FL Studioでの空間系エフェクト活用法 〜リバーブとディレイのテクニック by Komb

ボヤけさせずに深めにかける空間系エフェクトの裏技|解説:Komb

 はじめまして! ハードダンスのプロデューサー/DJのKomb(コンビー)です。今月から4回にわたり、Image-Line FL Studioの使い方を連載していきます。初回は、僕が楽曲制作の際に多用している空間系エフェクトのかけ方やテクニックを紹介します。

Peak Controllerを活用しリバーブ&ディレイを制御

 まずは、ディレイやリバーブをインサート・エフェクトとしてかける場合についてお話しします。ディレイやリバーブをインサートすると、サウンドがモワっとしてしまうことがよくありますよね。その解決策として、僕はFruity Peak Controllerを活用しています。

FL付属の︎Fruity Peak Controllerは、入力信号の音量によってさまざまなパラメーターを自動で変化させることができるプラグインで、LFOの生成も可能。例えばキックに応じてリバーブのかかり具合に変化を持たせるなど、サイドチェイン的な使い方ができる

FL付属の︎Fruity Peak Controllerは、入力信号の音量によってさまざまなパラメーターを自動で変化させることができるプラグインで、LFOの生成も可能。例えばキックに応じてリバーブのかかり具合に変化を持たせるなど、サイドチェイン的な使い方ができる

 このプラグインを使うことで、入力信号の大きさに応じてほかのプラグインのパラメーターを自動で変化させることができ、サイドチェインのような効果が得られます。

 ここでは、入力信号が大きいときにエフェクトを下げ、小さい信号のときにエフェクトが深くかかる設定を説明します。やり方としては、まずプラグイン・チェインの後段にFruity Peak Controller→ディレイ→リバーブの順に挿入します(ディレイはFruity Delay 3、リバーブはFruity ReeverbまたはARTSACOUSTIC Reverbをよく使っています)。Mixerチャンネル上のディレイやリバーブのMixノブを右クリックし、“Link to controller”を選択。

Peak Controllerを使ってディレイやリバーブに動きをつける際は、トラックのエフェクト・ラックにFruity Peak Controller、ディレイ、リバーブの順でインサート。それからエフェクトのMixノブを右クリック→“Link to Controller”を選択する

Peak Controllerを使ってディレイやリバーブに動きをつける際は、トラックのエフェクト・ラックにFruity Peak Controller、ディレイ、リバーブの順でインサート。それからエフェクトのMixノブを右クリック→“Link to Controller”を選択する

 表示されるRemote control settingsウィンドウで“Internal controller”タブを開き、“Peak ctrl – Peak”を選択します。そのままだと入力信号が大きいときにエフェクトも深くかかるので、“Mapping formula”タブ内の▼をクリックし、“Inverted”を選択。

前画像のあとは、表示される画面(Remote control settingウィンドウ)の“Internal controller”タブを開き“Peak ctrl - Peak”を選択→さらに“Internal controller”タブ下の“Mapping formula”タブで“Inverted”を選択すれば設定完了

前画像のあとは、表示される画面(Remote control settingウィンドウ)の“Internal controller”タブを開き“Peak ctrl - Peak”を選択→さらに“Internal controller”タブ下の“Mapping formula”タブで“Inverted”を選択すれば設定完了

 最後に“Accept”を押せば、トラックの音に合わせてエフェクトのMixノブが自動で下がるようになります。

 Peak Controller内“Peak”のBASE(制御する音量の基本値)とDECAYを調整することで、ノブの挙動を調整できます。僕はBASEを20%に設定することが多いです。楽曲や楽器によってディレイのノブだけをアサインしたり、若干テクニカルですが、Peak Controllerを2つ使用してディレイとリバーブを個別に制御するのもアリです。

KSHMRの手法を応用 MIDIをトリガーにリバーブ処理

 トランス系やビッグルーム系のリード・シンセでは、より広がりのある空間を作るため、センド&リターンでリバーブをかけることも多いです。ただし、先述のFruity Peak Controllerを使うと、仕組み上ドライ寄りのサウンドになりやすいため、別の方法を採用しています。

 まず、Channel rackにMIDI Outチャンネルを追加し、センド・リバーブをかけたいシンセと同じMIDIデータをMIDI Outのピアノロールにコピぺします。

 続いてセンド・リバーブの後段に、LFOの波形をさまざまなパラメーターにルーティングできる外部プラグインXFER RECORDS LFOToolを挿入します。

センド・リバーブのエフェクト・ラックに挿入したXFER RECORDS LFOToolは、自由にLFOのシェイプを設定できる外部プラグイン。ここでは、シンセ・フレーズのMIDIデータをトリガーにしてセンド・リバーブのかかり具合を自動化するために使用した。これによりシンセのアタックをぼやけさせることなく深めのリバーブをかけることが可能になった

