モジュラー・シンセと即興音楽の魅力 〜東京発エレクトロユニットIQ3インタビュー

IQ3

シンセの仕組みが自分の中でつながっていきました

DOMMUNEセッションから生まれた東京発・電子ユニットIQ3に、結成秘話やモジュラー・シンセ導入の経緯をじっくり聞きました。

──IQ3はどのように結成されたのですか?

岡崎 DOMMUNEでモジュラー・シンセを使って打ち合わせなくセッションをする“ONE NIGHT LOVE”という企画があって、そこで初めて村井君とセッションしました。

munnrai その約半年後にANAGURAというギャラリーのパーティで“やりましょう”と。

──モジュラー・シンセを始めたきっかけは? 

岡崎 僕はおもちゃを改造して楽器にしたりするサーキット・ベンディングをやってたんです。ライブで鳴らすのに自動化できないかな?と思ったときに、アナログ・シンセサイザーのCV/Gate信号に出会って、自動演奏を試そうと思ったらユーロラック規格のモジュラー・シンセにぶち当たって。気づいたらトリガーを出す側ばっかりいじってます。 

munnrai 僕は友達が持っていたMAKE NOISE Shared Systemが面白そうだったのでELEKTRON Analog Fourを買ったのが最初で、CV出力を使いたくて2015年くらいから始めました。でもモジュラー・シンセって買いはじめると圧倒的に足りないじゃん。 

岡崎 足りない。音を1個分岐させるのに1万円ずつくらい課金しなきゃいけないし、お金を払うことでADSRの意味が分かる(笑)。モジュールをバラで買うことでやっとシンセサイザーの仕組みを理解できたし、ユーロラックのモジュラー・シンセを理解してからKORG MS-20 Miniとかのセミモジュラーを触ると、こんな便利だったんだって気付く。 

── ユニットでの活動はどんなメリットが? 

岡崎 それぞれソロでもモジュラーのライブや制作をするんですけど、IQ3でセッションすると即興の要素がより高まるんです。 

munnrai 僕は1人でやるより気楽というか。自分が音が止まっても岡崎さんの音が出るし、岡崎さんのほうで何かあってもこっちでとりあえずつなぐことができるみたいな。

岡崎 なかなか予定通りに事が運ばないのがモジュラー・シンセの怖さと醍醐味ですね。 

──音源作品はビート・ミュージックで、完全な即興音楽ではない印象ですよね。 

munnrai 音源も一発録りで“今のテイク良かったから、これを音源にしよう”みたいな。 

岡崎 制作では、自分たちで録ったものを交換して“こういうのが欲しいから入れて”と。それぞれの役割がリズム・パートだったりシンセ・パートだったり作品ごとに違うんです。ライブではある程度決めていますけどね。 

munnrai ジャズみたいにこういう曲って決まっているけど、“このコード進行だからこうしよう”っていうのは、自分なりに試してみて良かったらやります。それぞれソロで再現性がないのを長い時間やってきたから飽きてる節もあるんです。ドローン好きが集まるイベントで30分くらいインプロでやった前日はKFoM(Kansai Festival of Modular)で再現性のあるようなライブをやったりして。僕らが再現性って言うのは100%じゃなくて8割くらい。100%モジュラーでまとめるわけでもなくて、グルーヴ・ボックスにシーケンスを任せてMIDIでクロックを共有したりとか、ある程度安定するように工夫していますね。

──場に合わせて対応できるんですね。 

岡崎 それもモジュラー・シンセの良いところで。スタジオ機材を箱庭みたいにして全部そのまま持っていくから、組み替えて違う楽器みたいにもできるんです。 

── 今後、どんな音楽を作りたいですか? 

munnrai 毎年10月3日は“IQ3の日”なので、10月のリリースに向けて制作中です。今まで出してきた音源みたいな匂いはありつつ、聴きやすい作品になるかなと思います。 

岡崎 兵庫県のTobira Recordsでうちの音楽を評価してもらったときに使ってくれた“レフト・フィールドIDM”という言葉に引っ張られてる感じはあって。お互い下地にヒップホップがあるから、ブレイクビーツがやりたいとか、サンプリングした音源を使いたいとか、ラッパーも参加するけど、安易にそっちに行きすぎないようにバランスを取っています。インプロすぎずに再現性がありつつ、ライブとしてかっこよく成立させたいですね。ライブではdownyのSUNNOVAが映像を担当してくれているので、モジュラーとシンクロする映像美も併せて体感してほしいです。

私のイチオシ(岡崎絶太郎)

NOISE ENGINEERING NOISE ENGINEERING 

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「モジュラー・シンセをやってて良かったなって思うくらい好きですね。これだけでも迫力があるんですけど、大阪で活動するPlugmanに“アナログのキックを混ぜてディケイを調整すると本気のガバ・キックが作れる”と教えてもらって。ROLAND TR-909クローンのキックと混ぜるとバツンとしたキックが出せます」

写真で見るモジュール構成 & パッチング解説はこちら

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【IQ3プロフィール】
東京を中心に活動する電子音楽ユニット。音楽家・芸術家であり数々の映像作品を世に放つアーティストmunnraiと国内外で活動するノイズ・ホップ・クラブMAMMOTHの岡崎絶太郎がDOMMUNEの番組内でセッションしたことをきっかけに2021年に結成。

Release

『CRAB MUSIC』 
IQ3

(IQ3)

 

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