FL Studioの神プラグイン5選!Shingo Nakamuraが厳選する必須エフェクト

新定番を含め5つを厳選 お気に入りのFL純正エフェクト|解説:Shingo Nakamura

 みなさん、こんにちは。クラブ・ミュージックの作曲家/DJのShingo Nakamuraです。今月は、Image-Line Software FL Studioに付属するプラグイン・エフェクトの中から、私のお気に入りのものを5つ紹介します。

ワンノブで簡単に音圧を上げる魔法のようなSoundgoodizer

 最初に紹介するのは、使用するだけで音が良くなる魔法のようなエフェクト、Soundgoodizerです。

FL Studio純正マキシマイザーSoundgoodizer。4つのプリセットと1つのノブのみのシンプルな構成で、手軽に音に変化を加えられる。手軽さと効果は折り紙付きで、その人気ぶりはFL Studioユーザーにネットでネタにされるほど

FL Studio純正マキシマイザーSoundgoodizer。4つのプリセットと1つのノブのみのシンプルな構成で、手軽に音に変化を加えられる。手軽さと効果は折り紙付きで、その人気ぶりはFL Studioユーザーにネットでネタにされるほど

 A〜Dの4つのプリセット・モードを選択し、ワンノブで効き具合を調整するだけで、名前の通りサウンドがグッドになります。その手軽さから、何も考えずすべての音に使いたくなります。パソコンの画面がSoundgoodizerで埋め尽くされているmeme(ネット・ミーム)が作られるほど、多くのFL Studioユーザーに愛されています。Soundgoodizerの中身はFL Studio純正のマルチバンド・マキシマイザーMaximusで、低域と高域のブーストと、音圧を上げる効果があります。私のお気に入りのプリセットはAで、ベースやシンセなどの音をもう少し前に出したいときに、味付け程度(ノブを30%くらい)で使用することが多いです。もっとパンチのある音にしたい場合は、80~100%に設定する場合もあります。

 次は、ディストーション&アンプ・シミュレーターのDistructorです。

FL Studioのバージョン20.6で登場した、ディストーション&アンプ・シミュレーター・プラグインのDistructor。フィルター、ディストーション、スピーカー・シミュレーター、コーラスをかけることができる。筆者のお気に入りのポイントは、これ1つでディストーションを4つまで重ねがけできること。プリセットも充実しており、中でも“Phase ninja”はディストーションのパラメーター“PRE AMP”を調整するだけで程良く攻撃的な音になるため、シンセやベースに使うことが多い

FL Studioのバージョン20.6で登場した、ディストーション&アンプ・シミュレーター・プラグインのDistructor。フィルター、ディストーション、スピーカー・シミュレーター、コーラスをかけることができる。筆者のお気に入りのポイントは、これ1つでディストーションを4つまで重ねがけできること。プリセットも充実しており、中でも“Phase ninja”はディストーションのパラメーター“PRE AMP”を調整するだけで程良く攻撃的な音になるため、シンセやベースに使うことが多い

 これ1つで、ディストーション、フィルター、コーラス、スピーカー・シミュレーターがかけられます。中でもディストーションは、Harmor、Blood Overdrive、Fast Dist、Soft Clipperといったモードを備え、さまざまなアプローチができます。さらにDistructorは、同じエフェクトを複数重ねることもできるので、ディストーションを4つかける、という使い方も可能です。

 Distructorには多くのプリセットが用意されており、特にアンプ・シミュレーター的なギター系のプリセットは、音がかなり攻撃的になります。私の場合、シンセやベースにパンチが足りないと思ったとき、とりあえずDistructorのプリセットを幾つか試します。プリセットのパラメーターを少し調整するだけで程良く派手な音になるので、重宝しています。

 音が大きく変化するDistructorのようなエフェクトは、一見すると使いにくいと思われがちですが、さまざまなプリセットを試し、偶然生まれた音を自分の曲に取り入れることも作曲の楽しみだと思います。

Juno-6インスパイアのコーラスやユーザーおなじみの7バンドEQも

 音に変化を加えるエフェクトとして、Vintage Chorusもよく使います。

ROLAND Juno-6の内蔵コーラスにインスパイアされたプラグインのVintage Chorus。温かみのあるアナログ風サウンドが特徴で、筆者はベース、ミッドベース(中域のベース)、アルペジオのパートに使用することが多い

