Bitwig Studio最新バージョン(ベータ版)の新デバイス&新機能をチェック|解説:晴いちばん

最新バージョン(ベータ版)の新デバイス&新機能をチェック|解説:晴いちばん

 現在、BITWIG Bitwig Studioの最新バージョンとなる5.3のベータ・テストが行なわれています。アップデートの大きな目玉はドラム・デバイスとマスター録音機能の追加です。それらを含む新機能を見ていきましょう。

新ドラム・デバイス群と待望のステップ・シーケンサー

 V0/V8/V9ファミリーという3つのカテゴリーに分けられた複数のドラム・デバイスが追加されました。

V0/V8/V9ファミリーと呼ばれるドラム・デバイス群が新たに搭載された。キックやスネアなど、楽器ごとにデバイスが用意され、合計で25種類をラインナップする。この画面のデバイスは、左からV0 Kick、V8 Snare、V9 Tom

V0/V8/V9ファミリーと呼ばれるドラム・デバイス群が新たに搭載された。キックやスネアなど、楽器ごとにデバイスが用意され、合計で25種類をラインナップする。この画面のデバイスは、左からV0 Kick、V8 Snare、V9 Tom

 以前のバージョンより存在していたE-KickやE-Snareのシリーズからさらに進化したデバイスたちです。キックやスネアなどを個別にコントロールすることができる上に、パラメーターも豊富でかなり自由度の高い音作りが可能になっています。

●V0ファミリー

 先進的なデジタル・サウンドを追求する6つのデバイスから構成されているシリーズ。Zap Kickという特徴的なデバイスを含んでいて、全体としてはFM系のようなサウンドに強い印象です。

●V8ファミリー

 ROLAND TR-808のサウンドを元にしたシリーズです。キックやスネアはもちろん、あの特徴的なカウベルやクラーベなどを含む10種類のデバイスで構成されています。一度触りはじめるとずっと遊んでいたくなってしまうような音をしていて、とても良いです。

●V9ファミリー

 こちらはROLAND TR-909に影響を受けたシリーズ。金物、特にオープン・ハイハットは個人的に使用頻度が高いので、今後の制作でV9デバイスを使う機会が増えそうです。

 次に紹介するのは、5.3で筆者が一番注目していたStepwiseというステップ・シーケンサー・デバイス。

ステップ・シーケンサー・デバイスのStepwise。16ステップ×8レーンを備えており、後段に挿したDrum Machineなどのインストゥルメントを鳴らすことができる。ステップの数や音価、タイミング・オフセットを調整することで、複雑なリズム・パターンを構築することが可能だ

ステップ・シーケンサー・デバイスのStepwise。16ステップ×8レーンを備えており、後段に挿したDrum Machineなどのインストゥルメントを鳴らすことができる。ステップの数や音価、タイミング・オフセットを調整することで、複雑なリズム・パターンを構築することが可能だ

 DAW標準のデバイスということもあり、Bitwig Studioの強みを存分に生かした使い方ができそうです。ノート・エフェクトにカテゴライズされているデバイスなので、後ろにDrum Machineなどの任意のインストゥルメントを追加し、ステップの打ち込み&再生をすることで効果を発揮します。

 Stepwiseは16ステップ×8レーンを備えています。カーソルを合わせると自動的に鉛筆ツールに切り替わるので、左クリックで自由にステップを書くことが可能。また、WindowsとLinuxはAltキー(Macはoptionキー)を押しながらステップを書くことで、アクセント・ステップ(ベロシティを少し強めた状態)にすることができます。

 ステップ・レーンの右側に2種類の数値が表示されており、それぞれベロシティ(左)とタイミング・オフセット(右)となっています。ベロシティはそのステップ・レーンの基準となるベロシティを決めることが可能。タイミング・オフセットは値がプラスになるほどステップの発音が速く、マイナスになるほど遅くなります。スネアやハイハットをレイドバックさせたいときなど、さまざまな場面で使えそうです。

 ステップ・レーン左側ではステップ数やレート(ステップの音価)、ノートの音高などを決めることができます。状況に応じて自由度の高いカスタマイズができるのはうれしいポイントです。

