作の過程で音色を自由に変更できるのは利点です。
そして、このときに便利なDPの機能がトラックグループです。複数のトラックを一括管理できる機能で、例えば再生/録音の選択とテイクの管理は一括で行いつつ、ボリュームやパンを個別に調整するといった細かな点まで、自由に設定できます。
生ドラムのようにたくさんのマイクを立てて複数のトラックを録音、管理する際にしか使わない方も多いかと思いますが、ギターやベースのライン&アンプを同時に録る際に非常に便利です。
エレキギターのアンプ・シミュレーターはソフトしか使わない方でも、トラックグループはアコギやウクレレのマイク録音に活用できるでしょう。筆者は最低でもマイクを2本を立てていて(よく使用するマイクの組み合わせはコンデンサー&ダイナミック)、トラックグループが役立ちます。その場合はトラック名にマイクの種類を書いておくのがお勧めです。
またミックスの際、複数のギターのトラックをブレンドするケースも多々あります。ドラムやベースが入る楽曲では、アコギは存在感で負けてしまうことがありますが、複数のトラックをブレンドすることで良い結果が得られることが多いです。筆者の場合、あらかじめテンプレートのソングファイルにエレキギター/アコギ用トラックを4~6trほどグループにして、いつでも録音できるようにしてあります。
テイク選びをスムーズにするテイクコンプ機能の活用術
そしてトラックグループと並んで便利なのが、テイクコンプでしょう。どんなに楽器が上手な人でも、1テイクの演奏でOKとはいかないケースがほとんどです。筆者がギターを録音する場合、少し練習して慣れてきたら、ざっと3、4テイク弾いてみます。で、その中で一番良さそうなテイクを使うのですが、やはり多少のミスやリズムのヨレは付き物。その箇所を補正するデータは別のテイクから探します。探し方としては、シーケンスウインドウから“テイクを表示”をクリックし、その中から欲しいテイクを選び、テイクを隠せばコンプトラック(複数のテイクの良いところをつなげたテイク)が出来上がります。これによりテイク選びが非常にスムーズになります。
トラックグループの設定ではテイクコンプも一括で管理できるので、複数のトラックのテイクをまとめて選びたいときも柔軟に対応可能です。例えば、同じスタジオ内でバンドの一発録りするとマイクのかぶりがあるので、“2テイク目のここ”というように、全楽器のテイクを一括で選択する場合に有効です。
今回は以上になります。本稿で紹介した手法が、何かのお役に立てば幸いです。
佐々木望(Soulife)
【Profile】作編曲家/ギタリスト。音楽ユニットSoulifeで2006年アーティスト・デビュー。2011年に遊助の「一笑懸命」にて作編曲家としてのキャリアをスタートして以降、数々のアーティストへの楽曲提供を行う。また、ギタリストとしても多数の楽曲やライブに参加。これまでの代表曲はKing & Prince「シンデレラガール」、欅坂46「二人セゾン」、CMジングルとして「ソニー損保」など。
【Recent work】
『PLANET』
Little Glee Monster
(ソニー)
MOTU Digital Performer
オープン・プライス
LINE UP
Digital Performer 11 通常版:88,000円前後|Digital Performer 11 クロスグレード:71,500円前後|Digital Performer 11 アカデミック:71,500円前後|Digital Performer 11 アップグレード:35,200円前後
※オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.13以降
Windows:Windows 10 & 11(64ビット)
共通:INTEL Core i3または同等のマルチプロセッサー(AMD、Apple Siliconを含むマルチコア・プロセッサーを推奨)、1,024×768のディスプレイ解像度(1,280×1,024以上を推奨)、4GB以上のRAM(8GB以上を推奨)