Cubaseのみで丸ごと1曲!トラック公開&作り方を解説|解説:AFAMoo

Cubaseのみで丸ごと1曲!トラック公開&作り方を解説|解説:AFAMoo

 こんにちは。トラック・メイカーのAFAMooです。僕が担当する連載は今月で最終回。最後は、steinberg Cubase付属の音源や機能だけを駆使してトラックを作り、実用性を検証したいと思います。よろしくお願いします。

ハウスのビートに最適なプリセット

 今回は、Cubase付属のサンプル・プレーヤーHALion Sonic 7と付属エフェクトのみで曲を作りました。ぜひ聴きながら読み進めてください。

 それでは、これまで紹介してきたTipsを交えつつ音作りを解説します。

 まずはリズムの音色について。キック、クラップ、シェイカーは、HALion Sonic 7のプリセット“House Kit 1”を鳴らしています。このプリセットはその名の通りハウス・ミュージック向けのリズム音源で、アナログなテイストの素材が多いため昔から重宝しています。キックは骨太でクラップは抜けが良く、“90'sなディープ・ハウス”を作りたい人にはかなりお薦め。実際、2016年にリリースした1st EP『Respect EP』では、リミックスを除くすべての曲でこの音源を使いました。なおオープン・ハイハットは同じくプリセットの“House Kit 2”。こちらは“House Kit 1”の音に良いあんばいのリバーブが付いていて、手間が省けます。

部分的にヨレを作りビートを強化

 また今回のトラックでは、シェイカーにはクオンタイズをかけず、手動でヨレを作っていきました。

シェイカーのピアノロール画面。クオンタイズをかけずにヨレを作ることで、グルーヴ感を生み出している

シェイカーのピアノロール画面。クオンタイズをかけずにヨレを作ることで、グルーヴ感を生み出している

 ダンス・ミュージックの制作において、ドラムやパーカッションはグリッドに対してオンタイムで打ち込む方が多いかもしれません。しかし僕が作るのは少しアナログな質感だったり、ブラック・ミュージック色が濃かったりするダンス・ミュージックです。そういったビートを構築する際は、いずれかのパートでヨレを作ることで、全体のグルーヴ感を強くすることができるのです。特にシェイカーはビート全体のリズム・キープを妨げることなくグルーヴを生み出してくれますので、ここではシェイカーにヨレを作ってみました。パンの振り方は連載第2回で紹介した通りで、今回は右に37振っています。

上モノにフィルターをかけることでDJの“つなぎポイント”を作成

 次に打ち込んだのはオルガンです。第3回では“Cool Tonewheel Organ”というHALion Sonic 7のプリセットを紹介しましたが、今回“Gospel Organ Split”というプリセットを選びました。

Cubaseに付属するサンプル・プレーヤーHALion Sonic 7で、オルガンの“Gospell Organ Split”を選択。本トラックでは、パラメーターを一切調整せずに使用した

Cubaseに付属するサンプル・プレーヤーHALion Sonic 7で、オルガンの“Gospell Organ Split”を選択。本トラックでは、パラメーターを一切調整せずに使用した

 オールドスクール感と今っぽさのバランスがすごく良く、このトラックにおいては、“Gospel Organ Split”の音の良さをお伝えするために、すべてのパラメーターをデフォルトのままにしています。

 さらにオルガンには、0:15~0:30辺りで第1回で紹介したCubase付属のStepFilterのプリセット“LoPass Flat”をかけています。ハウス・ミュージックはDJにプレイされることを想定して制作します。このようにフィルターをかけることでDJがつなぎやすくなるので、ぜひ取り入れてみてください。

 続いてはベースを打ち込みます。音源は“Fingered Tube”というプリセットです。そのまま鳴らすと軽い印象ですが、EQでうまく調整することで、重みがあり聴きやすいサウンドにすることが可能です。ハウスに限らず、ダンス・ミュージック全般に使いやすい音だと思います。ここでは、付属EQのFrequencyで調整。50Hz付近の音を5dBブーストし、ほかの帯域はバッサリとカットしています。

HALion Sonic 7の“Fingered Tube”で打ち込んだベースにインサートしたFrequencyの画面。50Hz辺りを5dBブーストし、100Hz辺りから上をバッサリとカット。これにより、重みがあって聴きやすいベースのサウンドを演出している

HALion Sonic 7の“Fingered Tube”で打ち込んだベースにインサートしたFrequencyの画面。50Hz辺りを5dBブーストし、100Hz辺りから上をバッサリとカット。これにより、重みがあって聴きやすいベースのサウンドを演出している

 ちなみに僕は普段から、ベースの音色はEQをかけた状態で選びます。EQの有無でかなり印象が変わりますし、僕の場合、ベースは今回のように低域以外の帯域を必ず削ることも理由です。

 最後にシンセ・アルペジオ。音色は“Impulse Glider”というプリセットを選択しています。

シンセ・アルペジオのフレーズは、HALion Sonic 7ライブラリーより、バーチャル・アナログ・シンセ音源Tripのプリセット“Impulse Glider”を選択。アルペジエイターの設定まで含めてすべてデフォルトのまま使用している

シンセ・アルペジオのフレーズは、HALion Sonic 7ライブラリーより、バーチャル・アナログ・シンセ音源Tripのプリセット“Impulse Glider”を選択。アルペジエイターの設定まで含めてすべてデフォルトのまま使用している

 今回初めて見つけたのですが、こんなにスタイリッシュでカッコ良いプリセットが眠っていたのかと驚きました。トラックのエレクトロニック色を強めてくれるところが気に入って、今後も使っていきたいサウンドです。Impulse Gliderはアルペジオ音源なので、手動でアルペジエイターを設定する必要はありません。コードを打ち込むだけで作動するのが便利です。第3回でお伝えしたように、アルペジオのフレーズを鳴らす際は、各コードのノートがつながらないように注意しましょう。

 ここまでで楽曲は完成です。全トラックでEQは使っているものの、ベース以外は基本的に高域と低域を軽く削ったのみ。マスターにはLimiter、Compressor、Maiximizerを入れています。すべてCubase付属の音源と機能だけで楽曲を完成させるのは約8年ぶりでしたが、思った以上に理想的なサウンドを作ることができました。

 本連載のためにあらためてCubase付属音源のサウンドを聴き直したところ、とにかく良い音のシンセやドラムが多いと思いました。そのうえプラグインも豊富なので、間違いなくCubaseのみでプロ・レベルの音源を作ることが可能です。僕は今年で使いはじめてちょうど10年目ですが、今後も使い続けたいと思います。連載を通して、Cubaseの魅力を少しでもお伝えできていたらうれしいです。

 

AFAMoo
【Profile】AFAMoo(アファム)。日本の音楽プロデューサー/DJ。2016年から楽曲のリリースを開始。ハウス・ミュージックに特化して制作を続け、これまでにNervous RecordsやLobster Thereminなど世界中の名門レーベルから作品をリリースしてきた。現在は2人組音楽ユニット"Uilou"のトラック・メイカーとしても活動しており、チルでダウナーなダンス・ミュージックを制作し続けている。

【Recent work】

『Do Me a Favor』
Uilou
(Uilou)

 

 

 

steinberg Cubase

LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 14:13,200円前後|Cubase Artist 14:39,600円前後|Cubase Pro 14:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)

REQUIREMENTS
Mac:macOS 13以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 23H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)

製品情報

関連記事