現代の音楽制作に欠かせないツールとなったヘッドホン/イヤホン。「制作の大半をヘッドホンでこなす」と言うクリエイターやエンジニアが増えており、それに呼応するように各メーカーからも魅力的な製品が登場している。 ここではシンガーソングライターのa子が、インディーズ時代にセルフ・ミックスをする際のリファレンスとして、愛用したTECHNICS EAH-T700を紹介する。
TECHNICS EAH-T700
ハイレゾ音源の圧倒的リアリティを再現するというTECHNICSのハイエンド・モデル。2ウェイ・ドライバーに、角度を付けたAngles Driverシステムを採用。反射音の低減を追求して、アルミ製のハウジングに表面処理を施すことで、超広帯域をクリアに出力する。
【SPECIFICATION】
●型式:密閉型 ●周波数特性:3Hz~100kHz ●インピーダンス:28Ω ●ドライバー・サイズ:50mm+14mm(ツィーター) ●重量:約470g(コード除く)
自分たちの曲が“一番良く聴こえない”音
TECHNICS EAH-T700を買ったのは4年ほど前です。londogの中村(英士)さんと一緒に試聴して、これに決めました。そのときの選び方は自分たちの曲が“一番良く聴こえない”音がするものでした。というのも当時はインディーで、ミックスも自分たちでやっていましたし、新しいヘッドホンを手に入れてもっとミックスの腕を上げたいと思っていて。そんな中で自分の曲を聴いたときに、立体感が出なくて、かつ音域も狭く高域も伸びない……でも、ほかのアーティストの楽曲は良く聴こえたのがこのヘッドホンでした。
EAH-T700は音が細かく聴こえる印象です。ギターの後ろで小さく鳴るシンセの音もしっかり聴こえるから、音の粒を拾いやすい。装着感は重いけどそのぶん頑丈。外に持ち出すよりも家の中で使うイメージです。
以前は、このヘッドホンでひたすらミックスしていました。1カ月くらいかけて何度も迷ってはやり直したこともあります。これを使うようになって、多少は自分のミックスもマシになったとは思います。今はプロのエンジニアさんに仕上げてもらっていて、このヘッドホンはデモ作りや仮歌のバランス・チェックに役割が変わりました。でも、EAH-T700で試行錯誤していたインディー時代のセルフ・ミックスも、それはそれで味があっていいなって思いますね。
a子
シンガー・ソングライター。2020年にアーティスト活動を開始し、クリエイティブ・チーム=londogを率いて楽曲制作からMV制作までを手掛ける。2024年7月にメジャー第1弾アルバム『GENE』をリリース。2025年1月に「a子 LIVE TOUR 2025 "LOVE PROPHET"」を開催予定。
Recent Work
『GENE』
a子
(ポニーキャニオン)