
理にかなったプロダクト・デザイン
拡張I/Oボックスとリモート接続が可能
まずは製品外観から見ていきましょう。思わずニヤリとしてしまうとてもスタイリッシュで特徴的な形状です。サイドから見るとL字を時計回りに90°回転させたようなスタイルで、底面部に空間を持たせ空気が通るようになっています。排熱を妨げない程度ならば、小物をここに入れてしまうのもよいでしょう。
リア・パネルにはマイク・イン(XLR)とライン・イン(フォーン)を24ch分搭載しています。インプットはそのほかにステレオ用のインプット(フォーン)が2つ。アウトプットはメインL/Rをはじめミックス・アウトが10ch、マトリクス・アウトが4ch、グループ・アウトが4ch、そのほかAESアウトも装備しています。
またdSNAKEというALLEN&HEATH独自のプロトコルにより、専用ステージ・ボックスやモニター用ミキサーとの接続も可能です。
さらにトップ・パネルのフェーダーはモノラル・インのチャンネルと同数となっており、使い勝手が良い仕様となっています。
そしてマルチトラックUSBレコーダー機能を内蔵している点も見逃せません。24ビット/48kHzのWAVで18ch分のオーディオ・データを録音/再生可能。また、最大32イン/30アウトのオーディオI/Oとしても機能し、Mac/Windowsへ直接マルチトラック録音/再生も行えます。
クリアでレスポンスが良いプリアンプ
マイク・セッティングに有用なEQプリセット
今回はキャパシティ150人ほどのライブ・ハウスで、オケを流してワイアレス・マイクで歌うアイドルものの本番と、クローズドなスタジオでドラム・マイクを一式セットアップした環境でテストしました。
まずはボーカル・マイクを接続し、マイクプリのゲインを上げていきます。……このマイクプリはちょっと驚いてしまうほど良いですね! レスポンスが良好ですし、とてもクリアでトゲトゲしさも無く、フェーダーの上げ下げにもイメージ通り追従します。ライブでのボーカルものはどうしてもあれこれとEQで切りたくなってしまうのですが、今回はハイパス・フィルターを入れただけで音が決まってしまいました。これならレコーディングにも使えてしまうのでは?と思えるほどです。
次にプリセットとして作成された定番マイクのEQセッティング・パターンについて見ていきます。必要最小限のものだけ用意されていますので、膨大なリストから選ぶのではなく、セッティングの手助けとしてコピー&ペーストし、後は各パラメーターで追い込んでいく、という手順です。ドラム・セットへのマイク・セッティングの時間短縮に大いに役立ちました。パラメーターのコピー&ペーストの際も、タッチ・スクリーン下に独立した物理ボタンが用意されているので分かりやすいですね。
またタッチ・スクリーンの画面は発色がよく見やすいです。触れた際の反応も大変良く、キャリブレーションもできますので、わずらわしい思いをすることも無いでしょう。
続いて4系統の内蔵エフェクトを試していきます。今回はボーカル用にホール系リバーブとステレオ・ディレイをかけました。ごく一般的なエフェクトの設定項目なので使いやすく、用意されているプリセットそのままでも十分対応できました。リバーブは伸びが良く、なかなかリッチな音です。エフェクト・リターン・チャンネルには専用の4バンド・パラメトリックEQが立ち上げられています。また、他製品に無い特徴として全マイク入力にダッカーがインサートされている点があります。トーク・イベントのオペレートに役立つことでしょう。
UIは他メーカーに比べれば少々独特ですが、すっきりとまとめられていて操作に迷ったり、欲しい機能を探してセットアップ・メニューの中をさまよったりすることはありませんでした。必要な操作情報やボタン・アサインについてはほとんどパネルに明記されています。良い意味でアナログ・ミキサー的と言えるでしょう。ミキシング・コンソールの基本概念にある程度精通している方なら、マニュアルを手に取ることすらないかもしれません。QUシリーズの魅力は冗長性を持たせ過ぎず、欲しい動作/機能をストレートに実現する分かりやすさではないかと思います。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)