意外なところで使われているSP-404を紹介する。その場所は東京ドーム。しかもコンサートではなく、プロ野球の試合中に使用されているとのこと。情報をキャッチした編集部は、オープン戦が始まったばかりの球場へ向かい、音響を担当するくうP氏を直撃。いかにSP-404は活躍するのか、詳しく聞いていこう。
ハードウェアゆえの安心感
プロデューサー/アレンジャー/エンジニアなど、さまざまな肩書を持つくうP氏。東京ドームでは読売ジャイアンツ(以下、巨人)の主催試合のほか、WBCやメジャーリーグなど、野球を中心とした多くのスポーツ・イベントにおいて音響/演出を担当している。
「PAだけでなく演出とも言われているのは、選手が出てくるときの登場曲を僕が再生しているからなんです。選手によっては“曲のここでバットを振る”など、ルーティンの一つでもあるので、再生が遅れるとパフォーマンスに影響しかねない。そういう点も含めて演出を担当しているという感じです」
デスク上には、すぐ手の届く位置にSP-404の姿が。その用途を聞いた。
「試合中にファウル、アウト、ヒットとか、何か出来事があったときの効果音出しです。例えば、スタンドにファウルが飛んだときには“ダダーン”という音をSP-404から鳴らします。ただ、同じ状況でもホームとアウェイでは内容を変えていて。僕は巨人の主催試合担当で、立ち位置としては巨人を応援する側だから、巨人のときはより盛り上がりそうな音を、相手にはフラットな印象の音を用意して、チームごとにバンクを分けているんです。巨人の効果音は“G”のバンクにしています(笑)」
各効果音は、NATIVE INSTRUMENTS Kontaktをはじめとするサンプル・ライブラリーから、自ら編集したものを使用しているという。くうP氏は13年ほど前から担当しており、SP-404はその初期からの相棒だ。
「SP-404SXを初年度の途中から導入しました。同じことはパソコンでもできるけれど、いつ落ちるか分からない不安と、キーボードをたたいて再生することの不安感もあり、ハードウェアにしようと。大きさ、音質、操作感に加え、日本のメーカーだからサポート対応が早いのではというのも導入理由の一つです」
MKIIは明らかに音が良くなった
長く使用するSP-404SXは、なんと一度も故障することなく、現在はバックアップとしてアシスタントが活用している。
「頑丈さは最高峰です。地方の球場への遠征に持ち出していたり、野外の厳しい環境で使ったりしても問題ないです。現場で音が止まるのはあり得ないし、どんな状況にも耐えうる機材なのはすごいことだと思います」
くうP氏の現在のメイン・マシンはSP-404MKII。東京ドームという広大な空間の音を担う氏にとって、その進化は大きなものだった。
「MKIIになって明らかに音が良くなりました。僕は数年にわたって、毎日東京ドームの音響を突き詰めてきました。どんどん音が良くなり、来場者から音についてうれしい反応をもらえるようにもなりましたが、そこに機材がついてこないと意味がないですからね」
東京ドームで観戦する際は、選手の熱いプレイに注目するのはもちろん、SP-404の音にもぜひ耳を傾けてみてはいかがだろうか。