
ディスプレイ表示されるプリセットEQで
25通りのモニタリング補正が可能
Rokitシリーズと言えば“クリエイターやトラック・メイカーに低価格帯で良質なパワード・モニター・スピーカーを届ける”というコンセプトでしたが、このRokit G4シリーズの設計ではプロデューサーやエンジニアより絶大な信頼を得ている上位モデル、Vシリーズに近いデザインと音を目指して開発されたそうです。
早速箱から出してみると、KRKならではの黄色いウーファーとツイーターが目に入ります。外形寸法は第3世代の同サイズ・モデルとほぼ同じですが、Rokitシリーズで特徴的だったキャビネットのエッジ部分は以前よりも丸みが抑えられています。重量は5.9kgから4.85kgと1kgほど軽くなっているものの、適度な重量感なので設置したときの安定性は抜群です。実際に手で触れてみると、各パーツの作りもしっかりとしていて、Vシリーズをほうふつさせる美しいフォルムになっています。この価格帯の製品では群を抜いている印象です。

背面を見るとさらに目を引くのが、25通りの設定が可能なプリセットEQ。部屋鳴りによる出音への影響を補正し、正確なモニタリングを可能にします。このサイズのスピーカーは曲作りやトラック・メイクの際、自宅のデスク上に設置して使用するケースも多いですね。スピーカー背面から壁までの距離が確保できず低音がブーミーになるときは、低域を調整するプリセットの“L.SHELF Cut”が有効です。部屋の音質がブライトあるいはダーク過ぎるならば、高域を調整するEQのカット/ブーストで補正できます。音の濁りが発生しやすい低域から中域は“L.PEQ”で補正可能。設置場所を選ばず本機の性能が発揮できる作りになっています。
ディスプレイの“SET UP”カテゴリーからは、スタンバイ・モードや正面に設置されているKRKロゴの点灯のオン/オフ操作が可能です。30分間、音声信号が検出されなかったらスリープする機能は、シチュエーションによっては不必要との声も多かったようで、G4からオフが可能になりました。
TR-808系キックのローエンドまで再現
生の弦楽器の高域もよく見える
それでは実際にサウンド・チェックに入りましょう! 剛性の高いKRK独自開発のケブラー製ドライバーが搭載されているので、全帯域にわたりバランスの良いモニタリングが可能になっているそうです。今回は、筆者の自宅スタジオのデスクに設置して、ABLETON Live 10から実際にライブで使用しているトラックを聴いてみました。トラックはキック、ベース、シンセのパッドとアルペジエイターから成るシンプルなものです。ライブ用データはダイナミクスを重視するためにトラック数を極力減らして、マスターにはコンプレッサーやマキシマイザーなどをインサートしません。なのでほかの小さなモニター・スピーカーですと、大音量の出せない環境では基本的にサウンドに物足りなさを感じることも多いです。
しかしRP5G4は、程良い音量でパワフルなローエンドと、スピード感とパンチのある中高域が出てきました。しかもそれがほかの音とバランス良く鳴ってくれるのでとても驚きました。ROLAND TR-808系キックのローエンドの輪郭もかなり明りょうに見ることができるので、ライブ会場でのPA鳴りを想定したコンプレッサー処理やEQ調整もやりやすいと思います。
次にPRESONUS Studio Oneを立ち上げてミックス中のデータを再生してみました。こちらはボーカル入りのバンド・サウンドで、ストリングスが入っている生音中心の楽曲です。生の弦楽器はどんな音がするだろうと思いながら聴いてみましたが、ケブラー製ドライバー採用の影響か、Vシリーズ譲りとも思える高域の再現性と豊かな情報量を確認することができました! いつもはヘッドフォンで確認しているリバーブ成分の質感や定位もとても見えやすいです。筆者はリバーブを多用しているので、これはうれしいポイントです。
ギターやストリングスはアナログEQやサチュレーター系プラグインで質感をコントロールすることが多いのですが、これもニュアンスの違いがとてもつかみやすく好印象です。ドラムのアンビエンス・トラックではシンバルの余韻や部屋の奥行きも忠実に再現してくれています。各楽器の距離感も分かりやすいので、ミックスでも十分に使用できると感じました。正直この部分はRokitシリーズにはあまり期待してなかっただけに、さらに驚きです。
駆け足でRP5G4を紹介しましたが、ぜひとも聴き慣れた音源ソースを持参して店頭で音を聴いてみてください。筆者も本機をプライベート・スタジオに導入して、YAMAHA NS-10Mと使い分けようかと検討しています。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年2月号より)