進化を続けるBitwig Studioのお気に入りポイントを紹介|解説:晴いちばん

進化を続けるBitwig Studioのお気に入りポイントを紹介|解説:晴いちばん

 今月からこの連載を担当する、ボカロP/作編曲家の晴いちばんです。第1回目は、筆者が気に入っているBITWIG Bitwig Studioの機能性に触れつつ、お勧めの使い方や設定も紹介していきます。

プラグインがクラッシュしても動く安定性を目指したシステム

 Bitwig Studioの魅力の1つが、クラッシュしにくいという点です。サード・パーティ製プラグインとオーディオ・エンジンが分離して動作しているので、もし1つのプラグインがクラッシュしてもBitwig Studio自体はそのまま動作を続けることが可能。DAWを再起動することなく、クラッシュしたプラグインは再読み込みボタンですぐ復帰させることができます。

 また、設定に“プラグインホストモード”という項目があり、プラグインをどのようにオーディオ・エンジンと分離するのかを決めることができます。メーカー別やプラグイン別、個別など、好みやパソコンのスペックに合わせて選択可能です。この機能により、多くのプラグインを使ってもクラッシュを気にせず作曲に集中でき、ストレスフリーになります。

Bitwig Studioはオーディオ・エンジンとプラグインを内部で別々に処理しており、プラグインはサンドボックス(保護領域)で動作する。そのため、プラグインがクラッシュしたとしてもプロジェクトは引き続き使用可能だ。設定画面の“プラグイン(Plug-ins)”→“プラグインホストモード”ではその動作モードを変更でき、プラグインのメーカー別、同じプラグインごと、各プラグインを完全に分けて処理するなど、詳細に設定できる。完全個別での処理は安全性が高まるが、その分パソコンのリソースは消費される

Bitwig Studioはオーディオ・エンジンとプラグインを内部で別々に処理しており、プラグインはサンドボックス(保護領域)で動作する。そのため、プラグインがクラッシュしたとしてもプロジェクトは引き続き使用可能だ。設定画面の“プラグイン(Plug-ins)”→“プラグインホストモード”ではその動作モードを変更でき、プラグインのメーカー別、同じプラグインごと、各プラグインを完全に分けて処理するなど、詳細に設定できる。完全個別での処理は安全性が高まるが、その分パソコンのリソースは消費される

 Bitwig Studioは、Webブラウザーのタブのように幾つものプロジェクトを開くことができるのもメリット。

複数のプロジェクトをタブとして展開できるのも便利なポイント。別の曲で使用したエフェクトやオーディオをコピーして使う場合にも有用だ。別プロジェクトを再生する場合は“オーディオエンジンを有効”をオンにしよう

複数のプロジェクトをタブとして展開できるのも便利なポイント。別の曲で使用したエフェクトやオーディオをコピーして使う場合にも有用だ。別プロジェクトを再生する場合は“オーディオエンジンを有効”をオンにしよう

 例えば、以前のプロジェクトで使用した音やインサートのチェインも、タブで開いておけばすぐに持ってくることが可能です。しかも、どんなプロジェクトもオーディオ・エンジンとプラグインが分離しているのですぐに開くことができます。メインで開いているプロジェクト以外は“オーディオエンジンを有効”にしないと再生できませんが、トラックやイベント、プラグインなどは設定を維持したままコピーでき、非常に便利です。

 次はよく使う付属デバイスについて。なかでもDrum Machineはお気に入りです。各パッドに対して個別にプラグインをインサートすることができます。キックとスネアなどパーツごとに音作りをしながら、ドラムという1つのトラック上で打ち込みを完結できるのでとても重宝するデバイスです。

 よく使うユーティリティのデバイスがToolです。例えばトラックのボリューム・オートメーションを書くと、トラック全体の音量を変えたいときに少し不便。そんなときは、ToolをトラックにインサートしてVolumeノブのオートメーションを書くことで、トラックのフェーダーを自由に動かして全体の音量を決めつつ、ボリューム・オートメーションを書くことができます。この方法はボーカル・トラックなどによく使っていますね。

 ノート・デバイスではNote Transposeが便利です。音源やシンセのプリセットによって、ピアノロールでの表記と実際の音の高さ(オクターブ)が違うことがあります。その際はNote Transposeを挟むことで好きな音高にトランスポーズでき、MIDIキーボードを使っている場合でもそのハードウェアに依存することなく変更可能です。ある上モノのフレーズに対してベースをレイヤーするときはピアノロールを開く必要もなく、同じMIDIノートをコピーしてToolでオクターブを変える、ということができるので重宝しています。

 Velocity CurveはMIDIキーボードを使ってリアルタイム入力する人には特にお薦めのノート・デバイスです。その名前の通り、ベロシティ・カーブを調整できるデバイスで、ベロシティ調整ができない音源に使うと便利。このVelocity Curveのほうが細かく設定できる場合もあるので、いつも使っています。

