Universal Audio LUNAのオーディオ・レコーディングのワークフローを解説!|解説:青木征洋

オーディオ・レコーディングのワークフローを解説!|解説:青木征洋

 こんにちは。作曲家/ギタリスト/エンジニアの青木征洋です。UNIVERSAL AUDIOのDAW、LUNAを紹介する本連載。第5回は、オーディオのレコーディングについて触れていきたいと思います。LUNAは今でこそ公式にDAWとして紹介されていますが、発表された当初は“Recording System”と呼ばれていました。“System”という名を冠していることからも分かる通り、UNIVERSAL AUDIOは、これだけでレコーディングを完結できるツールであることを強く意識していたそうです。と言いつつ私はLUNAでレコーディングをしたことがほとんどないため、どんなワークフローで録音できるのか調べながら書いていきます。今のところ、UNIVERSAL AUDIOのオーディオ・インターフェースであるApolloシリーズと組み合わせた場合にレコーディングのスムーズさが一段増すということは分かっていますが、今回はいったんApolloユーザー以外にも共通する部分から触れていきます。

レコーディングの流れとテイク・コンピングの方法

 オーディオ・レコーディングの大まかなワークフローは恐らくどのDAWでも共通でしょう。トラックを作成し、チャンネルの入力を設定、レベルを取ったらモニターを有効にして録音待機にし、準備ができたら録音スタート。RECボタンを押せば録音が始まる、と覚えておけば大体大丈夫。LUNAにおいても同様です。

 そしてOK候補のテイクが録れたらトラックのバージョンを追加し、新しく録音を進めていきます。十分に素材が録れたら、テイク・コンピング用に別バージョンまたは別トラックを作成し、それまでのバージョンの中からOKであろう部分をコピー&ペーストしていきます。

テイク・コンピングを行っているところ。“gt_backing_R”のトラック内の各バージョンから、コンピング先の“gt_backing_R_COMP”にOK部分をコピー&ペーストします

テイク・コンピングを行っているところ。“gt_backing_R”のトラック内の各バージョンから、コンピング先の“gt_backing_R_COMP”にOK部分をコピー&ペーストします

 DAWによっては、自動的に同一バージョン内にテイクを録りためていって、後で波形を見比べながらうまくいった箇所だけを選んでトラックの最前面に持ってくるというコンピングが可能です。LUNAでは同一バージョン内のテイクを並べて比較できないため、複数テイクの良いところをつなぐ際には各テイクの良かった部分を切り取って、要らない部分は都度“Send To Back”という機能でバージョンの裏面に送っていくことになります。

複数テイクの良いところをつなぐ際には、各テイクの良かった部分を切り取って、要らない部分を“Send To Back”という機能でバージョンの裏面に送ります

複数テイクの良いところをつなぐ際には、各テイクの良かった部分を切り取って、要らない部分を“Send To Back”という機能でバージョンの裏面に送ります

 テイクを部分的につなぐことはせず、一発でOK候補のテイクを録れる人であればそこまで気にするポイントではないです。実際テープ・レコーダーへの録音ではそれほどテイク・コンピングに融通も利かなかったでしょうから、ある意味アナログ時代をイメージしてこの仕様にしているのかもと思ったりもします。使ってみて、録音する用のトラックとコンピング先のトラックは分けておいた方が楽かなと個人的には感じました。ただ、LUNAはユーザーからの要望に応え続けてくれているので、テイク・コンピングも今後もっとスムーズになるかもしれません。

Pre-RollとPost-Rollの設定で前のテイクの演奏を録音時に反映

 パンチ・イン/パンチ・アウトについてはオーディオ・リージョンを選択した状態で録音をスタートすれば、その領域だけを録ることができます。録る範囲の前後も、前のテイクの演奏を少しだけ聴きたい場合はPre-RollとPost-Rollを設定できます。このときプロジェクト画面のBAR | BEATルーラー上でOptionを押したまま範囲選択することでPre-RollとPost-Rollの範囲が選択されます。

BAR | BEATルーラー(黄枠)上の暗いブルーで選択された領域がPre-RollとPost-Rollで、明るいブルーがパンチ・イン/アウトする領域。この状態で録音をスタートすれば、12小節目頭から再生され13小節目の3拍目から録音が始まり、17小節の2拍目で録音が終わり、18小節頭で再生が止まります

BAR | BEATルーラー(黄枠)上の暗いブルーで選択された領域がPre-RollとPost-Rollで、明るいブルーがパンチ・イン/アウトする領域。この状態で録音をスタートすれば、12小節目頭から再生され13小節目の3拍目から録音が始まり、17小節の2拍目で録音が終わり、18小節頭で再生が止まります

