「TASCAM Celesonic US-20×20」製品レビュー:USB接続で24ビット/192kHz対応のUSシリーズ最上位機種

TASCAMCelesonic US-20×20
TASCAMのオーディオ/MIDIインターフェース、USシリーズの中で最上位機種となる20イン/20アウトのCelesonic US-20×20が登場しました。最高24ビット/192kHzに対応した高音質設計とのことですが、実力のほどを実際にテストしながら紹介したいと思います。

インターフェース/マイクプリ/ミキサーの
3モード切り替えによる高い汎用性

まずは外観から見ていきます。ユーザー・インターフェースも含めて、本機のデザインは数多くのシンセサイザーの意匠を手掛けるドイツのDESIGNBOXによるものです。黒く塗装された金属の筐体はとても高級感があります。デスクトップに据え置きで使う場合に操作性の向上を図るため、本機両側面のパーツによって少し傾斜をつけたアングルド・デザインが施されているのも特徴です。また、付属するラック・マウント・アダプターを付ければ19インチ・ラックに収めることもできます。本機は最高24ビット/192kHzに対応し、入力は8chのXLR/TRSフォーン・コンボ、2chのTRSフォーンに加え、S/P DIFコアキシャル、オプティカル(ADAT)によるマルチチャンネル・デジタル入力を装備。合わせて20chの同時入力(44.1/48kHz動作時)が可能です。アナログ入力のうち8chはファンタム電源対応マイクプリを搭載し、IN1とIN2はINST(DI機能)も備えているので、エレキギター/ベースを直接ライン接続できます。出力は10chのTRSフォーン、S/P DIFコアキシャル、オプティカル(ADAT)の搭載で、20chの同時出力を実現。そして本機最大の特徴は、これらの入出力機能をインターフェース/8chマイクプリ/ミキサーの3モードで使用することができるというものです。切り替えはフロント・パネルにある専用ボタンで行います。

インターフェース・モードでは本機をUSB 3.0(Windows 10環境)またはUSB 2.0でコンピューターと接続し、DAWでレコーディングが行えます。Windowsで使用する場合はドライバーをインストールする必要がありますが、新規設計されたUSBドライバーにより、誰でも簡単に行えるインストール作業と低レイテンシー化を実現。また、ミキサー・モードでは本機に内蔵されたDual Core BlackFin DSPというプロセッサーにより、コンピューターのCPUパワーを使わずに内部ミックスが可能な単体のミキサーとして動作します。全入力チャンネルに4バンドEQとコンプレッサーを搭載するほか、リバーブもマスターに1基装備しています。これらも内蔵DSPによって処理されますが、コントロールはコンピューターを経由して専用ソフトウェアで行う仕組みです。

中高域にピーク感の無い太い音
直感的に操作しやすいミキサー・モード

実際にドラムをレコーディングしてみました。最初に気づいたことはうわさ通りの低レイテンシーぶりです。USB 2.0モードでもとても低めに抑えられている印象。また、ゲインつまみの横にあるLEDインジケーターで音が入力されているかどうかを確認できる上、ひずむ直前で赤く点灯するため、レベル調整も楽に行えます。

TASCAMが独自に開発したというディスクリート構成のUltra-HDDAマイクプリの音質も好印象で、ハイファイでもデジタルっぽいというありがちな硬い音ではなく、中高域にピーク感の無い太い音を聴けます。この印象は同じUSシリーズのUS-2×2やUS-4×4と同じで、派手さよりも上品さを強調した大人のハイエンド・オーディオを感じさせます。レコーディングにおける音質の決め手としてこのマイクプリが効いているのでしょう。また、AD/DAコンバーターにAKM製のチップを採用しており、キックやスネアのアタック感もちゃんと再現できているなと思いました。S/Nもかなり良いです。試しにエレキギターをINST入力でライン録音してみましたが、こちらも素直な音質で録ることができました。

次に、本機をミキサー・モードにしてみます。ミキサー画面は分かりやすいレイアウトで、説明書を読まずに直感的に操作できると思います(画面①)。

▲画面① DSPミキサー画面。全入力チャンネルに4バンドEQとコンプレッサーを装備するほか、マスターにリバーブを1基搭載している。ミキサーの設定は10パターンまで記憶可能 ▲画面① DSPミキサー画面。全入力チャンネルに4バンドEQとコンプレッサーを装備するほか、マスターにリバーブを1基搭載している。ミキサーの設定は10パターンまで記憶可能

4バンドEQはHIGH/LOWがシェルビングで、HIGH MID/LOW MIDがQを設定できるピーキング仕様。LOWのシェルビングはローカット・フィルターに特性を変更でき、いずれも周波数は可変です。コンプレッサーATTACK/RELEASE/RATIO/THRESHOLD/GAINというパラメーターを備えているので必要十分でしょう。リバーブはHALL/ROOM/LIVE/STUDIO/PLATEのアルゴリズムを切り替え可能で、パラメーターがシンプルで誰でも扱いやすい仕様です。DSP処理による音質の好みはあるでしょうがどれも品質は良いと思います。

また、EQ/コンプレッサーのほか、全入力チャンネルに位相の切り替えボタンとAUXのセンドを4系統装備。各AUXにPRE/POSTの切り替えが独立して付いているので、ライブなどでのPAミックスも本機だけで行えるでしょう。さらに隣り合う奇数/偶数チャンネルをリンクさせて1つのステレオ・チャンネルに統合することもできます。ルーティングも含め、設定をグラフィックでリアルタイムに表示してくれるところがうれしいです。

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本機は3つのモードを切り替えてさまざまなレコーディング状況に対応できるため、汎用性に優れています。また、本機を2台用意してデジタル接続することにより、最大16ch入力でのアナログ録音が可能なレコーディング・システムを構築できます。小規模なライブにおける録音の際にも重宝することでしょう。

製品サイト:http://tascam.jp/product/us-20x20/

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年1月号より)

TASCAM
Celesonic US-20×20
オープン・プライス(市場予想価格:55,333円前後)
SPECIFICATIONS ▪接続タイプ:USB 3.0(Windows 10)、2.0 ▪入出力:10イン/10アウト(アナログ)+10イン/10アウト(デジタル) ▪ビット&レート:最高24ビット/192kHz ▪SN比:104dB以上 ▪ひずみ率:0.005%以下 ▪外形寸法:445(W)×59(H)×222(D)mm ▪重量:2.7kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.8以降 ▪Windows:Windows 7(32/64ビット、SP1以上)/8(32/64ビット、8.1を含む)/10(32/ 64ビット) ▪iOS:iOS7以降