
和音演奏に向いたNOTESモード
柔らかできめ細かい音色が特徴
Exhaleをロードすると、大きな4つのマクロ・スライダーを持つメインGUIが表示されます。その下にモード切り替えボタンがあり、Exhaleの持つ3種類のモードを切り替えることができます。
NOTESモードはプリセット250種類、LOOPSモード/SLICESモードはそれぞれ125種類のプリセットを持ちます。タグ付けで、DIRTY、AIRY……といった音の質感による分類、LEAD、PADなどその音色の音楽的な役割による分類がされています。
まず、NOTESモードから試してみます。MIDIキーボードなどでサンプルを音階演奏できるモードで、和音も演奏できます。プリセットも、和音を前提とする音色が多くを占め、その質感はどれも柔らかできめ細かい印象。サウンドトラック的といいますか、かなり上品な音色です。TAPE LOOPやCOMPLEXタグをオンにすると、時間変化の多い波形やエフェクトを多用した音色を厳選。ここからマクロ・スライダーでエフェクトのWETやREVERBを減らしてみると、質感が変わっていきます。
さらに画面上部のENGINEボタンを押すと、詳細なエディットが可能(画面①)。

上からオシレーター波形の選択に当たるSOURCEセクション、テンポに同期した時間変化を作成するRHYTHMセクション、FXセクションがあります。SOURCEは4種類×20波形の中から2つをレイヤーすることが可能。元波形には男女、声の強弱、人数感、アー/オーなどの口の開き方、さらに言葉を歌っているものなど、膨大な種類が収録されています。
ポリフォニック音色が多いので、モノでポルタメントがかかる“声をオシレーターとしたシンセ・リード”みたいな音色が作成可能か、エディットしてみました。SOURCE中央の歯車のようなボタンを押すとGLIDEパラメーターが表示されるので、MONOPHONICを押して後着優先にすればOKでした。
曲のキーに合うLOOPS/SLICESモード
楽曲のアイディアを練るのにも最適
続いてLOOPSモード。1つのプリセットの中に、13種類の異なるループ・サンプルがアサインされています。タグ付けによるプリセット分類はNOTESモードと同じです。ループ・サンプルはあらかじめキー解析されており、作業中のセッションのキーを指定すると、サンプル選択時にどのプリセットもキーに合った状態で演奏しながら選択できます。また元のキーからの変更量も表示され、自然な音色感から極端なピッチ・シフトまで選ぶことが可能。単純なプレビューよりも圧倒的に速くサンプル波形の選択ができます。プリセットも長く深いリバーブ感の強い音色が多く、Exhale独特の雰囲気が感じられます。
3つ目はSLICESモードです。ループ・サンプルがアサインされている点はLOOPSモードと似ていますが、13個のMIDIノートに対して、スタート・ポイントが異なる同一サンプルがアサインされています。長いフレーズを切り刻んで、順番を入れ替えているわけですね。プリセットの音色はキーとメジャー/マイナーの指定ができるので、自動的にトランスポーズされた状態のサンプルを次々とロード可能。声ネタのサンプル音源の制作作業では一番時間のかかるのがこのキーや調性をそろえる作業なので、それが自動化されたことで、通常の声ネタのサンプルからの作業よりも圧倒的に速くトラックを制作できます。それがExhaleの最大の特徴と言えるでしょう。
総じて、どのプリセットも個性的。リズム・トラックと合わせて演奏するだけで楽曲のアイディアが幾らでも湧いてきそうな、インスピレーションあふれる音源と言えるでしょう。音色内でのサンプルの音量がかなり細かく調整されている印象で、パターンを入れ替えても音量の変動が少なく快適に演奏できるところからも、丁寧なサウンド・デザインがされている印象でした。秀逸なプリセットと、かなりマニアックにエディットできるという二面性を持つ、なかなか奥が深い製品だと感じました。
製品サイト:http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=99831
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年6月号より)