BOSE PROFESSIONAL、勇往邁進 〜設立2年目の展望とは?

BOSE PROFESSIONAL、勇往邁進〜設立2年目の展望とは?

BOSE PROFESSIONALは、BOSE CORPORATIONのプロ・オーディオ部門が独立してできた会社。2024年5月には東京の新オフィスと製品のデモ・スペース“Experience Center”がオープンし、このたび2度目の季節を迎えた。インターナショナル・セールス・リーダーのハンス・ヴェリーケン氏(写真中央)が来日したので、日本のカントリー・マネージャー寺田和弘氏(同右)とマーケティング・マネージャー長谷洋樹氏(同左)の立ち会いのもと、独立の恩恵や2年目の展望、新製品などについて聞いた。

生産と物流を最適化できたのが大きい

 独立前のBOSE PROFESSIONALは、数多くの戦略的判断がコンシューマー・ビジネスと車載オーディオ・ビジネスに最適化される環境にあったという。

 「BOSE PROFESSIONALが手掛けるのはプロジェクト・ビジネスなので、例えばスタジアムに来月、500台のラウド・スピーカーを納品しなければならないような仕事もあります。そのためには柔軟で融通の効く生産体制が必要ですし、新会社として独立したことで、自分たちのビジネスに合った選択肢から自由に選べるようになりました。物流にも同じことが言えて、我々が配送するのは小さく梱包された箱ではなく、何台ものプロ・オーディオ機器です。生産と物流をプロジェクト・ビジネスに最適化できたのは、独立したことの大きなメリットです」

 ゼロから会社を作るような道のりだった、とヴェリーケン氏は振り返る。生産と物流の変更だけでなく、新たなオフィス探しや引っ越し、倉庫の確保や修理サービスの再構築など急務が山積み。しかも、通常業務を並行してこなす必要もあった。「これを実現しつつ、業績を伸ばすことができました。私は全社員を誇りに思っています」と続ける。

 「BOSE PROFESSIONALは、アメリカ・ホプキントンの本社をはじめ、世界に15のオフィスを持っています。製品のデモ・ルームは全9カ所で、本社、東京、シンガポール、上海、ドバイ、アムステルダム、フランクフルト、ロンドン、パリ。工場はアジアにあって、中国、タイ、ベトナム、マレーシアの4カ所。倉庫は世界に5つあります。工場や倉庫はパートナー企業の運営ですが、我々は正味1年でグローバル企業となりました」

ワイヤレス再生に対応するVeritas

 Integrated Systems Europe 2025で発表された新製品=VeritasとForumの両シリーズにも注目したい。まずは、中小の商業施設へのインストールに向けたBluetooth対応のスマート・ミキサー・アンプVeritasから。

 「我々がフォーカスしているのは、質の高いオーディオを求めるマーケットで、例えばレストランやホテル、スポーツ会場、教育施設、礼拝所などです。そういったマーケットの人たちも、現在はスマートフォンとワイヤレス・イヤホンで音楽を聴くようなスタイルに慣れています。ですので、音声をワイヤレスで受けることができ、なおかつプロフェッショナルなアンプを作ろうと考えたのです。ただ、プロフェッショナルと言っても難解な製品にはしたくなかったので、各種設定や操作を簡単に行えるよう設計しています。また、本体とCAT5ケーブルで接続して使う壁面コントローラーも便利。アンプの置き場所にとらわれず、スピーカーの音が聴こえやすいところに設置して音量を調整したり、入力ソースを切り替えたりすることができます」

本稿の取材は、東京・田町のBOSE PROFESSIONAL Experience Centerで行った。写真は、そこに用意していただいたVeritasシリーズのデモ機で、上からVeritas 250BLとVeritas 2160BH。共に、音量や内蔵EQなどを操作するためのロータリー・エンコーダーやOLEDスクリーンを備える

