Roland SP-404MKIIを徹底解剖!12年の歳月を経て進化した機能とテクニックを解説

SP-404MKⅡ

SP-404MKIIでできること。

2021年に約12年ぶりとなる後継機種として登場したSP-404MKII。長い歳月を経て誕生したモデルだけあり、SP-404SXからの進化点は膨大にある。ここではSP-404MKIIが持つサンプラーとしての基本性能のほか、新たに搭載された機能や使えるテクニックまで、このコンパクトな1台で一体どんなことができるのかを解説していく。

Overview

VOLUME/CTRL 1〜3

VOLUME/CTRL 1〜3

 VOLUMEはマスターの出力レベルを調整可能。CTRL 1〜3は表示した機能やエフェクトによって対応するパラメーターが変わる。

有機ELディスプレイ/エフェクト・ボタン

有機ELディスプレイ/エフェクト・ボタン

 サンプルやエフェクトなどの情報が精細に表示される有機ELディスプレイを搭載。その周りには主要なエフェクトへ即座にアクセスできるエフェクト・ボタンを備える。デフォルトでは、左側の3つと右側上部の2つのボタンは印字されたエフェクトがアサインされているが、任意のエフェクトへ変更することも可能。MFXボタンではリアルタイムにエフェクトを切り替えて使うことができる。

コントロール・セクション

コントロール・セクション

 サンプルやパターン・シーケンサーの設定を行うボタン類。ボタンを押してディスプレイに表示された画面を見ながら、CTRL 1〜3やPUSH ENTERと印字されたVALUEノブでパラメーターを調整する。各ボタンやパッドの下に印字されている機能は、SHIFTボタンとそのボタンまたはパッドを押すことでアクセスできる。

パッド・セクション

パッド・セクション

 サンプルを再生する4×4のPAD 1〜16と、エフェクト系統を切り替えるBUS FX、パッドから指を離してもサンプル再生をキープするHOLD、外部入力のオン/オフができるEXT SOURCE、タップ・テンポ設定など多彩な使い方に対応するSUB PADが並ぶ。PAD 1〜16とSUB PADはベロシティに対応。固定ベロシティやベロシティ・カーブの調整も行える。

リア・パネル

リア・パネル

フロント・パネル

フロント・パネル

①サンプリング

 SP-404MKIIは16のプロジェクトを作成でき、プロジェクト内ではバンクA〜Jにそれぞれ16個のサンプルをアサインできる。1つのパッドの最大サンプリング時間は16分だ(16GBのストレージを内蔵)。サンプリングはリア・パネルにあるライン・インL/R(フォーン)、フロント・パネルのマイク/ギター・イン(フォーン)から行える。また、パソコンやスマートフォン、タブレットとUSB接続して音声を送受信できるため、デバイス上で再生した音やスマートフォンのマイクで収音した音をサンプリングすることも可能だ。

Rec画面

Rec画面

 RECボタンを押して記録先のパッドを選択するとサンプリングの待機状態になり、サンプリングする小節数や拍子を設定可能。RECORD SETTINGボタンを押すと、テンポやパン、録音レベルの調整ができる。ROUTINGというパラメーターでは、SP-404MKIIで再生している音と外部入力をミックス、または外部入力のみのサンプリングという2つの録音ルーティング(Mix/ExtIn)が選べる。

 SDカードからサンプルをインポートすることもできる。SHIFTボタン+PAD 14でIMPORT/EXPORT画面が表示されるので、そこから任意のパッドへアサイン可能だ。

②サンプルの再生

 デフォルトではパッドを押している間だけサンプルが再生されるが、点灯しているGATEボタンをオフにすると指を離してもサンプルが最後まで再生され、パッドを押すたびに頭からトリガーされる。VALUEツマミを押しながらGATEを押すとワンショット・モードになり、指をパッドから離してもサンプルが再生され、かつ再生が終わるまでリトリガーされない。

