Cubaseで快適なワークフローを構築する方法! 〜色や基本機能を活用|解説:裏谷玲央

色や基本機能を活用し快適なワークフローを構築|解説:裏谷玲央

 はじめまして。作曲家の裏谷玲央です。ゲーム音楽を中心に“物語に最高の音楽を”というポリシーで日々音楽を制作しています。今月から全4回にわたって、自分がsteinberg Cubaseでの曲作りで大事だと思うことを記事にしていきます。

曲作りの前にセットアップが大切

 今の時代、Tips系の内容はネットで調べれば大体のことが出てきます。今回僕が扱うのは、地味ですごく初歩的なことですが、初心者ほど知っておいて損はない大事なことを中心に書いていきます。料理でも、スポーツでも何でも基礎が一番大事という言葉を聞いたことはありませんか? そんな、少し回りくどくても本当に意味がある内容だけを書こうと思います。ぜひ自分にあった手法を見つける参考にしていただけるとうれしいです。

 真っ先に行うのが色のカスタマイズです。僕の場合、プロジェクト・ウィンドウの色は白系に設定します。理由は見やすいからです。デフォルトの黒系ベースで目の疲れを軽減する、カッコいい気がするというのは理解できますが、もし目が疲れるならディスプレイの輝度が高すぎるのかも、とまずは疑ってみていいと思います。もちろん黒系ベースのほうが慣れていて作曲時のテンションが上がるという方はそのままでも大丈夫です。僕の場合は白系のほうが見やすくて、作曲時の気分も明るくなるので設定を変更します。

プロジェクト・ウィンドウを白系に設定したほうが筆者にとって見やすく、操作時のテンションを上げるのにもつながる

プロジェクト・ウィンドウを白系に設定したほうが筆者にとって見やすく、操作時のテンションを上げるのにもつながる

プロジェクト・ウィンドウの設定方法。“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“全体カラー”から変更できる

プロジェクト・ウィンドウの設定方法。“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“全体カラー”から変更できる

 もっと見やすくするため、トラック色をランダムに変更するのもお勧めです。

“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“トラックおよびMixConsoleチャンネルのカラー”より“トラック表示色をランダムに使用”(赤枠)を選択し適用することで、新規トラックを追加するときにランダムで色が付く

“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“トラックおよびMixConsoleチャンネルのカラー”より“トラック表示色をランダムに使用”(赤枠)を選択し適用することで、新規トラックを追加するときにランダムで色が付く

 そして次は、MIDIエディターの画面を必ず別ウィンドウで開くようにしていること。デフォルト設定では下部ゾーンに表示されますが、別ウィンドウで開くほうが全画面でピアノロール・エディターを見られて、打ち込みがしやすいと思います。特にオーケストラなどトラック数の多くなりがちな曲を制作する場合には必須の設定です。

“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“エディター”より“ダブルクリック時にエディターをウィンドウで開く”(赤枠)を適用するとMIDIエディター画面が別ウィンドウで開くようになる

“環境設定”の“ユーザーインターフェース”→“エディター”より“ダブルクリック時にエディターをウィンドウで開く”(赤枠)を適用するとMIDIエディター画面が別ウィンドウで開くようになる

 昨今は大画面のディスプレイが比較的安価で買える時代になりましたが、4Kディスプレイで拡大表示するなら、僕は27インチWQHDのディスプレイで縦幅を広く確保することをお勧めします。

 ただ、一つだけ例外があります。それは4Kの大画面(40インチ〜)で作業されている方の場合です。その場合は4Kでも表示領域が広いので、1画面でも問題なく縦幅が確保できると思います。Cubaseにおいては画面の横幅よりも縦幅にスペースがあるほうが、作曲時のストレス軽減につながります。

 MIDIトラックの色分けも重要です。デフォルトのMIDIトラックの色分けは、ベロシティが強くなるにつれて赤色が濃くなる設定になっています。ピアノ・ソロを打ち込む際など単一の楽器で曲が完結する場合は、この設定で問題ありませんが、いろんな音色を重ねて曲を作っていくなら、デフォルト設定はベストとは言えません。ハーモニーの確認をするために、ピアノロール上のノートを重ねて表示した際に、どの楽器がどんなフレーズを演奏しているのかが分からないからです。色分けされているほうが各楽器がどんなフレーズを演奏しているのか見やすくなるのでお勧めです。

弦カルテットのMIDIパートの色分け例。ベロシティが強くなるに従って赤色が濃くなるデフォルト設定(左画面)より、パートごとに色分け(下画面)したほうが、複数の楽器のMIDIを一括表示する際に、それぞれの演奏内容を把握しやすい

弦カルテットのMIDIパートの色分け例。ベロシティが強くなるに従って赤色が濃くなるデフォルト設定(左画面)より、パートごとに色分け(下画面)したほうが、複数の楽器のMIDIを一括表示する際に、それぞれの演奏内容を把握しやすい

 また、MIDIトラックの色分けをベロシティでしない理由はもう一つあります。それは昨今は“ベロシティ=強さ”ではない音源がたくさん存在しているからです。それよりも色でパートを判別できて、各楽器がどんなフレーズを演奏しているのか俯瞰(ふかん)できるメリットのほうがはるかに大きく、指揮者になった気持ちでフレーズの流れを見ることができます。特に生楽器の場合は無理な音域で無理なフレーズを演奏していないか、ほかの楽器とのバランスはどうか、すべて色で分かれていることで可視化することができます。

プロジェクト・バックアップを活用し新たな曲を作る

 ここからは既に何曲か作ったことのある方向けの内容です。ゲーム音楽や劇伴では一つの作品で多くの曲を作ります。その際、ジャンルごとにお気に入りの音色を読み込んだテンプレートを作って、そこから作曲を始める方も多いと思います。でも、僕はあまりテンプレートを使いません。以前に作ったプロジェクトをバックアップ機能で複製し、それを元に作曲しています。まっさらな状態から曲を作りはじめるより、以前作った曲の形跡や、何か音楽が鳴る状態のほうが作曲時のインスピレーションが湧きやすいし、新たな表現につながると感じるからです。曲の音量感や質感を再確認する意味でも役に立ちます。

 やり方は簡単です。以前に作ったプロジェクトのうち、これから制作するジャンルや雰囲気に近いと思うものを起動し、そこから“ファイル”→“プロジェクトのバックアップ”でプロジェクトを複製します。注意点として、空のフォルダを選択しないとエラー・メッセージが表示されるため、“新規フォルダ”を作成することが必要です。

 今回、意外とCubaseを使っていても、意識していない機能の説明があったかもしれません。第2回も引き続き、よろしくお願いします!

 

裏谷玲央
【Profile】作曲家/編曲家。カプコンにて『モンスター・ハンター』シリーズの楽曲を数多く手掛け、2019年に独立しREI MUSICを創業。作品のコンセプト設計やサウンドの“世界観構築プロデュース”を得意としている。https://rei-music.com/ 

【Recent work】

『メグとばけもの(オリジナル・サウンドトラック)』
Reo Uratani
(REI MUSIC)

 

 

 

steinberg Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 14:13,200円前後|Cubase Artist 14:39,600円前後|Cubase Pro 14:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
Mac:macOS 13以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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