ROLAND Juno-6の内蔵コーラスにインスパイアされたプラグインのVintage Chorus。温かみのあるアナログ風サウンドが特徴で、筆者はベース、ミッドベース(中域のベース)、アルペジオのパートに使用することが多い

 Vintage Chorusは、ROLANDのアナログ・シンセJuno-6に搭載されたコーラスをモデリングしたエフェクトです。温かみのあるアナログ風サウンドが特徴的で、音に厚みや広がりを出したいときに使用しています。“MODE”でコーラスの種類を選択し、Juno-6インスパイアのIとIIのほか、“DELAYS”や“MODULATION”などのパラメーターを自分で調整するEDITモードが使用できます。プリセットにはEDITモードで作成されたものが多く収録されており、中でも“Retro Flipper”は程良い音の厚みや広がりが出るため、重宝しています。

 私が作るプログレッシブ・ハウス/メロディック・ハウスでは、MOOGなどのアナログ・シンセを愛用するトップ・アーティストも多く、彼らの音に近付けるにはアナログ感を出すことが重要です。その方法の一つとして、実機のコンプレッサーやEQ、コーラスなどを再現したエフェクトを使用することが挙げられます。ですから、Vintage Chorusのようなエフェクトが付属していると、アナログ感を出すためのアプローチを気軽に試せるのでとてもありがたいです。

 最後に、私がよく使う定番エフェクトを2つ紹介します。まずは、多くのFL Studioユーザーに愛される、高い視認性が魅力のFruity Parametric EQ 2。7つのバンドを備えたパラメトリック・イコライザーで、周波数特性を表示するスペクトラム・アナライザーと分かりやすいGUIが魅力です。EQは最も使うエフェクトの一つということもあり、CPUへの負荷が軽いことも重宝している理由です。

 もう一つの定番は、FL Studioのバージョン2024.1で登場したSpreaderです。

FL Studioユーザーに長年愛されている7バンド・パラメトリックEQのFruity Parametric EQ 2(上)と、バージョン2024.1で追加されたステレオ・イメージを広げるエフェクトSpreader(下)。両者ともにシンプルで使いやすいGUIが魅力で、今となっては手放せないプラグインである

FL Studioユーザーに長年愛されている7バンド・パラメトリックEQのFruity Parametric EQ 2(上)と、バージョン2024.1で追加されたステレオ・イメージを広げるエフェクトSpreader(下)。両者ともにシンプルで使いやすいGUIが魅力で、今となっては手放せないプラグインである

 オーディオのステレオ・イメージを広げるエフェクトで、ベクトル・スコープが搭載されており、直感的にステレオ・イメージを調整できます。これまでFL Studioには、ステレオ・イメージ系ではFruity Stereo EnhancerとFruity Stereo Shaperがありましたが、ベクトル・スコープが搭載されていないところが少し不便でした。アップデートでかゆいところに手が届くエフェクトが追加されると、“ユーザーのことを分かっているな……”とうれしくなります。

 ちなみに、今回紹介したDistructorとVintage Chorusも、ここ数年で追加された比較的新しいエフェクトです。ライフタイム・アップデートのおかげで、こういった新しいエフェクトやプラグインを追加料金なしで試すことができる点は、私がFL Studioを使い続ける理由の一つです。

 次回は、プログレッシブ・ハウス/メロディック・ハウスに特化したテクニックやTipsを紹介します。それではまたお会いしましょう。

 

Shingo Nakamura

【Profile】東京を拠点に活動するプログレッシブ・ハウス/メロディック・ハウスのプロデューサー/DJ。自身の楽曲で構成したミックス・シリーズ『Best of Shingo Nakamura』は、YouTubeで1,000万回以上の再生数を誇る。2023年にベルギーで開催された『Tomorrowland』に出演。2024年10月にMonstercat Silkから最新アルバム『Solace』をリリースした。

【Recent work】

『Solace』
Shingo Nakamura
(Monstercat)

 

 

 

Image-Line Software FL Studio

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LINE UP
FL Studio Fruity:23,100円|FL Studio Producer:40,700円|FL Studio Signature:49,500円|FL Studio Signature クロスグレード:28,600円|FL Studio Signature 解説本PDFバンドル:51,700円|FL Studio クロスグレード解説本PDFバンドル:30,800円

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CoreプロセッサーもしくはAPPLE Siliconをサポート
Windows:Windows 10/11以降(64ビット)、INTEL CoreもしくはAMDプロセッサー
共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM

製品情報

hookup.co.jp

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