トラック作成／エフェクト立ち上げが直感的
プロジェクト間のファイル受け渡しも簡単
Waveformを起動すると、ものの数秒でProjects画面が映し出されます。せっかく湧いた曲のアイディアとモチベーションが、長い起動時間によってそがれてしまう心配がありません。
このProjects画面では楽曲プロジェクトの作成のほか、各プロジェクトに使用されているオーディオやMIDIファイルなどを閲覧可能。また、左上のSettingsタブに切り替えると、各種オーディオ／MIDI設定などが行えます。さらにその横の“＋”ボタンをクリックするとプロジェクトの作成／読み込みができるので、新規プロジェクトを作成してみます。するとプロジェクト用のフォルダーが作成されるので、その中にあるEditという編集用ファイル（ほかのDAWで言うところのプロジェクト・ファイル）で作業を行う形です。Editファイルは縦軸がトラック／横軸が時間となっており、左上には編集中のEditファイルのタブが表示されます。このように“＋”ボタンをクリックしタブを追加していくことで複数のEditファイルを読み込むこともできるため、プロジェクト間での音素材の受け渡しなどを容易に行うことが可能。“この前の曲のあの音どうやって作ったっけ？”といったことはしょっちゅうあるので、以前のプロジェクトから簡単に読み込める設計は非常にうれしいです。
右上の赤い“＋”マーカーをトラック上にドラッグ＆ドロップすることでMIDIクリップ／オーディオ・クリップを作成でき、その隣の“＋”マーク（New Plugin Generator）をドラッグ＆ドロップすると付属プラグインを立ち上げることが可能（サード・パーティ製のVST/AUプラグインにも対応）。クリップのプラグイン・チェインが１画面で確認できるTracktion時代の特徴も健在です。さらにPlugin Rackという機能を使用すると、複数の音源を同じMIDIノートで共有したり、より複雑なチェインを組むことができる設計です。
コード展開を自動で生成する
Pattern Generator機能も搭載
付属のプラグイン・エフェクトとしては、EQ／コンプ／リバーブなどミキシング用のプラグインは一通りそろっています。プラグインはユーザー・インターフェースがしっかりと作られており、例えば付属のTCompressorだと処理によってどれだけリダクションされているか分かりやすく、パラメーターの調節がとてもしやすいです。付属のプラグイン音源では円環状のグラフィックが特徴的なシンセ、Biotek（画面①）が面白いです。プリセットを読み込み、このグラフィック部分で座標を指定すると、X軸／Y軸のパラメーターに反応してグラフィックが都会的なイメージから森林的なものに変化し、同時に音色が変化します。プリセットの種類も多く音質も良いため、プリセットを読み込んでグラフィックを触るだけで”使えるサウンド”が出来上がる即戦力のシンセです。
▲画面① Waveform Ultimateに付属するシンセ、Biotek。そのほか600以上のプリセットを収録したサンプラー＆シンセサイザーのCollectiveなどでユニークなサウンド作りが行えるまた、MIDIにはノートを簡単に編集できる機能、Pattern Generatorが搭載されており、“Progression”で“Ⅰ-Ⅳ-Ⅴ-Ⅵ”のようにコード進行を指定するだけで簡単にコードを組めるほか、手入力で打ち込むと面倒なアルペジオも自動で入力してくれます（画面②）。Style部分で曲線を指定するとそれに沿ったアルペジオが入力され、とても簡単かつさまざまなアルペジオに対応可能です。
▲画面② MIDIにはPattern Generator機能（下部）が付いており、コード進行の提案などをして作曲を支援してくれる今回紹介した機能はほんの一部分ですが、そのほかにも便利な機能が多く、手軽さと精細さを両立した魅力的なDAWとなっています。特に、多くのことがシングル・ウィンドウで行え、プルダウン・メニューが少なくストレスフリーな設計はとても評価できますし、直感的な操作を求める方に試してもらいたいDAWです。
（サウンド＆レコーディング・マガジン 2017年７月号より）
