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MUCC 配信ライブ「FROM THE UNDERGROUND」@ 沼袋Section9【コンサート見聞録】

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11月に2週連続で配信ライブを敢行したビジュアル系バンドMUCC。第2週はライブ・ハウス沼袋Section9から中継を行った。キャパシティ200人前後の小規模なスペースで行われた配信の裏側でどのような機材が使われたのかリーダーのミヤ(g)や関係者へ伺った。

FROM THE UNDERGROUND
DATE:2020年11月28(土)
PLACE:沼袋Section9
TEXT:梨本裕貴 PHOTO:Susie(ライブ)、小原啓樹(機材)

 

メイン・コンソールはSSL Live. L100
マスター段にはSSL Fusionも活用

 看板無き沼袋Section9の入口を下っていくと、フロアでミヤとPAエンジニアの畦元信吾氏がコンソールを囲んでいる姿が見えた。前日のリハーサルを録音したデータをコンソール上でプレイバックし、サウンド・チェックの最終段階に差し掛かっているようだ。早速、沼袋Section9を会場に選んだ理由をミヤに尋ねた。

 

 「配信ライブでは、お客さんが普段聴く機会の無いサウンドを体験してほしいと思っているからです。1週間前の『FROM THE MOTHERSHIP』ではレコーディング・スタジオからライブ配信を行いましたが、今回はライトの灯体が昔っぽいライブ・ハウスを選んで、古き良きベニューでのライブをコンセプトにしています。今となっては、この規模の会場でお客さんを入れてライブをすることはありませんからね。今だからこそできることです。実はここで普段MUCCのリハーサルやプリプロを行っているので、部屋鳴りも熟知しています」

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メンバーの機材群がステージ上でリハーサルを待つ。フロア・モニターにはELECTRO-VOICE Eliminatorが使用された。逹瑯(vo)のマイクはSENNHEISER E965が用意され、コーラス・マイクにはELECTRO-VOICE RE320が立てられている。ミヤのマイクにはレコーディングに使用されることの多いサスペンション、ENHANCED AUDIO M600を使用

 コンソールは96kHz対応のSSL Live. L100が持ち込まれた。ステージ・ボックスに集結した40ch前後のインプットは、2台のRemote MADI I/OへMADIで伝送されている。Live. L100を選んだ理由についてミヤが説明してくれた。

 

 「前回の『FROM THE MOTHERSHIP』では古き良きSSLのアナログ卓を使ったのですが、今回使うのは最新鋭のデジタル・コンソール。この対比が面白いと思ったんです。12月27日の日本武道館公演でもモニターと配信用として使うので、今回はリハーサル的な意味合いもあります」

 

 Live. L100のサウンドについてミヤはこう語る。

 

 「今回のためにライブ用コンソールを何機種も試させてもらったのですが、その中でもかなりハイファイな音色だと思います。解像度が高く、演奏のクオリティがそのまま届けられますね。濁る部分が一切無い。前日のリハーサルで録ったデータを聴いたら想像の10倍くらいクリアな音色だったので、当日はサウンドを汚すために必要最低限のアウトボードを持参したんです。元のサウンドがクリアな分、アウトボードのキャラクターが相当強く出ると思いますよ」

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右にセッティングされているのはコンソールSSL Live. L100で、その隣には拡張パネルLive. Remote Tileがセットされている

 アウトボードはNEVEのビンテージ・プリアンプとEMPRICAL LABSのコンプレッサーを中心に選抜。2ミックスにもアウトボードを使っていると畦元氏が教えてくれた。

 

 「Live. L100内蔵のバス・コンプを使っているのですが、その前段にSSL Fusionをインサートしています。そしてコンプで失われた帯域を、最終段のFOCUSRITE ISA215で補正しているんです」

 

 Fusionは現在最も使っている機材だとミヤが続ける。

 

 「今必要な機能が凝縮されているんですよ。バランス良くミックスしたサウンドに、程良く味付けできる。特にM/S機能は重宝していて、リアルタイムで制御することもあります。ドライブ機能やトランス回路もフル活用していますね」

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SSL Live. L100の左に置かれた、アウトボード群の一部。ほかにもスネアとキック用としてNEVE 1066も4台持ち込まれていた

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コンソール前でのショット。左からPAエンジニアの畦元信吾氏、ミヤ、PAエンジニアの佐藤祐樹氏

 ステージに目を向けると、ギター・キャビネットから離れた位置に立てられたROYER LABS R-121が目に入った。マイキングの意図をミヤはこう語る。

 

