Cubase Pro 14に新搭載の単品モジュレーター〜基本の用法から“2段がけ”まで|解説:白戸佑輔

新搭載の単品モジュレーター 基本の用法から“2段がけ”まで|解説:白戸佑輔

 こんにちは、作曲家の白戸です。本稿執筆時はブラック・フライデーが終わり、SNSでの“プラグインあれこれ”のソワソワも落ち着きました。毎年恒例の景色として楽しんでおりますが、僕はセール時はあまり買わないようにしています。買ったことを忘れるからです(笑)。今回は、steinberg Cubase Pro 14の新機能、モジュレーターについて。多機能で複雑なものに対して、“明確な自分の言語を持つこと”が重要というテーマで解説していきます。

音源やエフェクトに自由に使える6種類の独立したモジュレーター

 新搭載のモジュレーターは、ソフト音源やエフェクトなどのさまざまなパラメーターを手動ではなく外部からの要素で変化させる機能で、LFO、Envelope Follower、Shaper、 Macro Knob、Step Modulator、ModScripterの6種類が用意されています。

Cubase Pro 14では、トラックごとに、ソフト音源、エフェクト、ミキサーなどのパラメーターに最大8つまでモジュレーターをアサインすることができるようになった。用意されるモジュレーターはLFO、Envelope Follower、Shaper、Macro Knob、Step Modulator、ModScripterの6種類。画面はプロジェクトウィンドウ下の“モジュレーター”タブをクリックし、追加モジュレーター選択ウィンドウを表示させているところ

Cubase Pro 14では、トラックごとに、ソフト音源、エフェクト、ミキサーなどのパラメーターに最大8つまでモジュレーターをアサインすることができるようになった。用意されるモジュレーターはLFO、Envelope Follower、Shaper、Macro Knob、Step Modulator、ModScripterの6種類。画面はプロジェクトウィンドウ下の“モジュレーター”タブをクリックし、追加モジュレーター選択ウィンドウを表示させているところ

 全部にフォーカスすると文字数がアレなので、僕の制作に既に役立っているLFOと、モジュレーターのパラメーターに別途モジュレーターをアサインする、“2段がけ”にも触れていきます。

 まず新規トラックにRetrologueを起動し、適当に音を入力します。今回はコード進行を入れました。このとき、Glide(ノート間のピッチをベンドする機能)をオンにしてみてください。ひと味足せるふりかけみたいな要素が増えます。ループ再生をしたいブロックを選択したら、デフォルトのショートカット“P”で範囲を設定し、そのあと“/”でループをオンにしておきます。それからプロジェクトウィンドウ下の“モジュレーター”タブをクリックし、LFOを選択します。初期状態では、サイン波のウネウネが見えると思います。Retrologueのあらゆるパラメーターに、このサイン波が波打つタイミングで影響を与えるわけですね。

 LFOを選択し終えると、“学習または選択”という画面が現れます。学習では、モジュレーターをアサインするパラメーターを、直接クリックして設定します。今回はフィルター・カットオフにアサインしたいので、“学習”を押してRetrologueの“CUTOFF”をクリック。これでLFOがCUTOFFにアサインされました。もうグネグネ動いていると思います。

 続いて、LFOのコントロール・パネル下部、“Filter Cutoff”の文字下の数字をいじりましょう。これは“モジュレーションデプス”のパラメーターで、設定済みのLFOがどのくらいの深さでかかるかを調整するものです。

モジュレーターのコントロール・パネル。画像は、ソフト音源Retrologueのフィルター・カットオフにLFOをアサインしたときのもの。“Filter Cutoff”の文字の下のスライダーでは、“モジュレーションデプス”の値を調整する

モジュレーターのコントロール・パネル。画像は、ソフト音源Retrologueのフィルター・カットオフにLFOをアサインしたときのもの。“Filter Cutoff”の文字の下のスライダーでは、“モジュレーションデプス”の値を調整する

 ちなみにですね、モジュレーターのコントロール・パネルは下ゾーンに常に表示させる必要がないんです。これ、めちゃくちゃ便利でした。下に表示すると結構な幅を使いますからね。さらになんと、ソフト音源上の波形のようなアイコンをクリックすると、直接モジュレーターにアクセスできます。

