パターンエディターと併用するCubase ProのDrum Machine活用法|解説:白戸佑輔

パターンエディターと併用するDrum Machineの活用法|解説:白戸佑輔

 これを書いているのは、1月4日のお昼。年明けの締め切りが終わり、本日から僕の正月が始まります。本日だけかもしれません。火を止めるのを忘れてお雑煮を焦がしてしまいました。皆さまも火の元にご注意くださいませ。というわけで、今回はパターンエディターと相性の良い、新搭載のリズム専用音源Drum Machineについてです。

1つのパッドに最大4つの音色をレイヤーできる

 まずは“トラックを追加”の後、“イベントタイプ”でパターンイベントを選択しDrum Machineを起動させます。もしくは下ゾーンのDrum Machineタブから“ドラムトラックを追加”でも起動させることが可能。下ゾーンにドラムパッドと共にDrum Machineが現れるので、画面左上の“トラックプリセット名”からプリセットを選択。ここでは“Social Jetlaq”を選びました。クラップが好みだからです。サンプルがアサインされると、パッドがカラフルになります。この時点で、MIDI鍵盤を弾いてもパッドをクリックしても音が鳴ります。

Cubase Pro 14およびCubase Artist 14に搭載されたDrum Machineは、ドラム・トラック専用の新たな音源。左に見える16のパッドにサンプルをアサインする。使用できるパッドの数は合計128。1つのパッドにつき最大4つまでサンプルを重ねることができるので、独自の音作りが可能だ。画面は、左下のC1のパッドにアサインされたサンプル“Kick2”を編集しているところ。画面下のOSCILLATOR、CLICK、PITCH、AMP ENVなどの多彩なパラメーターで詳細な音作りができる

Cubase Pro 14およびCubase Artist 14に搭載されたDrum Machineは、ドラム・トラック専用の新たな音源。左に見える16のパッドにサンプルをアサインする。使用できるパッドの数は合計128。1つのパッドにつき最大4つまでサンプルを重ねることができるので、独自の音作りが可能だ。画面は、左下のC1のパッドにアサインされたサンプル“Kick2”を編集しているところ。画面下のOSCILLATOR、CLICK、PITCH、AMP ENVなどの多彩なパラメーターで詳細な音作りができる

 ここからDrum Machineの見どころに触れていきます。個人的なキモは、1つのパッドに最大4つの音色をレイヤーできるところです。プリセット“Social Jetlaq”のC1はキックの音色が1種類だけアサインされた状態。他方、D#1には、4つのクラップがレイヤーされています。

1つのパッドに4つのサンプルをアサインしてクラップの音を作っている(赤枠)。サンプルごとに各種パラメーターや音量の調整ができるほか、サンプル名の左の電源ボタンでオン/オフも可能だ

1つのパッドに4つのサンプルをアサインしてクラップの音を作っている(赤枠)。サンプルごとに各種パラメーターや音量の調整ができるほか、サンプル名の左の電源ボタンでオン/オフも可能だ

 アタックのタイミングとピッチに差のある素材がレイヤーされ、“人数感”のある音作りになっています。これが“クラップの音が良いなあ”と思った理由ですね。

 今度は自分でレイヤーを組んでみましょう。先述のC1にはKick2というサンプルが割り当てられていました。その下の空いている段をクリックすると、右下に各ドラム・パーツのアイコンが表示されます。これはDrum Machineに内蔵される音源の種類を示しています。Kick2は余韻が短めなので、サステインが長めのKick1を重ねます。これで同時に鳴るようになります。しかし低域に干渉する部分があったので、Kick1のレイヤー・レベルや下のOSCILLATOR、CLICK、PITCHなどのパラメーターをなじむところまで調整していきます。ちなみに、サンプル名の左の電源ボタンでオン/オフ可能。またプリセットによって調整できるパラメーターが変わります。

 Cubaseの機能を全体的に活用するなら、“メディア”に格納されたサンプルも使ってみましょう。メディアベイで“ループ&サンプル”を選択します。ここではCubase付属ライブラリー“AM SignatureDrums”をクリックし、検索窓に“kick”と入力。その中から“8BT_2_kick1”を選びました。これを、Kick1のサンプル名のところにドラッグ&ドロップ。するとKick1が“8BT_2_kick1”に入れ替わります。