筆者お気に入りのデバイスを並べた。左からNote Transpose、Velocity Curve、Drum Machine、Tool。Note TransposeはMIDIノートの音高、Velocity Curveはベロシティの反応カーブを調整できる。Drum Machineは各パッドに複数のインストゥルメントやエフェクト・デバイスを格納して音作りができる音源デバイス。ToolはVolume、Gain、Pan、Widthをコントロールできるユーティリティ・デバイスだ

筆者お気に入りのデバイスを並べた。左からNote Transpose、Velocity Curve、Drum Machine、Tool。Note TransposeはMIDIノートの音高、Velocity Curveはベロシティの反応カーブを調整できる。Drum Machineは各パッドに複数のインストゥルメントやエフェクト・デバイスを格納して音作りができる音源デバイス。ToolはVolume、Gain、Pan、Widthをコントロールできるユーティリティ・デバイスだ

ショートカットのカスタマイズで自分だけの使いやすさを追求

 筆者がよく使うショートカットも紹介しましょう。すべてWindows(およびLinux)表記です(MacはCtrl→commandとなります)。まずはトラック作成のショートカット。Ctrl+Tでインストゥルメント・トラック、Ctrl+Shift+Tでオーディオ・トラックが作成でき、Ctrl+Rでトラック名の変更ができます。この3つは三種の神器と言っていいほど頻繁に使用しているショートカットです。そのほかにも、Ctrl+Gでトラックのグループ化、Ctrl+Bでイベントのバウンスインプレイスなど、覚えておくと便利なショートカットがたくさんあります。

 自分でショートカット・キーを自由にカスタマイズすることもできます。Eキーでピアノロールの表示/非表示やCtrl+Shift+Rで選択したイベントのリバースなど、よく使う操作を自分の覚えやすい/押しやすいキーに設定するのがお勧めです。プラグインのオン/オフをどこかのキーに設定すると、聴き比べるときに使えるので特に便利だと思います。

 BITWIGはさまざまな最新技術を手掛けているのも特筆すべき点です。U-HEと共同開発した新たなプラグイン規格のCLAP、PRESONUSと共同開発したプロジェクト・フォーマットのDAWprojectがあります。

BITWIGとPRESONUSが開発したプロジェクト・ファイル・フォーマットのDAWproject。従来のスタンダードMIDIファイルやAAFと違い、タイムやトラック、チャンネルに関連するすべての情報、プラグインの状態まで含め、異なるDAW間でプロジェクトをやり取りすることができる。STEINBERG Cubase 14もDAWprojectに対応した

BITWIGとPRESONUSが開発したプロジェクト・ファイル・フォーマットのDAWproject。従来のスタンダードMIDIファイルやAAFと違い、タイムやトラック、チャンネルに関連するすべての情報、プラグインの状態まで含め、異なるDAW間でプロジェクトをやり取りすることができる。STEINBERG Cubase 14もDAWprojectに対応した

 DAWprojectは異なるDAW間で扱えるフォーマットで、Bitwig StudioとStudio Oneに加え、STEINBERG Cubase 14でも使えるようになりました。今後も普及していくはずです。

 筆者の周り(界隈)でもBitwig Studioはユーザーが増えており、アップデートを重ねるごとに独自の進化とクリエイティビティを与える、今後も注目のDAWと言えるでしょう。

 

晴いちばん

【Profile】ボカロP/作編曲家。幼少期よりピアノを経験し、中学生のときに初音ミクを使ったボーカロイド曲「スレイベラー」を投稿して活動を開始。2024年5月に1stアルバム『Ruins Record』、11月に1st EP『flicker』をリリースした。ボカロPとしての活動のほか、ゴスペラーズへの楽曲提供や映画/テレビ/ゲームの楽曲制作に携わるなど、多彩なフィールドで活躍する。

【Recent work】

『flicker』
晴いちばん

 

 

 

BITWIG Bitwig Studio

BITWIG Bitwig Studio

LINE UP
Bitwig Studio
フル・バージョン:52,800円|エデュケーション版:35,200円|12カ月アップグレード版:22,000円
Bitwig Studio Producer:26,400円
Bitwig Studio Essentials:13,200円

REQUIREMENTS
Mac:macOS 10.15以降、INTEL CPU(64ビット)またはAPPLE Silicon CPU
Windows:Windows 10(64ビット)、Windows11、Dual-Core AMDまたはINTEL CPUもしくはより高速なCPU(SSE4.1対応)
Linux:Ubuntu 22.04以降、64ビットDual-Core CPU以上の×86 CPU(SSE4.1対応)
共通:1,280×768以上のディスプレイ、4GB以上のRAM、12GB以上のディスク容量(コンテンツをすべてインストールする場合)、インター ネット環境(付属サウンド・コンテンツのダウンロードに必要)

製品情報

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