「HEADWAY EDB-2」製品レビュー:2つのピックアップの音をブレンドできる楽器用プリアンプ/DI

HEADWAYEDB-2
ギター/ベース用のマイクプリやアコースティック楽器用のピックアップで好評を得ているイギリスのHEADWAYより、デュアル・チャンネル仕様のアコースティック楽器用プリアンプ/DIのEDB-2が発売された。

CH.2はマイク入力にも対応
ノッチ・フィルターやRangeスイッチも装備

EDB-2は2つの異なるインストゥルメントを接続して使用することもできるが、威力を発揮するのは1つの楽器でタイプの異なるピックアップを搭載している場合だ。本機はインピーダンス・レンジが広く、ピックアップのタイプに応じてファンタム電源を供給できるので、それぞれのピックアップの性能を最大限に引き出した上で2系統をブレンドできるのだ。さらにクラスA回路によるプリアンプと音楽的な5バンドEQで綿密な音作りが行える。例えばピックアップ付きのナイロン弦のアコースティック・ギターなどはピックアップの出力だけではどうしても満足できる音質を得られないことが多いが、EDB-2はマイク入力(XLR)も装備しているので、使い方次第でより高品位なサウンドを得られるだろう。さらにAUXイン(ステレオ・ミニ)も装備し、9V型乾電池2本で駆動することも可能なので、バンド練習や路上ライブなどでも便利に使えると思う。出力はPAに信号を送るためのXLR端子のほかにモニターに便利なフォーン端子も用意されている。

機能面をチェックしていこう。EDB-2はトップ・パネル上にCH.1/2で独立したゲイン・コントロールと、CH.1または2、もしくはその両方に機能する5バンドEQ、CH.1または2に機能するノッチ・フィルター、位相反転、グラウンド・リフト、ミュート・スイッチに加え、バイオリン/ギター/ベースといった楽器に合わせてハイパス・フィルターを最適なセッティングにするRangeスイッチ(周波数はバイオリン:192Hz、ギター:85Hz、ベース:41Hz)、マスター・ボリュームなどをレイアウト。意外と便利なのがマスターのミュート・スイッチで、PAに回線がつながった状態でも楽器の抜き差しやチューニングが可能になる。また、ライブ会場で本機のCH.1にアコースティック・ギターのピックアップ出力、マイク入力にダイナミック・マイクなどをつないで生音をミックスする場合には両者の位相を合わせることが基本となるが、ピックアップの特性やマイクと楽器の距離によっては逆相になってしまうこともある。そうした事態を避けるために、事前に位相反転スイッチでチェックして正相を選ぶことで“ロー抜け”を回避し、音を前に出すことができるだろう。

2系統の楽器と同時にボーカルも送出可能
的を射た周波数設定の5バンドEQ

本機はマイクへのファンタム電源も供給可能だが、電圧が18Vなので、コンデンサー・マイクを使用する場合は仕様を確認する必要がある。インピーダンス切り替えスイッチは“Active”とパッシブ用の“+High”“High”の3種類から選択可能で、ピックアップに合わせて最適なインピーダンスを選択可能だ。インプット・ゲインは0〜32dBと通常の使用には全く問題の無いレンジを持つ。チェックしていて気付いたのは、CH.1/2両方に楽器を入力した状態でも、XLR端子にマイクを接続するとその音声をミックスして出力すること。つまりEDB-2のみでギター/ベースに加えて、ボーカルまでミキシングできるのだ。ライブ主体で活動しているミュージシャンには、かなり強力な武器と言えるのではないだろうか。

プリアンプの性能はS/Nや音質面でも十分と言えるだろう。5バンドEQはかなり細かい調整ができるのと、EQの中心周波数の設定がアコースティック楽器(特にギター)に合っていると感じた。例えば“L.Mid”の590Hzや“H.Mid”の880Hz辺りはアコギの不要な胴鳴りのカットに適した周波数であり、“Pres”の2.8kHzはパンチを出すのに最適だ。特筆すべきは“Treble”で、特にボーカルには非常に良かった。SHURE SM58などによくマッチするEQカーブで、“抜け”の部分が気持ち良く上がってくる。もちろんライブなどではギターとともに高域を持ち上げることで、音像全体の抜けを良くすることも可能だ。ノッチ・フィルターは本来不要な中域をカットしてフィードバックを防ぐための機能だが、周波数とバンド幅をうまく選ぶと、中域をカットすることで相対的にドンシャリな音が作れる。これを利用してCH.1のギターの音色をノッチ・フィルターで作り、マイク入力はEQで調整するといった使い方もでき、かなり音作りの幅が広がるだろう。

以上、いろいろとチェックしてきたが、本機は小さなボディにかなりの機能を詰め込んだ、使いでのある一台だ。特に路上ライブ・パフォーマーにはサイズや剛性を含め最適な機材と言えるし、本格的なステージでの使用にも十分な性能を持っている。

▲サイド・パネルにはAUX IN(ステレオ・ミニ)とMONO MIX OUT(フォーン)を装備 ▲サイド・パネルにはAUX IN(ステレオ・ミニ)とMONO MIX OUT(フォーン)を装備
▲フロント・パネル。左よりCH.1 IN(フォーン)、CH.1用のファンタム電源スイッチ、STEREO IN(フォーン)、CH.2 MIC(XLR) ▲フロント・パネル。左よりCH.1 IN(フォーン)、CH.1用のファンタム電源スイッチ、STEREO IN(フォーン)、CH.2 MIC(XLR)
▲リア・パネル。左よりBALANCED MIX OUT(XLR)、電源端子、電池パネル ▲リア・パネル。左よりBALANCED MIX OUT(XLR)、電源端子、電池パネル

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年3月号より)

HEADWAY
EDB-2
49,000円
▪ゲイン:0〜32dB(CH.1/2) ▪全高調波ひずみ率:0.05%未満 ▪外形寸法:93(W)×38(H)×138(D)mm ▪重量:550g