 「オンマイク2本にオフマイクのR-121も混ぜることで、臨場感を出しているんですよ。それら3本のパンを右に振り切って、逆サイドにリバーブをかけた音を鳴らすことで、前後左右どの定位にもギターが存在するようにしています。ライブでは爆音によって自然と臨場感が生まれますが、配信ライブという個々の再生環境がまちまちなL/Rの世界だと、ギター1本を違和感無く聴かせるだけでも多くの工夫が必要なんです」

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ミヤのギター・キャビネット。臨場感のあるサウンドを得るために、ROYER LABS R-121(写真手前)はほかのマイクに比べオフ気味にマイキングしたとミヤは語る

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Live. Remote Tileの横には、ギターのサミングで使ったSSL Sixがスタンバイ。“ギターはデジタルにする前にサミングする”というミヤのセオリーは、レコーディングだけではなくライブでも健在だ

 臨場感の演出については、特にドラムの音作りで苦戦したとミヤは言う。

 

 「キャパ200人前後のライブ・ハウスは響きがタイトなので、マイクで拾っただけでは楽しく聴ける音にはならないんですよ。Live. L100内蔵の空間系エフェクトをはじめ、スネアやタムはYAMAHA SPX900で空間系エフェクトをかけたりもしました。あと、小バコ特有のフロアから聴こえるステージ上の音を届けるため、AKG C414 XLIIとBEYERDYNAMIC MM1をアンビエンス・マイクとして立てています」

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奥にラッキングされたYAMAHA SPX900とSSL Fusionの手前は、2ミックスの録音用に使ったオーディオI/OのSSL SSL 2+

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フロアの響きをキャプチャーするために配置したAKG C414 XLII。C414 XLIIはスネアのボトムや金モノにも使われた

01V96IでSSL卓から音を受け取り
OBSでニコニコ生放送とZAIKOに配信

 Live. L100で作られた2ミックスは、アナログ・ケーブルを伝って楽屋前にある配信基地へと向かう。配信プラットフォームはニコニコ生放送とZAIKOが選ばれたのだが、どのように映像と音声を組み合わせて配信が行われたのだろう? エンジニアの井澤潤氏に尋ねた。

 

 「まずLive. L100から来た音声を、USBオーディオI/O付きデジタル・ミキサーのYAMAHA 01V96Iに入力します。小規模な放送の現場だと多く使われている機種なんです。次に01V96Iからディストリビューターに伝送し、音声をさまざまなセクションへ分配できる状態にします。その後、BLACKMAGIC DESIGN Mini Converter Audio To SDIで音と映像をHD-SDI信号にエンベッド。そうしたら同社のディストリビューターでHD-SDIを分岐させて、2台のコンピューターに伝送します。最後にHD-SDIを配信ソフトのOBS PROJECT OBSへ反映し、それぞれで配信しているんです。01V96Iからコンピューターとラウドネス・メーターTC ELECTRONIC Clarity Mへも音声を送って、位相やラウドネス値などの監視も行っています」

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配信までのルーティングを解説していただいた井澤潤氏。卓上に置かれたミキサーのYAMAHA 01V96IにL100から出力された2ミックスを入力する。左のコンピューターではIZOTOPE Insight 2による配信レベルなどの監視が行われている

 ライブは激しいナンバーやアップテンポな楽曲を中心に披露。会場の雰囲気も相まって、まさにアンダーグラウンドな世界観をたたえていた。20年以上培ってきた最高のグルーブは、ライブ感抜群のサウンドで届けられる。中でもワイド・レンジで臨場感のあるギターはステージ上で聴いているかのようなリアリティがあり、生ライブとは異なる興奮を覚えた。

 

MUSICIAN
逹瑯(vo)、ミヤ(g)、YUKKE(b)、SATOち(ds)

MUSIC
①惡-JUSTICE- ②CRACK ③神風 Over Drive ④ENDER ENDER ⑤夢死 ⑥ぬけがら ⑦商業思想狂時代考偲曲⑧ガーベラ ⑨昔子供だった人達へ ⑩キンセンカ ⑪はりぼてのおとな ⑫茜空 ⑬目眩 feat.尋(NOCTURNAL BLOODLUST)⑭塗り潰すなら臙脂 ⑮謡声 ⑯前へ ⑰カウントダウン 
⑱蘭鋳 Encore ①明星

STAFF
主催:MAVERICK
PA:畦元信吾、佐藤祐樹
配信:井澤潤

 

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