
ボトム感あるBaby Bottle SL
伸びるBluebird SLと中間的なSpark SL
まずは、それぞれの外観から。Baby Bottle SLは重厚感ある濃いグレーに近い黒。球状のダイアフラム格納カプセル部分が印象的です。Bluebird SLはライト・ブルーで、3機種で一番ボディ部分が太く、重量もあります。カプセル部分は球状のフロントを切り落とした形で、ゆで卵を半分に切ったようなデザインです。Spark SLは、赤系のポップな色合い。ボディ部分が3機種で最も細く短く、軽量に仕上がっています。カプセル部はさらに後部も切り落とした、円筒形。指向性はいずれも単一です。
このようにそれぞれ細かなデザインが違っていて、凝った作り。モデル名にSLが付いたリニューアルで、3種類ともボディのフロントにローカット(100Hz/−12dB/Oct)と−20dB PADを装備しました。そしてショックマウントと高級感ある木製ケースが付属します。
それでは、実際に音を聴いてみましょう。今回は、RME Fireface UFXへ、内蔵マイクプリを使い、比較用のNEUMANN U87を含め、4本を接続します。マイクのダイアフラム4つを寄せてセッティング。音源/距離の条件を同じにして、男性/女性の声/歌と、アコースティック・ギター、パーカッションでチェックしてみました。第一印象として、3種類ともにU87よりもレンジに広さを感じます。マイクからの信号も現在主流の高出力で、古いタイプのU87と比べて10dB以上の差があります。
Baby Bottle SLは、今回の中で一番低域がしっかりしていました。これは声のチェックだけでも分かるほどです。それと中域の充実感も一番ありました。そもそもフラッグシップである真空管マイクBottleのコンセプトを受け継いだモデル。ボーカルはもちろん、生楽器などアコースティック楽器に実力を発揮すると思います。それぞれ楽器/歌のボトムまでしっかりと感じられます。
次にBluebird SL。これは、音の抜けが一番良かった印象です。ギターやパーカッションなどで倍音が充実し、伸びが心地よく感じられました。ギターやピアノなどオケ中で埋もれがちな楽器はもちろん、ボーカルを抜け良く録りたいときにも威力を発揮するはずです。ポップなサウンドに使える、音源を選ばない万能型の一本だと感じました。
Spark SLも抜けが良く、さらに低域も充実した感じでした。下位機種ですが、Baby Bottle SLとBluebird SLの特性の良いところを受け継いだ印象。コンデンサー・マイク入門用としては、あらゆる録音で使える十分以上なパフォーマンスだと思います。
メーカーの言う通り、それぞれマイクの設計コンセプトがはっきりしているモデルです。それでいてシルエットはそっくりで、兄弟のように見えるシリーズだと思います。
自宅録音環境で威力を発揮する
適度に調整されたローカット&PAD
今回追加されたローカットとPADスイッチは、特に自宅録音環境で威力を発揮するはずです。レコーディング・スタジオのような整った空間以外では、多くの振動源やノイズ源があります。コンデンサー・マイクはレンジが広く感度も良いため、こうしたノイズまで混入しがちです。マイクプリにローカットが無かったり、かかり方が弱かったりする場合などは、マイク側にローカットがあると選択肢が増えます。あるいはマイクとマイクプリで二重にローカットすることもできます(効き過ぎには注意!)。エッセンシャル・シリーズのローカットは低音がバッサリ無くなるようなことはなく、100Hz以下が少し軽くなる印象で、通常のボーカルや楽器の録音時に問題無く使えます。また、ギター・アンプや管楽器などの高出力楽器、極オンマイク時など、現在の高出力マイクでは入力時にひずむこともあるので、PADで出力を抑えられるのも便利です。
自宅で、しかも自分でセッティングして、ボーカルや楽器の録音をするときには、こうしたスイッチが目視でき、すぐにオン/オフできます。フロントに付いているのは、その辺りの実際の使い方を想定しているのでしょうね!
チェックした3機種はいずれも、本当にリーズナブルでサウンドにもそれぞれ特徴があり、用途や環境、ジャンルで選べますね。BLUE MICROPHONESの特徴であるスタイリッシュなデザインは無骨な従来のマイクとは一線を画すものですし、サウンド面でも特に読者の皆さんの自宅録音環境では重宝するはずです。ちょっとした録音用に、平時からスタンバイできるコンデンサー・マイクとしても使えますね。私の仕事のスペースに置くとしたら……小さくて赤いSpark SLかな!?

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)