ついにBITWIG Bitwig Studio 5.3が正式リリースされました。今回はドラム・デバイスを使って曲を作ってみましょう。新デバイスのステップ・シーケンサーStepwiseを用いたドラム・トラックの作成、ドラム・デバイスのちょっと変わったアイディアも紹介します。
Drum Machineでオリジナルのキットを制作
今回メインで使用するドラム・デバイスはV8 Kick、V9 Snare、V8 Hatです。
●V8 Kick
左上にあるのがピッチを変更するノブ(Tune)です。鍵盤のマークを押すとキートラッキング・モードがオンになり、入力されるMIDIの音高にキックのピッチが追従します。左下のDecayでは音の減衰時間を調整可能。中央のPunchでピッチ・モジュレーション量、Clickでアタックの音量を調整することができます。そのほか、Shapeでウェーブ・シェイパー、Driveでひずみ、右側のVel Sens.でベロシティのダイナミック・レンジ、Outputで出力レベルのコントロールが可能です。
●V9 Snare
V8 Kick同様、TuneやDecay、Vel Sens.、Outputを調整できます。中央部ではSnappy(ノイズ量)、Drive、Tone、Clickをコントロール可能です。
●V9 Hat Closed
TuneやDecay、Vel Sens.、Outputはこれまでと共通。中央のImpactでは打撃の強さ、Densityで音の明るさ、Widthでノイズ要素のステレオの分離を調整することができます。クローズド・ハイハットは特にベロシティの調整が肝になると思うので、Vel Sens.をしっかりと調整しておきましょう。
今回はDrum Machineを用いてドラム・トラックを作っていきます。まずはDrum Machineの各セルに今回のアップデートで追加されたドラム・デバイスを読み込み、自分好みのドラム・キットを組んでいきましょう。ステップ・シーケンサーのStepwiseを使ってパターンを制作しますが、StepwiseはMIDIデバイスのため、使用する際はインストゥルメントの前にインサートしてください。
Stepwiseの各レーン左側には3つの値があり、これらを調整することでシーケンスの再生をカスタマイズできます。一番左はピッチで、そのレーンで再生されるノートのピッチを変更可能。後段のDrum MachineでキックをC1にした場合、同じくC1に設定したレーンのシーケンスでそのキックがトリガーされることになります。中央の音符のマークでは、1ステップの音価(8分音符や16分音符など)を決めることが可能です。一番右の数字はステップ数で、上下にドラッグするとそのレーンのステップ数を変更できます。これらの値はオートメーションやBitwig Studioのモジュレーション機能にも対応しているので、より複雑なリズム生成も行えますね。
ちなみに、制作したパターンをバウンスしてオーディオとして扱いたいときは、まず新規オーディオ・トラックを作成します。そのオーディオ・トラックの入力ソースでStepwiseのトラックを設定して、録音ボタンを押して再生すればオーディオ・イベントとしてバウンスすることが可能です。
ドラム・デバイスでメロディを演奏 コードや効果音制作もできる
ドラム・デバイスはコードやメロディを奏でる楽器として使うこともできます。まずは、複数のインストゥルメント・デバイスをレイヤーとして格納できるInstrument Selectorをトラックの一番手前にインサート。その中にキートラッキング・モードをアクティブにしたドラム・デバイスをロードし、複製して幾つかのレイヤーを作りましょう。Instrument SelectorのModeでラウンドロビンを選択すると、MIDIノートを入力するたびにレイヤーが切り替わるようになります。
これでドラム・デバイスをマルチボイスのシンセのように扱うことができるようになりました。例えばInstrument Selectorの各レイヤーの設定をそれぞれ変えることで、MIDIノートを鳴らすたびに音色の変化を起こすということもできます。
ちなみに、ノブの値をすべてのレイヤーのドラム・デバイスに反映したい場合は、ノブを右クリックして“全レイヤーに値をコピー”を選択してください。
筆者のお勧めは、Decayを短くしたTomデバイスで作るプラック系サウンド。Delay+をインサートして付点8分のディレイをかけたサウンドは、複雑なリズムを生み出すアルペジオ・トラックに持ってこいです。BITWIGのSNSで動画が公開されているので、参考にしてみてください。
Our drum devices can also be used as tonal sounds for writing melodies! Here's how... pic.twitter.com/V33CFrV1eR
— Bitwig (@Bitwig) February 7, 2025
次はV8 ClavesをキラキラしたFXのような音に改造していきます。まずはDecayを600~700msほどに調整。次にデバイスのモジュレーションのタブを開き、Curveというモジュレーターを追加します。このCurveをV8 ClavesのTuneノブのマイナス方向にアサイン。今回は−4.20stにしました。Curveの設定でマルチセグメント・カーブをプリセットの“Multiplex”にして、タイム・ベースを16分音符に設定すると完成です。お好みでReverbやChorusなどをかけても良いですね。
晴いちばん
【Profile】ボカロP/作編曲家。幼少期よりピアノを経験し、中学生のときに初音ミクを使ったボーカロイド曲「スレイベラー」を投稿して活動を開始。2024年5月に1stアルバム『Ruins Record』、11月に1st EP『flicker』をリリースした。ボカロPとしての活動のほか、ゴスペラーズへの楽曲提供や映画/テレビ/ゲームの楽曲制作に携わるなど、多彩なフィールドで活躍する。
【Recent work】
『flicker』
晴いちばん
BITWIG Bitwig Studio
LINE UP
Bitwig Studio
フル・バージョン:52,800円|エデュケーション版:35,200円|12カ月アップグレード版:22,000円
Bitwig Studio Producer:26,400円
Bitwig Studio Essentials:13,200円
Bitwig Studio 8-Track:無償、ダウンロードはこちら→https://www.bitwig.com/reg/
REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
Windows:Windows 10(64ビット)、Windows 11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
Linux:Ubuntu 22.04以降、64ビットDual-Core CPU以上の×86 CPU(SSE4.1対応)
共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インター ネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)