
厳選したパーツを手作業で組み込み
パッシブ/アクティブとも同じ機能を装備
まずはそのデザインから。いやおうなしに目に飛び込んでくるのが、本体上面を埋め尽くすブランド・ロゴだ。100年超の歴史を誇るロゴを100mm四方の正方形目一杯にあしらったインパクト大なデザイン。ポップで遊び心満載な上、それを誇示することでブランドと製品に対する同社の自信がうかがえる。ボディは3mm厚アルミを使用した強固な構造で、各種スイッチもしっかりしており、総合的に剛性が高い印象だ。
側面入力側にはINPUT、入力信号をそのまま返すTHRU(それぞれフォーン)、−15dBのPADスイッチを2ch分備える。反対出力側はOUTPUT端子(XLR)、接続された機器間の電位差ノイズを回避するグラウンド・リフト・スイッチがそれぞれ2ch分用意される。アクティブ・タイプのTDA-2にはファンタム電源供給確認用LEDも2つある。パッシブ/アクティブ・モデルの外見上の違いは、そのLEDに加え、入出力パネルの色。パッシブはシルバー、アクティブがチタン・カラーだ。
どちらのタイプも内部回路の中心となるのが、英国OEP/CARNHILL製のカスタム・トランス。加えてWIMA/NICHICON製キャパシター、1% 1/4W金属皮膜抵抗、AMPHENOL製コネクターなどが、金メッキ処理された基盤に100%手作業で組み込まれ、製品の信頼性を高めている。付属品としてロゴが刺しゅうされた布製ポーチ、滑り止め用ラバー・ストリップ、ロゴ・ステッカーが同梱。シリアル・ナンバーがパッケージ、本体裏面シール、内部ハウジングの3カ所に手書きされているのが、個人的に好印象なポイントであった。
中域の密度が上がる芯のしっかりした音
スルーにエフェクトをかけて戻す技も可能
試聴はエレキギター(パッシブ/アクティブそれぞれのピックアップを搭載したもの)、キーボードで行った。TD−2とTDA-2、共通の音色傾向としてはギターのピッキングのニュアンスやタッチの感じはしっかり残りながら、低域の暴れが抑えられ少し締まる印象。とはいえ量感に物足りなさは無く、扱いやすく上手にまとまる感じだ。中域の密度も上がり、全体的に芯がしっかりして、かたまり感が上がって聴こえる。パッシブのギターはTD-2よりTDA-2の方が高域の伸びが得られ、アクティブのギターでは全く逆にTD−2の方にきらびやかさが感じられた。これは恐らくインピーダンスの兼ね合いによる音色の違いだと思われる。それぞれの入力インピーダンスはTD-2が100kΩ超、TDA-2は1MΩ超なので、パッシブ・タイプのギター/ベースなど超高インピーダンス楽器にはTDA-2を、アクティブのものやキーボードなどインピーダンスが若干低めの機器にはTD-2を選ぶのが定石であろう。両機とも2ch仕様だが、内部回路は完全に独立しており、クロストークなどは無いので、ステレオでもモノラル×2chでもどちらも問題なく使える。
ここで自宅録音における2ch DI使用のアイディアを一つ紹介しておきたい。ギターやベースなどをINPUT1に入れ、THRU1から出力された信号にコンパクト・エフェクターなどを経由してINPUT2に入れる。これでOUTPUT1から素のライン音、OUTPUT2からエフェクトがかかった状態の音を得られるので、それらを録音しておけば演奏時に設定を詰めた音色を残しながらミックス時に音色の再構築が可能になる。TD-2/TDA-2もそんな使い方ができるDIだ。
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TELEFUNKENはTD/TDAシリーズを開発するにあたり、“あまりに無菌でクリーンなDIでは楽器そのものが持つ魂やキャラクターを欠乏させてしまうし、過度にキャラクターを付加するものではローエンドが誇張され高域がひずみ、みにくいサウンドになってしまう。そうならない新しいDIのスタンダードを目指した”としている。実際に試聴した印象もその通りで、開発理念が高レベルで具現化された良い製品だと感じた。




(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)