 LOOPボタンでは範囲を指定してループ再生が可能。SHIFTボタン+LOOPボタンでピンポン再生、REVERSEボタンでサンプルをリバースできる。ROLLを押しながらサンプルを再生、またはサンプルの再生途中でROLLを押すと、サンプルが短く繰り返し再生される。繰り返す間隔はSHIFTボタン+ROLLボタンで変更可能だ。

ROLLの間隔設定

繰り返す間隔をSHIFTボタン+ROLLボタンで変更している

③サンプル編集

 サンプルの再生開始/停止の場所はSTART/ENDボタンを押して表示される画面で設定可能。CTRL 1とCTRL 3でスタートとエンド・マーカーを移動でき、さらにRESAMPLEボタンを押すとゼロ・クロス・ポイントにマーカーがスナップするようになる。マーカーを設定した後、その範囲以外をトリミング(TRUNCATE)することも可能だ。そのほか、ノーマライズ(NOMALIZE)や高域を持ち上げるEQ処理(EMPHASIS)も行える。

START/END画面

START/END画面

 PITCH/SPEEDボタンを押すと、サンプルの再生スピードやピッチ、ボリュームを調整できる画面が表示される。画面右下の数値はサンプルの元のテンポで、自動検出や手動で設定が可能。また、SHIFTボタンを押しつづけると表示される画面では、ピッチのファイン・チューンやパンのほか、スピードとピッチによる音質変化アルゴリズムをコントロールするVINYLモードとVARIモードの設定が行える。

 BPM SYNCボタンを押すと、スピードとピッチをプロジェクトまたはバンクのテンポに自動的に合わせてくれる。

PITCH/SHIFT画面

PITCH/SHIFT画面

④サンプリング

 一度取り込んだサンプルを再度サンプリングし直すリサンプリング。波形編集後やエフェクトをかけたサンプルを再度録る、複数のサンプルを一つのサンプルとしてまとめるなど、その用途は幅広い。RECボタンでのサンプリングとの違いは、“パッドのサンプルを再生して再録音できる”という点だ。

RECORD SETTING画面

 リサンプリングをする際は、RECボタンの右側のRESAMPLEボタンを押す。その後はRECボタンのサンプリングと同じ流れだが、RECORD SETTING画面でROUTINGをMixにしておこう。そうすることで、パッドで演奏したサンプルをリサンプリングできる。ExtInにすると外部入力の音のみが記録されるが、その場合は“パッドの音を再生しながら外部入力で楽器演奏を録音する”といった使い方が可能だ。

 なお、サンプル合成機能(SAMPLE MERGE)も別途用意されており、SHIFTボタン+RESAMPLEボタンを押して表示される画面で複数のサンプルを任意の割合で加算/乗算合成することができる。

SAMPLE MERGE画面

SAMPLE MERGE画面

 ⑤エフェクト

 エフェクトはBUS 1〜4の4系統を備えており、BUS 1&2はリアルタイムで操作して任意のサンプルにエフェクトを適用可能。BUS 3&4はサンプル全体にかけるエフェクトで、マスター・エフェクトのように機能する。

 BUS 1&2の系統はBUS FXパッドで切り替えが可能。REMAINボタンを押しながらPAD 1〜16を押すと、そのパッドのエフェクト系統を変更することができる。BUS 1&2は、SHIFTボタン+PAD 16で表示されるEFX SETTING画面で直列と並列を選択可能だ。

エフェクト操作画面

エフェクト操作画面

 エフェクトはディスプレイ左右に並んだボタンからアクセスする。ボタンを押してエフェクトをオンにし、パラメーターはCTRL 1〜3で調整。パラメーターが表示された画面でVALUEノブを押すと、エフェクトのサブパラメーターが表示される。また、REMAINボタンを押しながらエフェクト・ボタンを押すと、エフェクトはオフのままパラメーター調整が行えるので、“エフェクトをオンにする前の事前準備”として使えるだろう。MFXボタンでは長押しするとエフェクト・リストが表示され、42種類から選択して使用できる。