アイディアを取り逃がさないマスター録音機能

 Gridで使えるモジュールも幾つか追加されており、その中から個人的に気になったFreq Shifter+を紹介します。以前のバージョンにもFreq Shifterというデバイスがありましたが、今回はFreq Shifter+という名前に進化して追加されました。Gridのモジュールとしてだけでなく、オーディオ・エフェクト・デバイスとしても使うことが可能。操作できるパラメーターも増えて、より複雑な処理ができるデバイスになっています。Bitwig Studioのモジュレーション機能を使って、動きのある音を作ることも可能です。標準デバイスのResonator Bankと合わせて金属っぽい音を作ってみても面白そうだと思いました。

中央のデバイスが追加されたFreq Shifter+。これまでもFreq Shifter(画面左のデバイス)があったが、Freq Shifter+ではパラメーターの拡充やWet FXの追加などが施されている。Resonator Bank(画面右のデバイス)と組み合わせて音作りするのもよいだろう

中央のデバイスが追加されたFreq Shifter+。これまでもFreq Shifter(画面左のデバイス)があったが、Freq Shifter+ではパラメーターの拡充やWet FXの追加などが施されている。Resonator Bank(画面右のデバイス)と組み合わせて音作りするのもよいだろう

 プロジェクト画面上部のパネルに新しく追加された●マーク、これがマスター録音機能です。

マスター録音機能は、マスター・トラックのアウトを常に録音してくれる機能。試しに演奏したフレーズをテイクとして活用する、任意のトラックを再生してバウンスする、パラメーターを動かしながらシンセ音をサンプリングするなど、さまざまなシチュエーションで便利に使える。赤枠内の●マークでマスター録音のオン/オフ、フォルダ・マークで録音データの保存先を開くことが可能だ

マスター録音機能は、マスター・トラックのアウトを常に録音してくれる機能。試しに演奏したフレーズをテイクとして活用する、任意のトラックを再生してバウンスする、パラメーターを動かしながらシンセ音をサンプリングするなど、さまざまなシチュエーションで便利に使える。赤枠内の●マークでマスター録音のオン/オフ、フォルダ・マークで録音データの保存先を開くことが可能だ

 ●マークをクリックして赤色に点灯させておくと、常にマスター段の音をキャプチャーしてくれます。これは再生中に限らず常時録音してくれるため、MIDI鍵盤でちょっとしたフレーズを弾いてみたアイディアの源も逃さず記録可能です。録音したデータはオーディオ・ファイルとして保存されており、●マーク下のフォルダ・マークをクリックするとファイルの保存先を素早く表示してくれます。

 このマスター録音はアイディアのスケッチだけでなく、複数トラックのレイヤーをまとめてバウンスしたい場合や、プラグインのパラメーターを動かしていろいろな音を探りながら記録したい場合にも役に立ちそうです。例えば、プラグインのパラメーターを動かしながらグリッチ系のサウンドを作るときにすごく便利そうだと感じました。

 今回のBitwig Studio 5.3は、曲作りのインスピレーションを刺激してくれるデバイスや機能が充実したアップデートだと感じます。BITWIGは現在、アレンジャー画面やピアノロールのワークフロー改善に取り組んでいるようで、より効率化された快適なDAWになっていくでしょう。今後の進化が楽しみですね。

 

晴いちばん

【Profile】ボカロP/作編曲家。幼少期よりピアノを経験し、中学生のときに初音ミクを使ったボーカロイド曲「スレイベラー」を投稿して活動を開始。2024年5月に1stアルバム『Ruins Record』、11月に1st EP『flicker』をリリースした。ボカロPとしての活動のほか、ゴスペラーズへの楽曲提供や映画/テレビ/ゲームの楽曲制作に携わるなど、多彩なフィールドで活躍する。

【Recent work】

『flicker』
晴いちばん

 

 

 

BITWIG Bitwig Studio

BITWIG Bitwig Studio

LINE UP
Bitwig Studio
フル・バージョン:52,800円|エデュケーション版:35,200円|12カ月アップグレード版:22,000円
Bitwig Studio Producer:26,400円
Bitwig Studio Essentials:13,200円

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
Windows:Windows 10(64ビット)、Windows11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
Linux:Ubuntu 22.04以降、64ビットDual-Core CPU以上の×86 CPU(SSE4.1対応)
共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インター ネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)

製品情報

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