「MOGEES Mogees」製品レビュー:物体の振動を音楽的なサウンドに変換するハード+ソフトのツール

MOGEESMogees
あらゆるモノを楽器に変える画期的なガジェット、MOGEES Mogeesが発売された。物体の振動をピックアップするためのセンサー(上の写真左)と、それで収めた振動を音楽的なサウンドに変換するという専用iOSアプリ(同右)もしくはMac対応プラグインから成るこの製品。一体どのような仕上がりなのだろう?

センサーを物体に張り付けてからiPhoneやオーディオI/Oと接続

専用のiOSアプリと組み合わせて使う場合から説明していこう。まずはAPPLE iPhone/iPad/iPod TouchなどでApp Storeにアクセスし、アプリを無償ダウンロード。次にセンサーのユニットを楽器にしたい物体(机、コップ、扇風機など何でもOK)に張り付ける。この粘着素材は水で洗うこともでき、交換用の予備も付属している。続いて、アプリをインストールしたiOSデバイスのマイク/ヘッドフォン・ジャックにセンサーを接続。本体から伸びているステレオ・ミニのケーブルでつなぐ形だ。これが済んだらMogeesの出力ジャックにヘッドフォンなどを接続し、モニター環境を整える。

アプリには、ドラム、パーカッション、弦楽器、シンセサイザーなどの音色を出すための4つの音源が搭載されている。例えば机にセンサーを張り付けた場合、手でたたいた音をシンセ、鉛筆でたたいた音をスネア……といったように鳴らし分けると面白そう。このたたいたりする行為をMogeesでは“ジェスチャー”と呼ぶ。テストの結果は後で詳述するが、センサーが聴き分けやすい振動を出すよう工夫することがキモだと思う。

続いては専用プラグインと併用する場合を見ていこう(画面①)。

▲画面① 専用プラグイン。MIDIの送受信にも対応しているので、別の音源の音色を使ったりMIDIコントローラーで操るなど、アプリよりも高度なことが行える ▲画面① 専用プラグイン。MIDIの送受信にも対応しているので、別の音源の音色を使ったりMIDIコントローラーで操るなど、アプリよりも高度なことが行える

このプラグインはMogeesの製品サイトから無償ダウンロードでき、DAW上でVST/Audio Unitsプラグインとして動作する。KOURYOサーバにアップした「SR174_175_tsuika」を入れるセンサーの設定の要領はiOSデバイスのときと同様で、本体のケーブルをオーディオI/Oのライン・インに接続するだけ。ただし同梱のアダプターで、ステレオ・ミニからフォーンに変換してつなぐ形だ。

出音のバリエーションを増やすにはたたく物の素材に幅を持たせるとよい

まずは机、コップ、空き缶などで試してみたが、先述したジェスチャーの認識が思ったより難しかった。机を手でたたく、鉛筆でたたく、たたく場所を変えるなど工夫してみたものの、それらの区別を認識するのが困難だったようで、同じような音しか生成されなかった。そこで発想を変え、楽器で試してみることにした。打楽器で試し、アプリの“認識力”というのがどの程度か体験し、それを元にほかのもので試してみるという方向にしたわけだ。

最初に選んだのはボンゴ。これが結果的には正解で、手でたたく、鉛筆でたたく、ガラスでたたく、側面をたたく、2つ太鼓のそれぞれをたたくといった“振動の違い”を、センサーはかなりの精度で認識してくれた。ボンゴをたたいているのに、現代音楽のような金属的な弦楽器だったり電子音のドラムが聴こえてくるのは新鮮で面白く、つい長時間遊んでしまった。これでかなりコツをつかんだので、次に選んだのは扇風機。またしても大正解で、ボンゴ以上の精度でジェスチャーを認識してくれた。扇風機の土台の部分にセンサーを張り付け、土台をたたく、羽のカバーをたたく、カバーの側面をたたく、羽を支える柄の部分をたたくなど、センサー内でどんな処理がなされているのか知る由も無いが正確に認識してくれ、このガジェットの奥深さを体感することができた。

うまくMogeesを使うコツとしては、手やドラムのスティック、金属の棒、ガラス素材など、たたく側の素材を複数用意することである。たたかれる物体はある程度の大きさがあった方がよく、脚だけが金属になっている机など複数の素材で成っているものが好ましい。また内部構造に空間があるものも振動が伝わりやすいのでよい。

音源について触れておくと、現代的なシンセの音や古典的なリズム・マシンの音などが収録されていて、プリセットだけでも十分楽しめた。もちろん音色のエディットも可能。個人的にはMac用のプラグインに搭載されている音源“Blue Steel”のスチール弦っぽい音色などが面白いと思う。高域にエッジのある、現代的な音質である。

製品サイトの紹介ビデオにもあるのだが、外部エフェクターと組み合わせることで世界が広がるのが、“楽器”として素晴らしいところだろう。操作感については、DAWよりもiOSデバイスでの方が圧倒的に扱いやすかった。とは言えDAWで使う場合、プラグインがMIDI入出力に対応しているので、さらに高度なことができるだろう。

▲写真左に見えるのはセンサー・ユニットの端子周りで、iOSデバイスに挿すためのプラグやヘッドフォンなどをつなぐためのジャックが配置されている。中央はオーディオI/Oへ接続するときに使用するステレオ・ミニ/フォーンの変換アダプター。写真で見えるフォーン・ジャックにケーブル(別売)をつないで、オーディオI/Oのライン・インなどへ接続する。右は付属のケース ▲写真左に見えるのはセンサー・ユニットの端子周りで、iOSデバイスに挿すためのプラグやヘッドフォンなどをつなぐためのジャックが配置されている。中央はオーディオI/Oへ接続するときに使用するステレオ・ミニ/フォーンの変換アダプター。写真で見えるフォーン・ジャックにケーブル(別売)をつないで、オーディオI/Oのライン・インなどへ接続する。右は付属のケース

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年8月号より)

MOGEES
Mogees
オープン・プライス(市場予想価格:14,630円前後)
SPECIFICATIONS(センサー・ユニット) ▪外形寸法:約40(φ)×20(H)mm(本体の実測値、ケーブル長:約1m) ▪重量:38g(実測値) REQUIREMENTS(アプリ/プラグイン) ▪iOS:iOS 8以降、APPLE iPhone 5以降/iPa d 2〜4/Air/Mini/Mini2など ▪Mac:OS X 10.7以降、VST/Audio Unitsに対応したホスト・アプリケーション