
最大で水平250°のカバー・エリア
リモート・コントロール可能なミキサー
Reachの前面部は5つのドライバー・ユニットから構成されており、最上段と最下段に6.5インチ低域ドライバーが、中段に1インチ高域ドライバーが3連でマウントされ、高域ドライバーの2つは左右に大きく振られているのをメッシュ・カバー越しに確認できます。このARCアレイ・テクノロジーという独特な構造により、カバー・エリアは水平150°と広大です。加えてエンクロージャーの左右側面には4インチのフル・レンジ・ドライバーが1つずつ搭載されていて、つまりこのスピーカー、横からも音が出るんです! なので、メイン+サイドの合計カバー・エリアはなんと250°にも及ぶ超ワイド設計となっています。
また、本機は4chのモノラル入力とステレオ1系統のAUXインを備えたデジタル・ミキサーを内蔵しています。iOS/Android対応の無償アプリ、Mackie Connectを使えば、Bluetooth接続によりすべての設定/ミキシング・コントロールをモバイル・デバイスで行うことができます。リモート・アプリを使わない場合でも、サイド・パネルにあるコントロール部でほぼすべての機能を操作可能です。ミキサーにはシーンに応じて使い分けられるメイン用の基本EQが4種類、各チャンネルにも3バンドEQが備わり、16種類から選べる基本的なエフェクトを内蔵。エフェクトのセンド量はチャンネルごとに調整可能です。さらにBluetooth対応プレーヤーとワイアレス接続することでストリーミング再生が可能です。
セッティングやハウリング対策などの
煩雑なPAオペレートから解放してくれる
今回は本機1台での試用でしたので、キーボード/ボーカル、マニピュレーター/ボーカルから成る2人ユニットの演奏を想定し、ポール・マウントした本機をセンターに置いたセッティングでチェックしました。キーボードはモノラル、コンピューターはステレオ・ミニでケーブル接続し、リモート・アプリを立ち上げたAPPLE iPad(画面①)をコンピューターを載せたテーブルにセット。ちょうどキーボード側にミキサーのコントロール部が向いていますので、演奏者自身で各パートのレベル調整を行う形です。まさにセルフPAですね(写真①)。


ボーカル・マイクはSHURE Beta 58Aをつなぎました。声を出して分かるのは、このスピーカーがボーカル・マイクのハウリング・マージンを考慮してチューニングされているということです。また、本機に搭載されているFEEDBACK DESTROYERは、ハウリングが発生している周波数を検知し、ピンポイントで補正してくれます。セルフ・コントロールのPA作業でも、ハウリングに対して神経質にならなくて済むので助かりますね。それでいて出音は物足りなさを感じさせず、フラットな音質を保った素直なレスポンスだと感じました。
テスト現場はキャパシティ100人程度のライブ・ハウスでしたが、本機のサイズ感はベスト・マッチだったように思います。パワー感は十分で、やはり素晴らしいのはそのカバー・エリアの広さ。定位センターのモノラルであることを忘れるほどです。
続いて、サイド・スピーカーに注目してみましょう。結論から言うと、モニター・スピーカーとして大変有用です。位相/明りょう性ともに不快なものは何も無く、十分に音量も稼げますし、スピーカーの真横に居なくてもしっかり聴こえます。また、メインとは別にレベルを調整できるので、立ち位置に合わせて最適な音量を出せる立派なサイド・フィル・モニターです。
メインとサイドを合わせたスピーカーのカバー・エリアが水平250°というのは、数字以上に体感してみるとすごいこと。結果的に1台で客席はおろか、ステージ内のほぼすべてに音を届けてしまいました。つまり、メイン・スピーカーとして設営すれば、同時にサイド・フィル・モニターも設置完了ということです。
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ReachはセルフPAの煩雑なオペレート部分から使用者を解放してくれます。単なるパワード・スピーカーを超えた素晴らしいシステムとして、さまざまなシチュエーションで活躍してくれるでしょう。


製品サイト:http://mackie-jp.com/reach/
(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年5月号より)