「UNIVERSAL AUDIO Apollo Twin USB」製品レビュー:Windows専用となったApollo TwinのUSB 3.0接続モデル

UNIVERSAL AUDIOApollo Twin USB
レコーディング・スタジオにおいて“名機”と言われたアウトボードの数々を高精度でモデリングしてきたUAD-2プラグイン。そのプロセッサーを搭載したオーディオ・インターフェースApolloシリーズに、新しいラインナップApollo Twin USBが加わりました。早速その詳細を見ていきましょう。

USB 3.0環境が必須だが
インストール自体は手軽に行える

Apollo Twin USBはUAD-2プラグインの演算処理をコンピューターのCPUから独立して行うDSPを内蔵したオーディオI/Oです。これまでApolloシリーズの接続タイプにはFireWireもしくはThunderboltが採用されてきました。そのためWindowsユーザーにとって不可能ではないものの、運用上の不安があったことは否定できません。そこで今回、PC界隈で最も普及率の高いUSB 3.0で接続可能なWindows専用のI/Oとして、このApollo Twin USBがリリースされたというわけです。

ハードウェアの概要を見ていきましょう。入力部には48Vファンタム電力を供給できるMIC/LINE入力(XLR/フォーン・コンボ)を2系統装備。フロントにはHi-Z入力も用意されています。OPTICAL INはS/P DIFとADATの切り替えが可能。出力はアナログ4アウト仕様で、原則としてMONITOR L/Rがパワード・スピーカーやアンプに直接接続するための出力に設定されており、LINE OUT 3/4はボーカル・ブースへのキュー送りやアウトボードへの出力など任意の信号を出力できます。ほかにヘッドフォン出力が1系統あり、筆者がモニター用として使用しているハイインピーダンス仕様のヘッドフォンも余裕で駆動できました。筐体の作りはしっかりしたもので、ノブの操作感、ボタンの押し心地も良好です。

Windowsマシンとの接続はUSBケーブル1本で行いますが、オーディオ・ストリームにDSP処理も加わるため、割とシビアにUSB 3.0接続を要求されます。“USB 2.0でも何となくつながる”ことはありませんし、バス・パワーにも対応していないため、ACアダプターによる電源接続が必須です。性能を考えれば納得ですが、この点は昨今のオーディオ・インターフェースと異なる仕様ですので、システム構築の際は留意すべきかと思います。

本体を起動する前にドライバーとDSP処理や入出力を司るConsoleアプリケーションをインストールします。筆者のWindows 8.1マシンにインストール完了後、コンピューターを再起動。Apollo Twin USB本体の電源を入れるとConsoleが立ち上がり、自動で認識してくれました。この辺りはユーザーにとって不安に感じるステップかと思いますが、本体を接続すればプログラムが立ち上がるのは親切な仕様だと感じました。

従来と一線を画した録り音が得られる
UAD-2プラグインのかけ録り

Apolloシリーズ最大の特徴としてUAD-2プラグインをConsoleの入力段にインサートし、エフェクトのかけ録りを行うことが可能です。本機はプラグインによるDSP処理を行いつつ、24ビット/96kHzの動作時でも2ms以下という驚異的な低レイテンシーを実現。人間の耳は通常20msから遅れを感じ始めると言われていますが、その1/10の遅れとなります。

実際に録音を行ってみました。まずエレキベースをHi-Z入力に接続。DIを介してライン録音したテイクと比べてみましたが、ゴリっとした中域が特徴的な音色となりました。次に入力段にUAD-2プラグインのUA 610-A、Teletronix LA-2、API 550Aを挿してかけ録りしてみたところ、ビンテージ的なまとまりのある“使いたい音”で収録できました。さらに続けてハードウェアのシンセをラインで録音したりコンデンサー・マイクでボーカルを収録してみました。いずれもUAD-2プラグインあり/無しで比べてみましたが、かけ録りした方は普段のDAWでのレコーディングとは明らかに異なる、アナログライクで生々しい質感となりました。また、録音時のレイテンシーも、作業上は全く気にならないレベルでした。

Apollo Twin USBは優れたプロダクトですが、トップ・パネルのボリュームの表示LEDの目盛りが半点灯/点灯ごとに2dB刻みなところは、音決めの際に常に同じボリューム設定でモニターしたい筆者としては残念でした。とは言えConsoleでDAWとiTunesの信号を混在できたり、ほとんどの設定項目に画面上のボタンからアクセスできるなど、分かりやすい設計となっています。筐体はコンパクトで、デスクトップ上に入出力などすべてをまとめられるのもアドバンテージとなるでしょう。ハードウェアとしても各機能へのアクセスが明快なので、録りたいものをどんどん切り替えて録音していけます。それに加え、UAD-2プラグインのかけ録りなど高品位な録音のための機能が用意されているところが、他の追随を許さないI/Oとして評価されている理由だと感じました。

▲リア・パネル。左よりOPTICAL IN、電源スイッチ、USB 3.0端子、電源端子、LINE OUT 3/4(フォーン)、MONITOR L/R(フォーン)、MIC/LINE 2/1(XLR/フォーン・コンボ) ▲リア・パネル。左よりOPTICAL IN、電源スイッチ、USB 3.0端子、電源端子、LINE OUT 3/4(フォーン)、MONITOR L/R(フォーン)、MIC/LINE 2/1(XLR/フォーン・コンボ)
▲フロント・パネルには左にHi-Z入力(フォーン)、右にヘッドフォン出力を装備 ▲フロント・パネルには左にHi-Z入力(フォーン)、右にヘッドフォン出力を装備

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年5月号より)

UNIVERSAL AUDIO
Apollo Twin USB
オープン・プライス(市場予想価格:110,000円前後)
▪接続タイプ:USB 3.0 ▪入出力:2イン/4アウト(アナログ)、10イン/4アウト(アナログ+デジタル) ▪最高ビット&レート:24ビット/192kHz ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪入力インピーダンス:5.4kΩ(マイク/Unison仕様により可変)、10kΩ(ライン) ▪最大出力レベル:18dBV ▪外形寸法:150(W)×57(H)×157(D)mm ▪重量:1.05kg REQUIREMENTS ▪Windows:Windows 7/8.1、INTEL Core i3、i5、i7プロセッサー(Quad Core i7以上を推奨)、8GB以上のRAM