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コンピューターやスマホ&タブレットから
mmレベルでの微調整が可能
X1-Rには前後に約14cm、横に約16cm移動可能な2本のスライド・レールが十字に重なっており、マイク・マウント部を360°回転させるモーターも組み込まれています。ただし、マイクを取り付けてセンター位置をキャリブレーションすると、回転範囲は中心から左右90°に限定されます。前後移動の最小単位は約1.4mm、横移動は約1.6mm単位、回転は1°単位の調整が可能なので、かなり細かな調整ができます。
下部にはマイク・スタンドに装着するための5/8インチ・ネジ穴があります。X1-Rの本体重量が1.9kgほどあるため、マイク・スタンドはある程度重量があってしっかりしたものを使いましょう。使用した印象としては、ブーム・スタンドよりもストレート・タイプがよいようです。搭載できるマイクの重量は水平使用の場合で最大2.2kg、付属のマウンターを使用しての垂直使用で最大900gまで。真空管マイクや大型リボン・マイクを使用する際には注意が必要です。
操作に使う端末は、Mac/Windowsなどのコンピューター(GOOGLE Chromeアプリ)、iOSデバイス、Androidなど。また、初期設定に必ずインターネットにつながったWi-Fi環境が必要です。一度設定してしまえばUSBでの有線接続でも使用は可能ですが、用途を考えるとWi-Fi環境は必須になるでしょう。初期設定には多くの手続きが必要で、筆者は1時間くらいかかりました。使用する直前ではなく、時間に余裕のあるときに、説明書をしっかり読んで設定を済ませましょう。特にWi-Fi環境に接続する手順は少々手こずりました。セットアップ・ボタンは電源投入後すぐに押すのがポイントです。
EQ操作のように画面でマイキング調整
マイク位置の保存/呼び出しも可能
初期設定さえ済ませてしまえば後は簡単に使用できます。APPLE MacからでもAPPLE iPhoneからでも気軽に制御でき、操作するたびにマイクが動く様子はなかなか面白いです。録音で試してみましたが、まさに思い描いていたリモート・コントロールが実現。特にギター・アンプには相性が良く、自分の手でマイクを動かすのとは別次元の音作りが可能だなと実感しました。モニター・スピーカーを目の前にして、正確に音を確認しながら動かせるX1-Rのメリットは計りしれないでしょう。まさにEQをするかのようにマイクを動かして録り音を決められることに、感動しきりです。
また動かした位置をプリセットすることもできるので、リード・ギターはここ、バッキング時はここといった切り替えも、テープでバミることなく可能となり、大変便利だと思います。こうして録り音の段階で距離感をしっかりつけておければ、ミックスでより立体的なサウンドを構築できるはずです。
また、筆者のスタジオの場合、コントロール・ルームが1F、ブースが地下という環境のため、マイク位置を調整するにも階段を行き来する必要があり、それはそれで大変なものなのです。そういった体力的な悩み(?)も一気に解決してしまいます。アシスタントが居ないワンマン・スタイルのスタジオも増えている昨今ですので、そういった面でも利用価値は高いと思います。
注意点としては、モーターの動作音がそこそこ大きいので、録音中の調整はやめた方がよいでしょう。また動作していない場合でも、位置固定のためにモーターには常時電圧がかかっており、大変熱くなっていました。触る際には注意が必要ですし、使用しないときは電源スイッチが無いので電源を抜いておく方がよさそうです。それと外のスタジオに持ち込む際は、初期設定したWi-Fi環境ごと持ち運ばないといけないため、X1-R専用のWi-Fiルーターを用意するのがよいのかもしれません。
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録り音はマイキングがすべてと言っても過言ではありませんが、現実問題シビアなところまでマイキングを詰めることは、時間の制限もあり、なかなかできていないと思います。そんな時にこういった製品があることで安易にEQに頼らず、マイキングだけで勝負しやすくなり録音時には心強い味方となるでしょう。録り音にこだわりを持ちたいエンジニアやギタリストにお薦めしたいと思います。


撮影:川村容一(メイン写真)
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年6月号より)