 BUS 3&4は設定画面(EFX SET)から使用するエフェクトの選択とパラメーター設定が行える。

エフェクト・リスト画面

エフェクト・リスト画面

EFX SETTING画面

⑥INPUT FX

 BUS 1〜4のエフェクトとは別に、外部入力に適用できるINPUT FXも用意されている。17種類から選択でき、ピッチ補正のAuto PitchやボコーダーのVocoder、和音を作り出すHarmony、6種類のギター・アンプを選べるGt Amp SimといったBUS 1〜4とは異なるエフェクトも備わっているのが魅力的だ。

 INPUT FXはRECORD SETTING画面でVALUEノブを押すと設定できる。INPUT FXとBUS 1〜4のエフェクトを組み合わせてサンプリングすることで、複雑なサウンド・メイクも可能になる。

INPUT FX画面

INPUT FX画面

⑦PATTERN SEQUENCER Real-time RECモード

 PATTERN SEQUENCERは、サンプルの再生を組み合わせてシーケンスを組むことができる。PATTERN SELECTボタンを押すとPATTERN SEQUENCERモードに移行。RECボタンを押してパターンを記録したいパッドを押すとRECORD SETTING画面が表示され、パターンのテンポや小節数、クオンタイズが設定できる。その後、RECボタンを押してリアルタイムにパッドを演奏することでパターン作成が完了。パターンが記録されたパッドをたたくと、そのパターンがループ再生される。パターンはバンクA〜Jで各16個を作成可能だ。

PATTERN SEQUENCERのRECORD SETTING画面

PATTERN SEQUENCERのRECORD SETTING画面

 PATTERN EDITボタンを押して任意のパターンを選択すると、テンポや再生開始場所、全体の小節数を調整できるほか、同じパターンを連結して長さを倍にするDUPLICATE、選択した範囲以外をトリミングするCROP、クオンタイズを設定できる。

PATTERN EDIT画面

PATTERN EDIT画面

⑧PATTERN SEQUENCER TR-RECモード

 RolandのTRシリーズに代表されるシーケンサーでパターンを作成できるTR-RECモードもある。PATTERN SEQUENCERのRECORD SETTING画面でREMAINボタンを押すと、Real-time RECとTR-RECのモード切り替えが可能。TR-RECモードでRECボタンを押して記録を開始すると、PAD 1〜16が16ステップのシーケンサーとなり、パッドの点滅でシーケンサーの再生が表現される。

 打ち込むサンプルはSUB PADを押しながらパッドを押して選択。シーケンサーの画面で打ち込みたいステップに該当するパッドを押すと、そのタイミングでサンプルが再生される。打ち込み時は、1ステップを複数に分けて発音するSUBSTEPやサンプルを再生するステップ長を決めるHOLD STEPなどを設定可能だ。

TR-REC画面

TR-REC画面

 また、Real-time RECモードやTR-RECモードで作成したパターンは、Microscope画面でサンプルの発音タイミングやピッチ、ベロシティをノート単位で調整できる。Microscope画面は、TR-RECモードでPATTERN EDITボタン+編集したいステップを選択することで表示される。

Microscope画面

Microscope画面

⑨PATTERN CHAIN

 複数のパターンを連結して再生するPATTERN CHAINを活用すれば、曲の展開を作り出すことができる。PATTERN SELECTボタンを押してPATTERN SEQUENCERモードに入り、HOLDボタンを長押しするとパッドが緑色になってPATTERN CHAINの選択モードに。任意のパッドを選択すると右のような画面が表示され、ここで再生したいパターンを設定可能だ。パターンがアサインされているパッドを押していくと順番にPATTERN CHAINへと登録されていく。最大で16のパターンを連結可能だ。1つのプロジェクト内では16のPATTERN CHAINを作成できる。

PATTERN CHAIN画面

PATTERN CHAIN画面

 VALUEノブでカーソル(右写真のB.8のアンダー・バー)を移動でき、その位置にパターンを挿入したり、DELボタンで登録したパターンを削除することが可能。パターン・チェインをエディットすると画面右上に*マークが表示され、SHIFTボタン+DELボタンでエディット前に戻すことができる。作成したPATTERN CHAINはSUB PADを押すことで再生可能。再度SUB PADを押すと停止する。

