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初めてLUNAに触れる際、どんなタスクを試すとよい?〜Neve/APIサミングの効果を最大限に引き出す方法 by 青木征洋

まずはサミングからやってみよう!ほかのDAWからLUNAへの移行|解説:青木征洋

 こんにちは。作曲家、ギタリスト、エンジニアの青木征洋です。LUNA連載の第10回では、LUNA以外のDAWを使っている人が初めてLUNAに触れるときに、どんなタスクを試してみるのがいいのか、というトピックでお届けします。私自身がどうだったかを思い出しながら紹介しましょう。

Neve/API Summingは30日間のデモ使用が可能

 LUNAはやろうと思えば作曲からマスタリングまで一連のプロセスを完結できるツールです。ただ、まずは覚えることが少なくて大きな効果が現れるタスクから試してみることをお勧めしたいです。私の考えとしては“ミックス済みのステムを取り込んで、トータルでNeveまたはAPIのサミング処理をする”のが、最も簡単で、その変化を最も顕著に体感できるタスクだと思います。

 もちろんステムは細ければ細かいほどサミングの効果が大きくなるのですが、面倒であれば5〜10程度のステムでもかなりの変化を感じられるでしょう。しかも、この作業だけなら新たにDAWの操作として覚えることも少なくて済みますしね。やり方は、LUNAを開いてプロジェクト名を入れたら、CREATEを押してプロジェクトを作成。ステム・ファイルをドラッグ&ドロップでプロジェクト画面に貼り付けてミキサー画面を開き、MAINチャンネルのINPUTでサミング・エンジンを選ぶだけです。Neve、APIいずれも無償版のLUNAには含まれておらず、使用するには購入する必要がありますが、デモとして30日間試すことができます。

ステムを流し込んでNeve Summingを挿したのみの状態。メインのトラックのSUMMINGを“Neve Summing”(赤枠内上部)にすれば、2ミックスにサミングがかかった状態となります

ステムを流し込んでNeve Summingを挿したのみの状態。メインのトラックのSUMMINGを“Neve Summing”(赤枠内上部)にすれば、2ミックスにサミングがかかった状態となります

左がNeve Summing、右がAPI Summingを選択した画面。フェーダー右、スケール表示の値が異なっているのが見て取れます。細部へのこだわりが感じられる部分ですね

左がNeve Summing、右がAPI Summingを選択した画面。フェーダー右、スケール表示の値が異なっているのが見て取れます。細部へのこだわりが感じられる部分ですね

 この状態でオン/オフすれば、LUNA Extensionのサミングがどのような効果をもたらすのかをすぐに把握できます。またヘッドルームを上げ下げすることで、レベルを突っ込んだときやドライブさせなかったときのサウンドも、レベル・マッチされた状態で試すことができます。私の場合、“せっかくだしちゃんと効果が分かるように強めに突っ込んでしまえ”となりがちです。コンプやサチュレーション、テープなど、さまざまな単一トラック用エミュレーション・プラグインを組み合わせた状態と比較したときに、トラックの隙間が“埋まる”、さらに言うとトラック間が“つながる”という感覚を得られるのが、LUNAのサミング・エミュレーションの特徴だと感じています。

 実機のサミング・ミキサーを持っていれば無用の長物と思われるかもしれません。しかし、チャンネル数が無制限、レベル管理が楽、ノイズの混入の心配がない、24時間365日メンテなしで同じ音を出力してくれる、リコールもプロジェクト読み込み時に勝手にやってくれる、となると、その利便性にメリットを感じる人も多いのではないでしょうか。

実機ではできない点として、ミックスでさらにバスを組んでいけば、NeveとAPIのSummingを組み合わせるといった非現実的な処理も可能です

実機ではできない点として、ミックスでさらにバスを組んでいけば、NeveとAPIのSummingを組み合わせるといった非現実的な処理も可能です

 何より、このアナログ・サミングのエミュレーションの素晴らしいところは、不要だと思ったらすぐオフにできること。アナログ・サミングに限らずですが、必要がない処理はやらないべき。“せっかく手間をかけてセッティングしたんだし……”といった意識に引っ張られることなく、正しく判断できるでしょう。

