FL Cloud SOUNDSのサンプル活用テクニック|解説:DJ PMX

FL Cloud SOUNDSのサンプル活用テクニック|解説:DJ PMX

 こんにちは。音楽プロデューサー/DJのDJ PMXです。自分は普段からImage-Line Software FL StudioをAPPLE MacBook Proにインストールし、制作に用いています。私が担当するのは、ついに今月で最終回。最後にご紹介するのは、バージョン21.2で導入されたFL Studioユーザー向けのクラウド・サービス“FL Cloud”の“SOUNDS”(サンプル・ライブラリー)を使用したサンプル活用テクニックです。

SOUNDSのサンプルはすべてロイヤリティフリー ランキングで流行をチェックすることも可能

 FL Studioユーザーに向けたクラウド・サービス、FL Cloudについて、本題に入る前に軽く説明したいと思います。FL Cloudには、①SOUNDS(ロイヤリティフリーのサンプル・ライブラリー)、②AIマスタリング、③楽曲デジタル配信(DISTROKIDの使用権利)の3つのサービスが用意されています。これらのサービスをフルで利用するにはサブスクリプション登録が必要ですが、①②ではFL Studioユーザーであれば無償で利用できる機能もあります。1カ月間のトライアル版や、SOUNDSの場合ダウンロードに必要なクレジットを購入できるCredit Packも用意されているので、加入するか迷われている方がいればぜひこちらを試してみてください。

 それでは早速今回のテーマ、SOUNDSの仕様をチェックしていきます。まずはプロジェクト画面のBrowserセクションからSOUNDSにアクセス。

FL Studioパワー・ユーザー(Image-Line Softwareが認めたFL Studioユーザー)によって日々更新されるサンプル・ライブラリーのSOUNDSは、プロジェクト画面のBrowserセクションから利用可能。Discover画面では、検索ウィンドウのほか、お気に入り登録したサンプルを一覧できるボタン(赤枠)、ダウンロード済みのサンプルを一覧できるボタン(黄枠)などが備わっている

FL Studioパワー・ユーザー(Image-Line Softwareが認めたFL Studioユーザー)によって日々更新されるサンプル・ライブラリーのSOUNDSは、プロジェクト画面のBrowserセクションから利用可能。Discover画面では、検索ウィンドウのほか、お気に入り登録したサンプルを一覧できるボタン(赤枠)、ダウンロード済みのサンプルを一覧できるボタン(黄枠)などが備わっている

 ここで“ん?”と疑問に思った方もいるかもしれませんが、SOUNDSを使用する際にWebブラウザーを立ち上げる必要はありません。SOUNDSは、最近流行のサブスク型サンプル音源ダウンロード・サービスのようなシステムが、FL Studioの内部に直接組み込まれている、ユーザビリティがとても高い仕様なのです。

 さて、Browserセクション最上段の右から2番目に位置するSOUNDSタブをクリックすると、Discover画面がオープン。ここでは各サンプル・パックを試聴したり、好みのサンプルを検索したりすることが可能です。Discover画面の上部には、新しくリリースされたものや、スタッフお薦めのサンプル・パックが表示されています。どのサンプル・パックも非常にデザイン性の高いアートワークなので、それらを眺めながら適当にサンプルを試聴しているだけで制作のインスピレーションが得られると思いますし、ちょっとした制作の息抜きにもなるのではないでしょうか。

 また、Discover画面の下部には、サンプル・パックの人気ランキングが用意されています。

Discover画面下部のサンプル・パック・ランキング。画面は、総合ランキング(All Packs)を表示している様子。このほかにも、“Bass music”、“EDM / Pop”、“Electronic”、“Hip hop / R&B”など、各ジャンルのランキングをチェックすることも可能だ

Discover画面下部のサンプル・パック・ランキング。画面は、総合ランキング(All Packs)を表示している様子。このほかにも、“Bass music”、“EDM / Pop”、“Electronic”、“Hip hop / R&B”など、各ジャンルのランキングをチェックすることも可能だ

 ジャンルごとのランキングも用意されているので、自分が作ろうとしているジャンルで今どのようなサンプルがはやっているのかチェックしたり、逆にランキング下位のサンプル・パックを選ぶことで他人とのサンプルかぶりを防ぐなんてこともできるでしょう。テレビ番組のヒット・チャートのように、ランクの上昇/下降のマークも表示されているので、次にはやりそうなサンプルを予想して先取りすることも可能です。

サンプルの“調理”方法が用意されたメニュー ハイカットでテープを通したような質感に

 ここからが本題のサンプル活用テクニックです。使用するサンプルが決まったら、サンプルを右クリックし表示される“Open/Edit in…”にカーソルを合わせましょう。すると、どのようにそのサンプルを扱うのか、さまざまな選択肢が用意されたメニューが表示されます。

♡ボタンを押してお気に入り登録したサンプルを一覧している様子。使用したいサンプル素材の上で右クリックするとメニュー(赤枠)が表示され、さらに“Open/Edit in…”にカーソルを合わせると、さまざまなサンプルの用途に対応したメニュー(黄枠)が表示される。

♡ボタンを押してお気に入り登録したサンプルを一覧している様子。使用したいサンプル素材の上で右クリックするとメニュー(赤枠)が表示され、さらに“Open/Edit in…”にカーソルを合わせると、さまざまなサンプルの用途に対応したメニュー(黄枠)が表示される。

