現代の音楽制作に欠かせないツールとなったヘッドホン/イヤホン。「制作の大半をヘッドホンでこなす」と言うクリエイターやエンジニアが増えており、それに呼応するように各メーカーからも魅力的な製品が登場している。ここではトラック・メイカーとして幅広く活躍するSTUTSに、楽曲制作で愛用するOLLO AUDIO S5Xについて語っていただこう。スピーカーとヘッドホンを並行して使う彼の制作スタイルにおいて、S5Xのメリットとは?
OLLO AUDIO S5X
スロベニアのメーカーOLLO AUDIOが手掛ける、ミキシング/マスタリング専用機の最新モデル。DSPの補正なしにイマーシブ/バイノーラルの空間表現にも対応できるフラットなレスポンスを持ち合わせている。
【SPECIFICATION】
●型式:オープン・ダイナミック型●周波数特性:15Hz~22kHz ●インピーダンス:50Ω ●ドライバー・サイズ:50mm ●重量:420g
フラットに聴けるのがS5Xの強み
僕のメインの作業スペースは地下にあり、太陽の光が欲しくなると2階に移動して作業します。そんなときに良いヘッドホンが欲しくなり、しっくりきたのがS5Xでした。使いはじめたらすごく良くて、結局は地下でも使っています。
地下スペースのモニター・スピーカーはATC SCM25A Proで、それだけでも十分ミックスはできます。でも、音楽が聴かれる環境はスピーカーだけじゃないし、ヘッドホンの中で広がる音の世界観も大事だと思っていて、そういう部分をS5Xはうまく表現してくれます。またスピーカーでは気にならなくても、ヘッドホンで聴くと気になる部分もあるので、S5Xを使って調整します。空間的な広がりや定位感、リバーブの周波数レンジなどが分かりやすく、スピーカーでは捉えられない細かいノイズも見つけられます。
あともう1つ、メインのスペースでS5Xを使う理由は部屋の音響特性です。僕の部屋にはたくさんの楽器があって、スピーカーを正確に鳴らし切ることが難しい。今の部屋では55~60Hzの間でほんの少しディップが生じるので、スピーカーだけでミックスするとその帯域が大きくなることもあって。そんなときにS5Xでチェックすると、出しすぎていたところが分かる。ローエンドまで見えて、フラットに聴けるのがS5Xの強みだと思います。
STUTS
トラック・メイカー。自身の作品制作やライブと並行し、数多くのプロデュースやコラボ、楽曲提供を行う。2021年にはTVドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』主題歌「Presence」を発表。翌年に3rdアルバム『Orbit』、Mirage Collective名義のアルバム『Mirage』をリリース。2023年には日本武道館公演を成功させた。
Recent Work
『Pointless 5(feat. PUNPEE)』
スチャダラパー×STUTS
(ZENRYO RECORDS/Atik Sounds/SPACE SHOWER MUSIC)