センド・リバーブのエフェクト・ラックに挿入したXFER RECORDS LFOToolは、自由にLFOのシェイプを設定できる外部プラグイン。ここでは、シンセ・フレーズのMIDIデータをトリガーにしてセンド・リバーブのかかり具合を自動化するために使用した。これによりシンセのアタックをぼやけさせることなく深めのリバーブをかけることが可能になった

 LFOTool左上の歯車マークをクリックし、表示されるコンセントと歯車が一緒になっているアイコンもクリック。するとMIDIをトリガーにして動かすための項目が現れるので、“Input port”をMIDI Out右上の“Port”の番号と一致させましょう。これにより、シンセのMIDIをトリガーとしてリバーブをダッキングさせることができます。この手法を使えば、シンセのアタックをボヤけさせることなく、深めのリバーブが得られます。

 実はこの方法、プロデューサーのKSHMRがYouTubeで公開したチュートリアルの手法を応用したものです。KSHMRはセンド・リバーブにボリューム・オートメーションを書いていましたが、それをMIDIと連動させて自動化した形です。加えて、FL付属でスタッターなどを作れるGross Beatやニッキー・ロメロ監修のプラグインCABLEGUYS Kickstart2を用いて、センド・リバーブに対してキックをトリガーにしたダッキングを行うと、ミックスがかなりスッキリします。ぜひ試してみてください。

 おまけとして、Link to controller機能を使って1つのオートメーション・クリップで複数のノブを動かす方法をご紹介します。

 まず、大元になるオートメーション・クリップを作成。このオートメーションに合わせてノブを動かします。次に、オートメーションと同じ動きをさせたいパラメーターのノブを右クリック→“Init song with this position”を選択した後に再度ノブを右クリック→“Link to controller”をクリック。

赤枠はシンセの“Channel pitch”のオートメーション・クリップ。このカーブでほかのパラメーターも同時に制御したいときは、制御したいパラメーターのノブを右クリック→“Init song with this position”→“Link to controller”の後に再びパラメーターのノブをクリック。それから表示される画面(Remote control settingウィンドウ)の“Internal controller”タブを開き、“Channel pitch”を選択すればOK。同じオートメーション・クリップに複数のパラメーターを同期させることができる

赤枠はシンセの“Channel pitch”のオートメーション・クリップ。このカーブでほかのパラメーターも同時に制御したいときは、制御したいパラメーターのノブを右クリック→“Init song with this position”→“Link to controller”の後に再びパラメーターのノブをクリック。それから表示される画面(Remote control settingウィンドウ)の“Internal controller”タブを開き、“Channel pitch”を選択すればOK。同じオートメーション・クリップに複数のパラメーターを同期させることができる

 表示されるウィンドウ内で“Internal controller”タブを開き、先ほど作成したオートメーション・クリップを選択して“Accept”を押すと、設定したノブがオートメーション・クリップと同期しはじめます。

 僕の楽曲のリードはピッチ・ベンドを多用したものが多いので、複数のリード・レイヤーをピッチ・ベンドで動かしたいときにこの手法をよく活用しています。ボリューム・オートメーションを同期させたいときにも使えますね。

 今回は主に、僕が楽曲制作でよく使うディレイやリバーブのかけ方を紹介しました。インサートとセンド、どちらも楽曲のジャンルや楽器に合わせて使い分けましょう。次回は、僕のトラックで評価されることの多いキックやベースに関するTipsを中心に紹介します。また来月お会いしましょう!

 

Komb

【Profile】東京を拠点に活動するハードダンスのプロデューサー/DJ。Spinnin’ Records傘下のレーベルやBarong Familyなど海外の人気レーベルからリリースを重ねる。2023年、Tatsunoshinと共に、“ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)”でおなじみの「Caramelldansen」の公式リミックスを行い話題に。2024年には『Ultra Korea』へ出演を果たした。

【Recent work】

『Warning』
Sikdope & Komb
(SINPHONY)
3月28日リリース

 

 

 

Image-Line Software FL Studio

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LINE UP
FL Studio Fruity:23,100円|FL Studio Producer:40,700円|FL Studio Signature:49,500円|FL Studio Signature クロスグレード:28,600円|FL Studio Signature 解説本PDFバンドル:51,700円|FL Studio クロスグレード解説本PDFバンドル:30,800円

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CoreプロセッサーもしくはAPPLE Siliconをサポート
Windows:Windows 10/11以降(64ビット)、INTEL CoreもしくはAMDプロセッサー
共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM

製品情報

hookup.co.jp

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