こんばんは。今、制作が大変だった曲のミックスが終わり、気持ちが落ち着いた夜です。こういうときは、趣味のダーツも集中して練習することができます。ダーツって、音楽を聴きながらできるんですよね。音楽を聴く時間がなかなか取れないので、最高です。というわけで、最終回の今月は、Cubase 14でアップデートされたスコアエディターについてです。
打ち込んだトラックから即座に楽譜を制作
これまで、僕はスコアエディターをメロディ楽譜(演者さんに渡すための歌詞付きの楽譜)の制作のみに使っていて、ストリングスなどの譜面制作には使いませんでした。楽譜として見やすいわけではなかったからです。しかしCubase 14から楽譜がとても見やすくなり、“弦もスコアエディターでいけるのでは?”と思っています。深堀りしていきましょう。
まず、思い付いたまま8小節のストリングスを打ち込みました。
オレンジがViolin1、黄色がViolin2、黄緑がViola、ピンクがViloncelloです。これらのイベントを選択し、メニューの“スコア”→“スコアエディターを開く”、もしくはCtrl+Rで楽譜を開きます。すると、自動判定により短いフレーズにスタッカートが付いた状態で楽譜が表示されます。
ここから、意図と違う音符を直します。3小節目の8分音符にスタッカートが欲しいので付けましょう。一番上のViolin1の最初の音符を選択して、Shiftキーを押しながら一番下のViloncelloの音符をクリックすると、すべてのパートの最初の音符が選択され、オレンジ色になります。この状態で記号選択メニューから“スタッカート”を選択すれば、スタッカートの記号が記載されます。続いて、4小節目と6小節目の動いているフレーズにスラーを付けます。Shiftキー押しながら該当のフレーズを選択し、上のメニューの“スラー”をクリックすると、2つのフレーズに記号が記入されました。とても簡単に、奇麗に入力されます。6小節目も同じ要領です。
今度は、指定した音の長さを変えてみます。7小節目の1拍目にある付点8分音符を8分音符に変更し、16分休符が挟まるようにしたいと思います。先ほどと同じく修正したい音符を全選択するのですが、その前に、より作業しやすくするために、上メニューの“ズーム”で拡大。ショートカットはテン・キーじゃないほうの数字の“6”です。ズーム・アウトはAltキーを押しながらズームを選択し、楽譜をクリックします。ズームしたら、あらためて7小節目/1拍目の音符を選択し、上メニューの“単付点”をクリックして、付点を解除します。
強弱記号や速度記号の記載も、音符を選び記号をクリックするだけ
強弱記号も入れてみましょう。ここでは全選択して一気に処理することができないので、1つずつ付けていきます。左ゾーンで“記号”タブを開き“強弱記号”を選択すると、記号がたくさん出てきます。
今回は、出だしをメゾフォルテで入るようにしていきます。左ゾーンで“mf”を選択し音符をクリックすれば、その音符の下に“mf”と記載されます。さらに、4小節目にクレッシェンド/デクレッシェンドを入れます。ちょうど2つがセットになっている記号があるので、それを選択。譜面に記載されたのですが、若干表現したい場所が違ったので、位置を変えます。記号の左右に現れる〇をクリックしてどちらかにマウスで引っ張ると、記号を移動させることができます。
同じ要領で、速度記号も加えます。最後はリットしていって、フェルマータ。リットは“ritardando”と表記されました。本当は“rit.”と記載したいのですが、変更できないようです。ここまで来たら、プリカウント用に空けていた2小節を削除。MIDIイベント上で該当の部分を削除すれば、楽譜にも反映されます。
最後は楽譜をページビュー(印刷時のレイアウトがそのまま表示される)で開き、レイアウトの設定をします。“スコアメニュー”から“ページビュー”を選択。左上のアイコンを押すことでページビューかフィルビュー(レイアウトに含まれるすべての譜表が単一の連続した組段に表示される)の選択もできます。表示が変わったら“レイアウト設定”→“ページ設定”で詳細を決めます。今回はA4サイズ、縦表示にしました。“線間の幅”はマウス・ホイールでクルクルさせて調整できるのでで、好みのところまで変更しましょう。
ここまで紹介した作業は、時間がかかるように思われるかもしれませんが、打ち込みさえできていれば、5分もかからずにできそうです。デモ・アレンジが終わった曲の譜面を、簡単にすぐに作れる。しかも再生すれば、そのままの音で鳴る。素晴らしすぎますね。楽譜が見やすくなったことで、作業するモチベーションもかなり上がりました。細かな設定は難しい部分もあるのですが、steinbergには譜面作成専用ソフトのDoricoもありますからね。とにかく、“簡易&見やすい”がスコアエディターの魅力です。ぜひ使ってみてください!
ということで、最後になりました。いかがでしたでしょうか。Cubase、新機能が付いて少し別人になりましたね。僕的には前もラブだけど、最新版はさらにラブ。全4回、ありがとうございました! Cubase最高! アディオス!
白戸佑輔
【Profile】作曲/編曲/作詞家。東京音楽大学作曲科で室内楽、オーケストラなどの作曲をしつつ、大学3年時にベースを始め、卒業後はベーシストとして活動。2007年に作家活動をスタートさせ、さまざまなアーティストへの楽曲提供やサポート演奏を手掛ける。さらにアニメ・ソングやテレビ主題歌、挿入歌に加え、パチンコ、映画、ゲームのBGMなど幅広く活躍している。
【Recent work】
『nina』
坂本真綾
(FlyingDog)
steinberg Cubase
LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 14:13,200円前後|Cubase Artist 14:39,600円前後|Cubase Pro 14:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
Mac:macOS 13以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)