こんにちは。トラック・メイカーのAFAMooです。今回はsteinberg Cubaseシリーズに付属するサンプル・プレイヤーHALion Sonic 7を用いて実際に作った曲を、採用したプリセットとともに紹介したいと思います。
90'sハウス風のトラックにピッタリな温かみのあるオルガン・サウンド
楽曲:AFAMoo「Back to the 90s」
使用プリセット:Cool Tonewheel Organ
「Back to the 90s」は、タイトル通り1990年代のディープ・ハウスを意識したトラックで、オルガンのサウンドを用いています。このオルガンのサウンドは、Cubaseシリーズに付属するサンプル・プレイヤーHALion Sonic 7のライブラリーから“Cool Tonewheel Organ”というプリセットを選んで鳴らしたものです。そもそもこのサウンド、パラメーターを何もいじらなくてもめちゃくちゃ良い音なんですよね。温かみがあるアナログライクな音色で、ディープ・ハウスのオリジネイターであるケリー・チャンドラーの楽曲で使われるようなオルガンの音とかなり近いと思います。そういう意味でも、“90's”な空気感のディープ・ハウスを作ってみたい方にはお薦めです。
「Back to the 90s」では、Cool Tonewheel Organのパラメーターをデフォルトのまま使っています。1点だけ気にしたのは、音の広がり具合を調整する“Hall Mix”でした。個人的にたくさんのハウス・トラックを聴き込んできましたが、1990年代風のオルガン・ディープ・ハウスを作る際のポイントは、“最低限の広がりがありつつも、締まりのあるオルガンの音色”を作ることだと考えているからです。そのために最適な“Hall Mix”の数値を探ったのですが、最終的にはデフォルトの4、5くらいが適切だと思い、そのまま使っています。ディープ・ハウスのオルガンは基本的に細かく刻むのが一般的なのですが、それでいて“最低限の広がりがありつつも締まりのある音”にするにはこれくらいがベストでしょう。
コードの打ち込み方についてですが、この曲の場合、16分音符で細かく刻んでいます。8分音符だと締まりがないですし、32分音符だと広がりがなさ過ぎて微妙な感じになってしまうのです。
また、オルガンのサウンドは、リズムに対してどこに配置するかで楽曲のイメージが大きく変わります。この曲では基本的に2小節のコードをループさせているのですが、1小節目の1、2拍目は表拍に音を置き、それ以降は表拍と裏拍を混ぜて配置しています。これは1990年代のハウスでよく用いられていた手法で、だからこそ、これだけで90'sハウスっぽく聴こえるんですよね。
同じオルガンのコードでも、例えば1小節目の1拍目から裏拍に配置すると、より今のディープ・ハウスっぽく聴こえます。そういった音の配置のカラクリを知っておくのも面白いかもしれません。
脱線しましたが、「Back to the 90s」のオルガンはCool Tonewheel Organをデフォルトのままで鳴らし、EQで低域と高域をカットして中域を少し持ち上げただけです。素晴らしい鳴りですので、ぜひ聴いてみてください。
これほど良い音はなかなかないバーチャル・アナログ・シンセTrip
楽曲:Uilou「Skeleton」
使用プリセット:Water Pearl
Uilouの「Skeleton」は、チルでメロウなフローティング・ハウス・トラック。個人的にこの曲で最も気に入っているシンセのアルペジオは、HALion Sonic 7のライブラリー音源であるバーチャル・アナログ・シンセTripの“Water Pearl”というプリセットのものです。
このアルペジオの音、美しく、浮遊感があって本当に素晴らしいと思っています。具体的には曲の45秒辺りで始まるアルペジオのフレーズなのですが、エレクトロニックでありながらアンビエントっぽい空気感で、たまに鳴る“水面に何かが落ちたような高音”が気持ち良過ぎます。チルなダンス・トラックを作りたい方にはお薦めしたいプリセットです。これまでさまざまなソフト・シンセを使ってきましたが、これほど良い音はなかなかありません。標準搭載のソフト・シンセの音が良いというのも、僕がCubaseを10年以上愛用している理由の1つです。
このアルペジオを生かすために工夫したポイントは、次の画像のピアノロール画面のように、“コードとコードを完全にはつなげず、少し隙間を作ること”です。
コードを完全につなげてしまうと、“ファ”と“ファ”のような同じ音の部分がつながってしまい、アルペジエイターが正しく機能しません。そういった注意点はありますが、ピアノロール画面にコードを貼り付けるだけで美しいアルペジオが奏でられるのですごく便利。ちなみにWater Pearlもパラメーターは一切調整せず、すべてデフォルトのままで、ほかにやったことはパンをR50に設定した程度です。プリセットをデフォルトのまま使えるシンセってそう多くはないと思うのですが、このサウンドの場合、数値を変えてしまうとむしろ気持ち良さが消えてしまう恐れがあると思いました。
以上、今回はCubase付属のHALion Sonic 7を実際に使用して制作した楽曲を紹介しました。次回もぜひよろしくお願いします!
AFAMoo
【Profile】AFAMoo(アファム)。日本の音楽プロデューサー/DJ。2016年から楽曲のリリースを開始。ハウス・ミュージックに特化して制作を続け、これまでにNervous RecordsやLobster Thereminなど世界中の名門レーベルから作品をリリースしてきた。現在は2人組音楽ユニット"Uilou"のトラック・メイカーとしても活動しており、チルでダウナーなダンス・ミュージックを制作し続けている。
【Recent work】
『Do Me a Favor』
Uilou
(Uilou)
steinberg Cubase
LINE UP
Cubase LE(対象製品にシリアル付属)|Cubase AI(対象製品にシリアル付属)|Cubase Elements 13:13,200円前後|Cubase Artist 13:39,600円前後|Cubase Pro 13:69,300円前後
*オープン・プライス(記載は市場予想価格)
REQUIREMENTS
Mac:macOS 12以降
Windows:Windows 10 Ver.22H2以降(64ビット)、11 Version 22H2以降
共通:INTEL Core i5以上またはAMDマルチコア・プロセッサーやApple Silicon、8GBのRAM、1,440×900以上のディスプレイ解像度(1,920×1,080を推奨)、インターネット接続環境(インストール時)