 PATTERN CHAINではREMAINボタンを押すことでリピートの設定ができ、AllではPATTERN CHAIN全体、Currentでは現在再生中のパターンをリピートする。Offではリピートされない。

 PATTERN SEQUENCERもPATTERN CHAINもリサンプリングに対応している。また、それぞれのモードでCOPYボタンを押して任意のパターンまたはPATTERN CHAINを1つのサンプルとしてコピー(バウンス)することも可能だ。

➉SKIP BACK SAMPLING

 SP-404MKIIで再生された音を25秒前(=初期値/最大40秒)までさかのぼってサンプリングすることができるSKIP BACK SAMPLINGが搭載されている。MARKボタンを押すと直前まで演奏されていたサウンドが波形で表示され、通常のサンプル編集と同じく再生スタート/エンド・マーカーやTRUNCATE、NORMALIZE、EMPHASISの設定が可能。RECボタンを押して任意のパッドを選択すれば、サンプルとしてアサインできる。“良い演奏ができたのに録りのがした”“さっきのアイディアを聴きなおしたい”というような場合に便利な機能だ。

SKIP BACK SAMPLING画面

SKIP BACK SAMPLING画面

⑪Looper

 MARKボタンには、SKIP BACK SAMPLINGの代わりにLooper機能を割り当てることもできる。Looperは指定した小節数をループして、パッドや外部入力での楽器演奏や声を重ねて録音していくことが可能だ。

 Looperは通常のサンプルやPATTERN SEQUENCERの再生と別系統で出力されており、Looperで作ったフレーズを再生しながらBUS 1&2でエフェクトをかけたサンプルをトリガーするということも行える。出力先はBUS 1またはBUS 2、もしくはエフェクトを通らないDRYにすることもできる。

Looper画面

Looper画面

⑫DJ MODE

 バンクD/IとE/Jボタンを同時に押すとDJ MODEに切り替わる。2つのサンプルをCH1とCH2へ読み込み、ミキシングしてDJプレイが可能だ。

 CTRL 1とCTRL 2のノブがそれぞれCH1とCH2のフェーダーとなっており、パッドの左右縦2列分がそれぞれCH1とCH2のベンドやテンポ、再生/停止、テンポ・シンク、キューの設定を担う。CTRL 3のノブはキュー・ミックスのバランスやクロス・フェーダーとしてコントロールする。VALUEノブを押すとメニュー画面が開き、ここからCH1とCH2へのサンプル・アサインやサンプル編集が可能だ。

DJ MODE画面

DJ MODE画面

DJ MODE MENU画面

DJ MODE MENU画面

 DJ MODE中も通常のサンプルやPATTERN SEQUENCERの再生が行える。サンプルをトリガーするときはHOLDボタン、PATTERN SEQUENCERはPATTERN SELECTボタンを押して再生したいパッドをトリガーする。

⑬SP-404MKII App

 SP-404MKII専用グラフィカル・エディター/ライブラリアン・ソフトウェア、SP-404MKII App(Mac/Windows)も用意されている。SP-404MKIIをパソコンとUSB接続してSP-404MKII Appを使うことで、ドラッグ&ドロップでパソコンからSP-404MKIIへサンプルのアサインが可能だ。SDカードからのインポートではWAV/AIFF/MP3のみ対応しているが、SP-404MKII Appを使うことでWAV/AIFF/MP3/FLAC/M4Aのインポートに対応する。ちなみにMacでは、SP-404MKII AppをAU/VST3プラグインとしてDAW上で立ち上げることもできる。

SP-404MKII App

 SP-404MKII Appを介してスタンダードMIDIファイルをSP-404MKIIへ読み込み、そのMIDIシーケンスに合わせてサンプルを再生することも可能。そのほか、SP-404SXやSP-404Aのプロジェクト・データをSP-404MKIIフォーマットへ変換することもできる。

ROLAND SP-404大特集

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