パッドごとに音作りできるPad FX

 さらに、“Pad FX”が結構独自な機能なので使ってみます。

Pad FXでは、パッドごとにBit Crusher、Distortion、Filter、Equalizerが使用でき、各レイヤーでセンドの量を調整できる。また後段には、LimiterやSoftclipも実装されている(赤枠)

Pad FXでは、パッドごとにBit Crusher、Distortion、Filter、Equalizerが使用でき、各レイヤーでセンドの量を調整できる。また後段には、LimiterやSoftclipも実装されている(赤枠)

 Bit Crusher、Distortion、Filter、EqualizerがセンドFXのようにかけられて、レイヤーごとに量を調整します。アタック要員で選んだ音色は原音のままで、余韻が長めな音色は汚す、というイメージで簡単にいじることができ、効果も抜群です。

 このような感じで、スネアやハイハットもカスタマイズしていきます。注意点としては、Drum Machineにサンプルを読み込むためにはドラッグ&ドロップしなければならないことです。感覚としてはダブル・クリックで読み込めそうな気になってしまいますが、ダブル・クリックすると新規のオーディオ・トラックが生成されます。

ステップオートメーションを駆使して、より独自性の高いビートを制作

 プリセット選択~音色の差し替え&加工を経て、オリジナリティあるドラム・キットができました。打ち込んでいくにあたっては、パターンエディターを使います。まず次の画像のように打ち込みました。

Drum Machineで作ったオリジナルのドラム・キットを、こちらも新機能のパターンエディターで打ち込んでいるところ。ステップ・シーケンサーのように直感的に打ち込んでいけるのが便利

Drum Machineで作ったオリジナルのドラム・キットを、こちらも新機能のパターンエディターで打ち込んでいるところ。ステップ・シーケンサーのように直感的に打ち込んでいけるのが便利

 このまま再生すると普通なので、オートメーションを使います。パターンエディターのパラメーターレーンには、オートメーションの値をステップで打ち込むことができます。これがとてつもなく効果的なのです。

 まず、パーカッションのピッチにオートメーションを割り当てます。“パターンエディター”→“ステップオートメーションに割り当て”→“Perc3 Tune”の順でクリック。すると、パラメーターレーンに“Tune”と表示されます。その下の棒グラフを調整すると、オートメーションが設定できるというわけです。

 同じようにハイハットもオートメーションで徐々にリバーブの量が減る設定にしたいと思います。

“ステップオートメーション”を設定すると、パラメーターレーンにパラメーター名が現れる。下の棒グラフの長さを調整して各パラメーターを制御可能(赤枠)

“ステップオートメーション”を設定すると、パラメーターレーンにパラメーター名が現れる。下の棒グラフの長さを調整して各パラメーターを制御可能(赤枠)

 ハイハットのパッドを選択して、リバーブを右クリック。するとパラメーターレーンに“Reverb Send”と表示され、あとは同じです。ついでに、スウィングを変化させて、ゲートも短くしました。とても面白い感じになっています。

 ほかにも、偶然性を出すためのユークリッドや逆再生など面白い機能があるのですが、“Drum Machineからオートメーションを割り当ててステップでコントールする”のタッグが、Cubase14で最強だと思っています。ほかのどのソフトよりもCubaseにマッチしていて、分かりやすく扱える単体のドラム音源として捉えていいでしょう。今回はこの辺でおさらばします。パターンエディター最高!!!!

 

白戸佑輔
【Profile】作曲/編曲/作詞家。東京音楽大学作曲科で室内楽、オーケストラなどの作曲をしつつ、大学3年時にベースを始め、卒業後はベーシストとして活動。2007年に作家活動をスタートさせ、さまざまなアーティストへの楽曲提供やサポート演奏を手掛ける。さらにアニメ・ソングやテレビ主題歌、挿入歌に加え、パチンコ、映画、ゲームのBGMなど幅広く活躍している。

【Recent work】

『nina』
坂本真綾
(FlyingDog)

 

 

 

steinberg Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 14:13,200円前後|Cubase Artist 14:39,600円前後|Cubase Pro 14:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
Mac:macOS 13以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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