モジュレーターの重ねがけでより複雑なサウンドの作成が可能

 モジュレーターのコントロール・パネル上部、ここでは“LFO”と表示されているところをクリックすると、より詳細に設定できます。

コントロール・パネル上部のモジュレーター名の表示をクリックすれば、詳細な設定が可能に。LFOではNote、Shape、Phaseの調整ができる。波形上部はリトリガー・モード選択ウィンドウ

コントロール・パネル上部のモジュレーター名の表示をクリックすれば、詳細な設定が可能に。LFOではNote、Shape、Phaseの調整ができる。波形上部はリトリガー・モード選択ウィンドウ

 LFOの場合はNote、Shape、Phaseの3項目が調整でき、僕はそれぞれの変化を感覚的に捉えています。Noteは“プロジェクトに合わせてどんな規則で動くか”、Shapeは“風紀(規則)をどう乱すか”、Phaseは“作った波形へのちょっかい“、というイメージです。特にPhaseは開始位相を設定するパラメーターですが、僕は波形に“揺らぎを与える”ような感覚で使っており、これが曲の中でおいしい部分になったりします。音楽的に影響を与えるであろうパラメーターにとりあえずアクセスするのは、とても興味深くて楽しいです。

 Phaseにモジュレーションをかけていきます。先ほどと話が違うようですが、2段がけする際はモジュレーターのコントロール・パネルを下ゾーンに表示するのがお勧めです。スピーディに細かい設定ができるからです。ここではStep Modulatorを立ち上げ、影響を与えたいパラメーター(Destination)をPhaseにします。なぜStep Modulatorを選んだのかというと、連続した波形であるLFOのサイン波に対しては、連続ではなく、オンかオフ、0か1かを選択できるモジュレーションをかけていくのが気持ち良いからです。

LFOのPhaseパラメーターにアサインしたStep Modulatorのコントロール・パネル。連続した波形であるLFOのサイン波に対して、オン/オフがハッキリしたモジュレーションを加えるのが筆者の好み。また、ランダム感を演出するため、ステップ数を奇数である7に設定している

LFOのPhaseパラメーターにアサインしたStep Modulatorのコントロール・パネル。連続した波形であるLFOのサイン波に対して、オン/オフがハッキリしたモジュレーションを加えるのが筆者の好み。また、ランダム感を演出するため、ステップ数を奇数である7に設定している

 さらに、よりランダムっぽく聴かせるため、ステップ数を奇数にします。今回は7にしました。それからエンベロープの形を右上がりにして、あとは感覚でやっていきます。具体的には、ちょっかいを出すスピードはDepth。ちょっかいを出す頻度はNote。これらを良いあんばいに組み合わせることで、オリジナルなフォルムを持った音が出来上がりました。

 今回は、感覚的に行っている作業を自分の言葉で表現してみました。一般的に使われる言葉ではないかもしれませんが、“明確な目的を持って、目的までのハードルを感覚でやっつけていく”。僕はそんな感じで音楽をやっています。変化のあるコード・サウンドを作りたい。ちょっかいを出せるモジュレーションがあったから、あれで不安定な性格の変なウネウネを適度に入れていこう……みたいな感じですかね。道順はほかの方とは違うかもしれませんが、絶対に1つのゴール(出音)にたどり着きます。次回もCubaseの新ステージについて書いていきます。では!!!!!!!!!

 

白戸佑輔
【Profile】作曲/編曲/作詞家。東京音楽大学作曲科で室内楽、オーケストラなどの作曲をしつつ、大学3年時にベースを始め、卒業後はベーシストとして活動。2007年に作家活動をスタートさせ、さまざまなアーティストへの楽曲提供やサポート演奏を手掛ける。さらにアニメ・ソングやテレビ主題歌、挿入歌に加え、パチンコ、映画、ゲームのBGMなど幅広く活躍している。

【Recent work】

『nina』
坂本真綾
(FlyingDog)

 

 

 

steinberg Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 14:13,200円前後|Cubase Artist 14:39,600円前後|Cubase Pro 14:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
Mac:macOS 13以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

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