 例えばギター・フレーズのサンプルをMIDIに変換して打ち込みで疑似的に弾き直したい場合、“Open in new Fruity Slicer channel”を選択すれば、シームレスにFruity Slicerで開くことが可能。使用したいサンプルは決まったものの、どのように“調理”するのか悩んでいるような場合は、このメニューを参考に想像を膨らませていくのも良いでしょう。

 続いては、サンプル素材の質感を調整する際のTipsをご紹介します。レコードからサンプリングしたり、テープを通したときのような質感に近づけたい場合は、FL Studio付属EQのFruity Parametric EQ 2でハイカットすることで、独特の“ハイ落ち感”を演出できます。

ハイファイなサンプル素材に、レコードからサンプリングしたときのようなローファイ感を出したい際などに有用なハイカット。画面は、FL Studio付属のEQプラグイン、Fruity Parametric EQでハイカットの周波数を調整して、ちょうどよい“もこらせ”具合を探っている様子

ハイファイなサンプル素材に、レコードからサンプリングしたときのようなローファイ感を出したい際などに有用なハイカット。画面は、FL Studio付属のEQプラグイン、Fruity Parametric EQでハイカットの周波数を調整して、ちょうどよい“もこらせ”具合を探っている様子

 もちろん付属のフィルター・エフェクトFruity Filterなどでも同じ事が可能なので、お好きなエフェクトで試していただければと思います。また、ローファイ感やレコードの回転数を落としてサンプリングした際の質感を演出したい場合は、Signatureエディションに付属するマルチエフェクトのGross Beatを使用するのがお勧めです。プリセットの“1/2 Speed”を選択すれば、文字通りテンポを半分に落として再生してくれます。ピッチも1オクターブ下がるため、サンプルの表情をガラッと変えることができるでしょう。

初心者も安心のジャンル別サンプル選択 日本語表示にも対応し深化を続けるFL Studio

 制作初心者で、どうやって曲を作っていけばいいか分からない……といった方にもSOUNDSはお薦めです。“Genre”から制作したいジャンルを選択すると、そのジャンルに適したサンプル・パックが表示されます。

SOUNDSのサンプル・パック・ライブラリーを“Hip hop / R&B”のGenre(ジャンル)で絞った様子。“AI Drake Beats”といったなじみ深いアートワークも用意されているので、初心者でも簡単に好みのサンプル・パックを探すことが可能だ

SOUNDSのサンプル・パック・ライブラリーを“Hip hop / R&B”のGenre(ジャンル)で絞った様子。“AI Drake Beats”といったなじみ深いアートワークも用意されているので、初心者でも簡単に好みのサンプル・パックを探すことが可能だ

 各サンプル・パックのアートワーク上にある再生ボタンをクリックすると、そのサンプル・パックを使用したデモ・ソングが試聴できるので、自分が制作したい雰囲気に近いものを簡単に探すことができます。好みのサンプル・パックが見つかったら、それぞれの素材を単体でチェック。こうすることで、自分が制作したい楽曲がどのような要素で構築されているのか、学ぶことができます。自分の場合は、イメージする雰囲気に近いループ素材を探して、そこからインスピレーションを得たり、それに似たフレーズをシンセで弾き直したりして、制作に応用しています。

 FL Studioは先日、日本語表示にも対応し、さらに間口の広いDAWへと深化を遂げました。

FL Studioは、バージョン21.2.3.4004から日本語の操作表示が可能となった。“Preferences…”から“General”タブを選択し“Language”を“Japanese(ja)”にするとUIが日本語に変更できる

FL Studioは、バージョン21.2.3.4004から日本語の操作表示が可能となった。“Preferences…”から“General”タブを選択し“Language”を“Japanese(ja)”にするとUIが日本語に変更できる

 トレンドのヒップホップから、90'sのブーンバップまで、あらゆるジャンルをFL Studioだけで作ることができるので、制作のたびにこのDAWを選んで良かったな……と実感します。また、今回ご紹介したSOUNDSに加え、AIマスタリング、楽曲デジタル配信サービスを提供するFL Cloudは制作において本当に便利な機能ばかりなので、ぜひ皆さまにも使っていただきたいです。本連載を通じてFL Studioの良さを再認識できましたし、これをきっかけに知った機能もあり非常に勉強になりました。全4回、お読みいただきありがとうございました!

 

DJ PMX

【Profile】日本にウエストコースト・ヒップホップを広めた第一人者であり、ジャパニーズ・ヒップホップのプロデューサー/DJ/洗足学園音楽大学客員教授。日本のヒップホップが産声を上げた1980年後半から数多くのアーティストをプロデュース。アメリカ西海岸のヒップホップの影響を受け、ジャパニーズ・ウエストコースト・ヒップホップのスタイルを構築。現在、5作目のアルバム『THE ORIGINAL V』を制作中。

【Recent work】

「THE ORIGINAL IV』
DJ PMX
(ユニバーサル)

 

 

 

Image-Line Software FL Studio

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LINE UP
FL Studio 21 Fruity:22,000円|FL Studio 21 Producer:37,400円 |FL Studio 21 Signature:44,000円|FL Studio 21 Signature クロスグレード:26,400円|FL Studio 21 Signature 解説本PDFバンドル:46,200円|FL Studio 21 クロスグレード解説本PDFバンドル:28,600円

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13.6以降、INTEL CoreプロセッサーもしくはAPPLE Silicon M1をサポート
▪Windows:Windows 10/11以降(64ビット)、INTEL CoreもしくはAMDプロセッサー
▪共通:4GB以上の空きディスク容量、4GB以上のRAM

製品情報

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