LUNAのサミングでしか出せない質感

 ここまでのプロセスをやっていると、“あ〜、ここだけはちょっと直したい!”という場面に出会うかと思います。そういった軽微な修正をあえて元のDAWに戻らずにLUNAの中で済ませてしまうのもお勧めです。クリップを切り分けたり、ボリュームを変えたり、バスを組んだり、トラックに色を付けたり、マーカーを打ったり、といったLUNAでのミックス方法を自然と覚えられるでしょう。

 LUNAがリリースされたばかりのころ、Neveのサミングの音が気に入った私は、当時制作していた楽曲のほとんどに通していた記憶があります(といってもコロナ禍で仕事もほとんどなかったため、それほど多く試せたわけではないのですが)。たくさん聴かれている楽曲だと、2020年に「The Real Folk Blues」「You Say Run」のチャリティー・カバーをミックスした際は、別のDAWでミックスしたステムをLUNAに通して仕上げました。

 今でも時間に余裕があるときは積極的に使っています。2022年にリリースしたアルバム『Chronicle I』の「Into a Frenzy」という楽曲は、ミックスからすべてLUNAで行いました。ほかのDAWでミックスしたときに、この良くも悪くも大雑把な感じにならない質感というのは、なかなか出せないんですよね……。

 さて、操作方法を覚えていく上で鍵になるのがキーボード・ショートカット。LUNAではキーボード・ショートカットは固定で、ユーザーが新たに追加できません。

キーボード・ショートカットの一覧。LUNAの本国サイトにて確認できます(Macのショートカットはこちらからアクセス可能)

キーボード・ショートカットの一覧。LUNAの本国サイトにて確認できます(Macのショートカットはこちらからアクセス可能)

 すべての操作をマウスでやると時間もかかり、腱鞘炎のリスクも高まるため、できればショートカットを駆使したいところ。そこで役に立つのが!……というところで文字数が来てしまいました。次回、Stream Deckを活用して楽をしている話を簡単にしつつ、連載も大詰めということで私が普段LUNAとともに(LUNA以外でも)愛用するUADプラグインを延々紹介しまくる回にしたいと思います。正直、推しUADエフェクトはたくさんあるので、その次の最終回もUADエフェクトの話になるかもしれません(笑)。

 

青木征洋

【Profile】作編曲家/ギタリスト/エンジニア。代表作に『ストリートファイターV』『ベヨネッタ3』『戦国BASARA3』などがある。自身が主宰し、アーティストとしても参加するG5 Project、G.O.D.では世界中から若手の超凄腕ギタリストを集め、『G5 2013』はオリコンアルバム・デイリーチャート8位にランクイン。またMARVEL初のオンライン・オーケストラ・コンサートではミキシングを務める。

【Recent work】

『salvia』
Nornis
(Altonic Records)

 

 

 

UNIVERSAL AUDIO LUNA

Universal Audio LUNA

LINE UP
LUNA:無償|LUNA Pro Bundle:57,850円*|LUNA Creator Bundle:86,850円*|LUNA Analog Essentials Bundle:86,850円*|LUNA API Vision Console Emulation Bundle:101,350円*
*いずれもbeatcloud価格

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15/11/12/13以降、INTEL Quad Core i7以上のプロセッサー、Thunderbolt1/2/3、16GB以上のRAM、SSDのシステム・ディスク推奨、サンプル・ベースのLUNA Instruments用SSD(APFSフォーマット済みのもの)、iLokアカウント(iLok Cloudもしくは第2世代)以降のiLok USB Keyでライセンスを管理
Windows:Windows 10およびWindows 11をサポート・テスト中

製品情報

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