ついにLUNAがマルチアウトに対応 〜Stream Deck活用術も|解説:青木征洋

Universal Audio LUNAがマルチアウトに対応&便利なコントロール・デバイスとの併用|解説:青木征洋

 こんにちは。作曲家、ギタリスト、エンジニアの青木征洋です。LUNA連載の第11回では先月、中途半端なところで終わってしまったELGATO Stream Deckの話……をする前に、最近追加された要素を紹介していきたいと思います。

ドラム音源をマイクごとにミックス

 最近のLUNAのアップデートで、ついにインストゥルメンツのマルチアウトに対応しました。例えばドラムやピアノなど、複数のポジションでマイキングを行うインストゥルメンツを扱う場合、各マイク・ポジションで別々にチャンネルを立ち上げられたほうがミックスの柔軟性が高くなることは言うまでもありません。個人的には、LUNAはレコーダー兼ミキサーとして扱ったときに最も高いパフォーマンスを発揮するDAWだと思っているのですが、ピアノ音源を打ち込みまたはリアルタイム演奏で録音する人や、電子ドラムでドラムのMIDIデータを入力する人は、これまでLUNAで録ったMIDIデータをほかのDAWに移してマルチアウトで書き出してLUNAに戻す……といった面倒な手順を踏まなくてもよくなるでしょう。

マルチアウトを行っている状態で、画面ではドラム音源のTOONTRACK Superior Drummer 3を設定し、ドラム音源の出力をマイクごとに分けています

マルチアウトを行っている状態で、画面ではドラム音源のTOONTRACK Superior Drummer 3を設定し、ドラム音源の出力をマイクごとに分けています

 マルチアウトされたチャンネルは、AUXに接続してしまえばSPILLボタンで隠してしまうことも可能です。マルチアウトのせいでミキサーが見づらくて困る!というようなケースもないでしょう。

 鍵盤やドラム以外に、ギターについても新たなトピックがあります。Dream '65 Reverb AmplifierをはじめとするUAFXのギターアンプ・ペダル3種がUADxエフェクト化。これにより、FENDER、VOX、MARSHALLの各アンプの音で、すぐにLUNA上でのギター・レコーディングを楽しめるようになりました。いずれも有償プラグインですが、デモ期間があるので安心。まずは試してみてください。

ギター・アンプ・プラグインのDream '65 Reverb Amplifier。ペダル・エフェクターUAFXシリーズとしてリリースされていたものがプラグイン化されました。同シリーズからは、Ruby '63 Top Boost Amplifier、Lion '68 Super Lead Ampもプラグイン化されています

ギター・アンプ・プラグインのDream '65 Reverb Amplifier。ペダル・エフェクターUAFXシリーズとしてリリースされていたものがプラグイン化されました。同シリーズからは、Ruby '63 Top Boost Amplifier、Lion '68 Super Lead Ampもプラグイン化されています

 また、同じくUNIVERSAL AUDIOのオーディオ・インターフェースVoltが“Volt USB Recording Studio”という名前に刷新されて、LUNAや幾つかのUADxエフェクトが付属するようになりました(LUNAはもともと無償のソフトウェアではありますが)。先月にはWindows版もいよいよベータ版から正式対応版になり、LUNAに触れる人口も少しずつ増えていくのではないかと思います。

オーディオ・インターフェースのVoltは、Volt USB Recording Studioと名称を変更。入出力などの異なる7モデルがラインナップされています。またLUNAのほか、Teletronix LA-2A Compressor、Pultec EQ、Oxide Tape Machine、PolyMax Synthなどの12種類のプラグインが付属しています

オーディオ・インターフェースのVoltは、Volt USB Recording Studioと名称を変更。入出力などの異なる7モデルがラインナップされています。またLUNAのほか、Teletronix LA-2A Compressor、Pultec EQ、Oxide Tape Machine、PolyMax Synthなどの12種類のプラグインが付属しています

Stream Deckにアサインしてストレスのない作業を

 さてここからは先月予告していたStream Deckについて。DAWを使用する際にすべての操作をマウスでやると時間もかかりますし、腱鞘炎のリスクも高まっていくため、できればキーボード・ショートカットを駆使したいところ。ただ、いざLUNAを触りはじめたとしても、使い慣れていない段階では起動するたびに“何だっけ?”となることもあるかと思います。また、普段別のDAWで作業されている方であれば、ショートカットを混同してしまうのは最も避けたいですよね。そこで役に立つのが、Stream Deckのようなコントロール・デバイスです。LUNAに限らず、ツールのショートカット類全般をStream Deckに登録することで、メインのツールから離れたときのストレスが軽減できています。

Stream Deckに登録してあるショートカットの例。ソロへの切り替えやマーカー間の移動などがワンボタンで行えるように設定しています

Stream Deckに登録してあるショートカットの例。ソロへの切り替えやマーカー間の移動などがワンボタンで行えるように設定しています

 ボタン一つで動作するようなショートカットは無理に登録する必要はないのですが、例えば“Command+Shift+何か”であったり、“Alt+Shift+何か”といった、修飾キーの組み合わせが絶妙に覚えづらいものを優先的に割り当てていくのがお勧めです。Stream Deckの場合、もっと複雑なマクロだったりスクリプトだったりを走らせることにも使えますが、そういった高度な処理以外にも、こういった覚えるのがおっくうなタスクをサポートさせることで、新しいツールを覚えずに使うことができるようになります。

 先月提案したように、何曲かサミングを試している間にキーボード・ショートカットのボタン・デバイスへの割り当ても固まってくると思いますので、そうなったら一からミックスしてみるタイミングでしょう。LUNAでのミックスの肝はSPILL機能の活用だと思います。そのため、なるべくMAINに直接ルーティングされるトラックを作らず、仮にバス・プロセッシングを行わなかったとしても、VCAトラックとして使うくらいのつもりで楽器の種類ごとにAUXトラックを作成しておくと、ミキサー画面に余分な情報が表示されていない状態で快適にミックスを進めることができるはずです。

 以前もお話しした通り、せっかくLUNAでミックスするのであれば、普段よりもUADエフェクトを優先的に使うとより細かい問題がケアできないままミックスが進行することになるため、仕上がりも有機的になるでしょう。これは好みの話になってきますが、私はすべての問題をしらみつぶしに解決して無表情になってしまったミックスよりも、そういう良い意味で“ラフ”なミックスのほうが好みです。

 というところで終わりがやってきてしまいました。来月こそはお気に入りのUADエフェクト(できればLUNAですぐ使えるUADxエフェクト)を紹介したいと思っていますが、またLUNAに革新的な新機能が増えればそちらを紹介するかもしれません。

 

青木征洋

【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラ・コンサートではミキシングを務める。

【Recent work】

『salvia』
Nornis
(Altonic Records)

 

 

 

UNIVERSAL AUDIO LUNA

Universal Audio LUNA

LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:59,850円*|LUNA Creator Bundle:89,850円*|LUNA Analog Essentials Bundle:89,850円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:104,850円*
*いずれもbeatcloud価格

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、INTEL Quad Core i7以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB以上のRAM、SSDのシステム・ディスク推奨、サンプル・ベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理
Windows:Windows 10/11

製品情報

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