本稿の取材は、東京・田町のBOSE PROFESSIONAL Experience Centerで行った。写真は、そこに用意していただいたVeritasシリーズのデモ機で、上からVeritas 250BLとVeritas 2160BH。共に、音量や内蔵EQなどを操作するためのロータリー・エンコーダーやOLEDスクリーンを備える

1Uタイプの Veritasは、Zone 1と2の2つのエリアに向けて、個別に音量やEQの調整が可能

1Uタイプの Veritasは、Zone1と2の2つのエリアに向けて、個別に音量やEQの調整が可能

BOSE PROFESSIONALの設備用スピーカーのためのプリセットEQを30種搭載。スピーカーの特性に合わせたプロセッシングが行える

BOSE PROFESSIONALの設備用スピーカーのためのプリセットEQを30種搭載。スピーカーの特性に合わせたプロセッシングが行える

内蔵プロセッサーにはダイナミックEQなども用意

内蔵プロセッサーにはダイナミックEQなども用意

Forumは指向性制御と低域特性を重視

 続いてはForumシリーズについて。企業イベントや多目的スペース、店舗などに向けた同軸スピーカーで、8インチと12インチの2機種がラインナップされている。

 「弊社のラウド・スピーカーにはコンパクトなAMUシリーズ、そして大規模な会場に対応するArenaMatchおよびShowMatchシリーズがあります。Forumは、その中間に位置するシリーズ。まずはコンパクトな設計にするために、低域と中~高域の両ユニットを同軸上に置くドライバー構造を採用しました。さらに、スピーカー全体が1つの大きなホーンとなるように設計することで、指向性のコントロールを向上させています。これにより反射が軽減され、音の明瞭度が上がるのです。また、ウェーブガイドには小さな穴を無数に設けていて、低周波の透過性を高めています。実際に音を聴くと、Forumが繰り出す低音のパワーを感じられるでしょう」

Forumシリーズは、残念ながら取材当日にお目にかかれなかったが、BOSE PROFESSIONALに写真資料を用意してもらえた。左から12インチ・モデルのForum FC112 Loudspeaker、8インチのForum FC108 Loudspeaker

Forumシリーズは、残念ながら取材当日にお目にかかれなかったが、BOSE PROFESSIONALに写真資料を用意してもらえた。左から12インチ・モデルのForum FC112 Loudspeaker、8インチのForum FC108 Loudspeaker

Forumの内部には、低周波の透過性を高めるべく小さな穴を無数に設けたウェーブガイド、その向こう側に同軸ドライバーがある。これによって全周波数帯域にわたって均一な放射と高精度な指向性の制御を実現しているという

Forumの内部には、低周波の透過性を高めるべく小さな穴を無数に設けたウェーブガイド、その向こう側に同軸ドライバーがある。これによって全周波数帯域にわたって均一な放射と高精度な指向性の制御を実現しているという

 気になる低域特性は、8インチのモデルが53Hzで、12インチのモデルが48Hzとなっている(共に-10dB)。エレクトロニック・ミュージックがかかるルーフトップ・バーやダンス・フロアにも対応するほか、クロスオーバー周波数を引き下げたことにより、声を原音忠実に拡声できるのも魅力だ。

 「BOSE PROFESSIONALは長年、性能が高く、人々が必要とする製品を作ってきました。そして“売りっぱなしで後は知らない”という会社ではありません。保証、修理、トラブルシューティングなどのアフターケアを充実させていて、お客様のオーディオ・システムを末永くサポートしていきます。1964年にアマー・G・ボーズが“成功する企業を作る”という理念で始めたこの会社は、さまざまな要素に心血を注いで今日(こんにち)のブランドを築き上げたのです」

 製品の質から保守に至るまで、きめ細やかな仕事を重ねるBOSE PROFESSIONAL。本稿で紹介したVeritasとForumの活躍はもちろん、プロ・オーディオ・ブランドとしての今後にも期待が膨らむばかりだ。

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