AMS NEVEスタッフ来日記念インタビュー 〜話題のプロダクトに迫る!

マット・ターナー氏(左)とのジョー・ヒートン氏(右)

去る9月にAMS NEVEスタッフが来日。取扱店向けの製品デモンストレーションを行なわれた。コマーシャルマネージャーのマット・ターナー氏とプロダクトスペシャリストのジョー・ヒートン氏に、Genesys BlackのDolby Atomos対応やオーディオインターフェイス88Mについて伺った。

Genesys Black
〜小規模の制作環境でもDolby Atmosミックスが可能に

NEVE Genesys Black

─ 今回のデモンストレーションではGenesys BlackのDolby Atmos対応がメインでしょうか

マット・ターナー氏(以下、マット) はい、まだベータ版の段階ですがこちらにシステムを用意いたしました。

ジョー・ヒートン氏(以下、ジョー) 現在はタッチパネルやエンコーダーを組み合わせて操作できるようになっていますが、例えばジョイスティックでパンニングできるようにコントローラーモジュールなどの準備も検討しています。

シグナルルーティングについて教えてください。

ジョー Pro ToolsのハードウェアインサートによってGenesys Blackのアナログチャンネルストリップを経由したサウンドが、MADI/Danteを介してRMU(Dolby Rendering and Mastering Unit)へ送られます。RMUで処理された信号が再びGenesys Blackへ戻ってくるという流れです。オブジェクトのコントロールはGenesys Blackのタッチパネルやエンコーダーで行えます。また、Dolby Atmosのモニター・コントロールは、Genesys BlackからRMUのモニターセクションを操作する形で実現しています。

─ Genesys BlackとRMUの間に接続されている製品は何でしょうか?

マット これは今年発売予定の16chのアナログ/DanteコンバーターADA16と、2023年発売予定のDante/MADIコンバーターDM256です。

ジョー Pro Toolsの音声をDante-MADI変換でGnesys Blackに送り、処理された信号をDanteで再びRMUへ送る、という作業をDM256だけで行っています。

RMUのパラメーターはタッチパネルと汎用エンコーダーで操作できるようになっていた

─ 世界的にDolby Atmosミックスの需要は増えているのでしょうか?

マット Dolby Atmosは、Apple MusicやAmazon Music Unlimitedをはじめ、電気自動車メーカーであるテスラのカーオーディオにも対応するなど、一般的な普及が広がっており、既存曲をDolby Atmosでミックスし直すという制作側の需要も増えています。実際に自宅の納屋をホームスタジオに改造してGenesys BlackでDolby Atmosのセットアップを作ろうとしている方もいて、Dolby Atmos制作はもう個人レベルまで来ているんです。

ジョー 弊社は以前からDOLBY LABORATORIESと良好な関係で、2011年からDolby Atmosの構築に深く関わってきました。3Dサラウンドに対応したポストプロダクション用のコンソールDFC3Dもその一環ですが、小規模の制作環境で使えるように開発をスタートさせました。実際のGenesys BlackのDolby Atmos対応のリリースは2023年を目指してブラッシュアップしていく予定です。

1073マイク/ライン・プリアンプを搭載した8chのアナログチャンネル

オーディオインターフェース88M
〜最もリーズナブルなNEVEマイクプリとしても

─ 88Mは重みがあって丈夫な造りですね

マット バックパックに入れて持ち運べるにミリタリーグレードの頑丈さがあります。コンパクトでも壊れやすいと持ち出して使いづらいですからね。

各チャンネルにNEVEのプリアンプを搭載した2イン/2アウトのオーディオインターフェースNEVE 88M

─ 開発に至った経緯を教えてください

マット 妥協せずNEVEのサウンドクオリティをを保ったまま、より多くの人に使っていただけるようなオーディオインターフェースを目指して、開発とリサーチに長い時間を費やしました。アナログもデジタルもパーフェクトなところまで追い込んで開発しています。

ジョー 88Mの入力段には、88RSコンソールとそのままのクオリティのバランス・マイクプリが搭載されています。どのコンピューターにもつなげられるように、USB接続を採用しているところも見逃せません。USBクラスコンプライアント対応でMac/Windows(要ASIOドライバー)、iOSデバイス(電源供給が必要)で使用できます。またアウトボードが通せるアナログのインサートを2系統、ADATイン/アウトも搭載している点も非常に重要な特徴です。

─ USBバスパワーだけで十分な電力が供給されるのでしょうか?

マット USB3.0の規格に沿って作られているので動作については全く問題ありません。ただ、電流に関してはUSB 3.0の規格の900mAをほぼ使い切っています。USBハブを使う場合はアダプターなどで電源供給が可能なタイプを使ってください。

ジョー 88Mのプリアンプは、1073などのビンテージに比べて非常に効率が良いので直接USBポートにつなぐ場合、電源はバスパワーで全く問題ありません。ご心配なく。

─ 88Mは見方によっては、最もお買い得なNEVEのプリアンプということでは?

ジョー 大正解ですね! おっしゃるとおり、コンピューターを使用しなくてもUSB電源を供給できればスタンドアローンのプリアンプとして使うことができます。

マット そのほかの使い方として、88MならYouTubeなどの配信関連で、非常にクオリティの高いマイクサウンドを使いたいという要求にも応えることができます。実際に空港などの屋外から88Mを使って配信しているところを度々見かけますが、これもバスパワーで動作するからこそです。

─ AMS NEVEは非常に多くのプロダクトラインを取り扱っていますね

マット ピュアなアナログを専門にやってきた超エキスパートなNEVEと片やデジタル専門でやってきたAMSという2つのブランドが、ひとつのAMS NEVEという企業になったことで、両方をうまく組み合わせた製品が作り出せるようになりました。

ジョー ラインナップを見るとアナログやデジタル、そしてハイブリッドとたくさんありますが、顧客のニーズに合わせていろいろなフォーマットでリリースされているにすぎません。お客様はその中から自分にフィットするものを選んでいただければいいのです。なぜならそのサウンドはAMS NEVEクオリティですから。

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