 ワークフローをレコーディング時のものに切り替えると、この範囲は手動入力できるようになっています。パンチ・イン録音が終わったらCommand+KでPre/Post-Rollを解除できます。パンチ・イン前後もテイクは多少録音されているのでエディットで困ることはなさそうです。ループ録音も行うことができ、録り重ねるごとに新たなバージョンが追加されていきます。このとき、チャンネル・インスペクター内のバージョンID表示の頭文字がVではなくTになっていることでテイクであることが分かります。

ループ録音した場合、録り重ねるごとに新たなバージョンが追加され、トラックのバージョンの頭文字がVではなくTになります(黄矢印)

ループ録音した場合、録り重ねるごとに新たなバージョンが追加され、トラックのバージョンの頭文字がVではなくTになります(黄矢印)

レイテンシーが問題になるときはバッファー・サイズの調整を

 オーディオ録音をしていてマシン負荷やオーディオのドロップが気になる場合は、セッティング画面でバッファー・サイズを変更できます。

メニュー、LUNA→Preferences...からSETTINGSに入り、HARDWAREタブでバッファー・サイズの変更が可能。数値を変えることでレイテンシーとマシン負荷のバランスを取ることができます

メニュー、LUNA→Preferences...からSETTINGSに入り、HARDWAREタブでバッファー・サイズの変更が可能。数値を変えることでレイテンシーとマシン負荷のバランスを取ることができます

 特にCore Audioモードで動作させていてレイテンシーが問題になる場合、この設定のお世話になることが多いと思います。初期のLUNAにはバッファー・サイズの設定項目がなく、設定しなくてもストレスを感じずに使えるという点もあったのですが、Apollo以外のデバイスにも対応し、ネイティブ環境で使えるようになったためこの変更は親切だと言えるでしょう。バッファー・サイズは、もしお使いのオーディオ・インターフェースでダイレクト・モニタリングができて、なおかつそこでモニター音に対してのみある程度の音作りができる場合は気にしなくていい部分でしょう。そんな都合の良いオーディオ・インターフェースがあるのだろうかと問われると“Apolloですね!”という返答になります。

 オーディオ・レコーディングに関しては、もしかしたら特筆して“これは便利!”と思われる機能はなかったかもしれません。しかし、LUNAは録音されたオーディオの編集に関して非常に便利な機能を持っています。まずオーディオ・ワープやクオンタイズをさまざまなアルゴリズムを選びながらプロジェクト画面内で手軽に行える点が便利なのですが、しかもそれを“複数のトラックに対して位相を保持したまま”行えることが、とりわけ大きなアドバンテージになっています。

次回、詳しくお伝えする予定のオーディオ編集機能。ワープ・ポイントはオーディオ・クリップが追加または録音されると、自動的にトランジェントの位置に設定されます

次回、詳しくお伝えする予定のオーディオ編集機能。ワープ・ポイントはオーディオ・クリップが追加または録音されると、自動的にトランジェントの位置に設定されます

 これはオーケストラやドラムなど、マイク・ポジション間の位相やタイミングの一貫性を保持したい録音におけるエディットで非常に便利……といったところでスペースが尽きてしまったので、その辺りはまた次回もう少し詳しくお伝えできればと思います。

 また、今回は詳しく説明できていませんが、LUNAはApolloと組み合わせることでその能力、可能性が最大限に引き出されますので、その話も次回に詳しくさせてもらえればと思います。

Apollo Twin X。UNIVERSAL AUDIOのオーディオ・インターフェース、Apolloシリーズの製品で、内蔵DSP×2基のApollo Twin X Duo、4基のApollo Twin X Quadの2機種をラインナップ。LUNAとの相性も抜群なオーディオ・インターフェースです

Apollo Twin X。UNIVERSAL AUDIOのオーディオ・インターフェース、Apolloシリーズの製品で、内蔵DSP×2基のApollo Twin X Duo、4基のApollo Twin X Quadの2機種をラインナップ。LUNAとの相性も抜群なオーディオ・インターフェースです

 いろいろApolloの恩恵はあるのですが、最も大きいのは先ほども少し触れた通り、低レイテンシーでレコーディングできることだと思います。

 

青木征洋

【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラコンサートではミキシングを務める。

【Recent work】

『salvia』
Nornis
(Altonic Records)

 

 

 

UNIVERSAL AUDIO LUNA

Universal Audio LUNA

LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:62,240円*|LUNA Creator Bundle:93,440円*|LUNA Analog Essentials Bundle:93,440円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:109,040円*
*いずれもbeatcloud価格

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、INTEL Quad Core i7以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB以上のRAM、SSDのシステム・ディスク推奨、サンプル・ベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理

製品情報

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